急いで天翔る船に乗り、空中要塞へ。
船の中で、プレイヤーは塔にいたあるライガ人の言葉を思い出していた。
「空中要塞には、ペトロが捕らえられている。
恐らく、酷い仕打ちに遭っているだろう……」
大統一を防ぐために力を貸してくれていた彼も
また、今のこの状況を知っているのだろうか。
本当に一刻も早く助け出さなければ。
誰よりもレナスを愛している人の一人なのだから。
レナスの大地にあるとされる、3000の奇跡。
3001番目の奇跡が、リヒターに神聖戦士への憧れを持たせた。
そして、チェズニとミディアが起こした、
3002番目の奇跡が、レナスの危機を救った。
だったら今度は、ファルスが奇跡を起こそう。
3003番目の奇跡で、レナスを、エルツを救おう。
邪神グラナダの子にして、大地の生命エクト・ライガである、
アンデルの神、ファルスが……。
バリアを中和し、空中要塞内部へ突入。
最も長く、最も複雑な要塞の内部を進んで行く。
途中にはかなり強い武具などもあり、
これからの決戦の手助けになってくれること請け合いだった。
階段の構造の複雑さには苦労したが、なんとかベルツの所まで辿り着く。
火に弱いはずなので、火の呪文を使えるようにしておく。
いざ話し掛けると、ベルツは意外なことを言い出した。
「疫病神のお出ましだな!お前が倒したのは、血の繋がった仲間だぞ!」
「レナスとエルツ、そこに生きる生き物は、全て我らが創った玩具なのだ。
戯れに命を与えた人形なのだ!
我らが与えたその命。我らが奪って、なぜ悪い?」
創造主と創造物に与えられた永遠の命題を、彼は口にしたわけである。
創造主は確かに支配者かもしれないが、神ではなかろう。
生殺与奪の権利があるとは到底思えない。
ましてや創造物の方に心があるのだから。
「我らの母星、ライガはこのままでは破滅してしまう。
エルツとレナスを一つにして、輝く星にしなければ、ライガは滅んでしまう。
考えろ、ファルス!せめて、わしらを放っておいてくれ」
……ファルスはライガ人と言えど、ライガに行ったことはない。
故郷がどんな星なのか、どうなっているのかは、全く知らないのだ。
しかし、まだ見ぬ故郷でも、滅びると言われれば良い気はしないだろう。
故に、ベルツの説得は、ある程度ファルスの心に揺さぶりを掛けた可能性がある。
しかしプレイヤーに言わせれば、論外という意見だった。
……一つの星を守るために、他の星を犠牲にするのか?
そこに生きる生命の価値は同じなのに?
四天使達は、「ライガ人は神だ」としていた。
その驕り高ぶった心が、このような意見を生む元になっているのは間違いない。
しかしライガは、「衛星(月)」を持つ「惑星(地球)」。
このゲームは、舞台と話を通して、
地球人の驕った考えを見直させようとしているのかもしれない。
プレイヤーは、小説で読んだソフィの台詞を思い出していた。
「私達は、心あるものを歪めてはいけないのよ」
ベルツの甘い誘惑に、誰かが割って入って来た。ペトロだった。
切れ切れの思念は、徐々に明確な意志の波動となってファルスの心に響く。
「……ダメだ、ファルス!ベルツに騙されるな」
「全ての生き物は、自分自身を守るために戦わなければならない!
戦うチャンスも与えられず、殺されることは許されない!
戦え、ファルス!ベルツと戦って、レナスとエルツを守るんだ!」
この思念はベルツにも伝わっているらしく、ベルツは悪態を吐く。
「ペトロめ、命を吸い取ったのに、思念を送ってきやがった!」
考えてみれば、凄まじい状況下での会話である。
思念を送るというのは、特殊能力である上に、
相当な労力を必要とすることだろう。
ベルツの台詞から判断すると、やはりペトロはあのライガ人の予想通り、
かなり酷い目に遭っていたということになる。
瀕死の状態と言っても過言ではないだろう。
その状態であれだけ強い思念波を送るとは……彼の精神力には感服する。
しかも彼の台詞を分析すると、
彼はかなり凄いことを言っていることになるのである。
全ての命は、自らを守るために戦わなければならない。
正論だろう。大なり小なり、あらゆる生命が、日々その戦いを続けている。
生きることそのものが競争、戦いなのだ。
そして、彼は言う。戦うチャンスも与えられずに、殺されることは許されない、と。
もしも生きることが、己との、また、他との戦いならば、戦うチャンスを与えるとは、
生きる機会を与えることに他ならない。
それすら許されず、命が奪われていくのは、確かに許されることではない。
興味深いのは、彼がここで「許されない」という表現を使っていることである。
一定の、決まった原則があることを示唆しているのである。
原則を定めたものが存在するということを示しているのである。
……言うなれば、それが、「神様」なのだろうと、プレイヤーは思った。
そして、こう言ったペトロ自身、
自らの命を守るための戦いを、半ば強制的にさせられている。
しかし彼は、「戦うチャンス」を与えられているのだ。
彼の台詞から察するに、彼はかなり強い信念の元、この言葉を言っている。
ある意味この見解は、彼なりの信念なのだ。
つまり、彼は既に「戦うチャンス」を与えられた存在であるわけであるから、
もしもこの戦いに負け、命を失ったとしても、それは「許される」ことなのだ。
こんな助言をしたら、逆上したベルツに殺されてもおかしくはない。
しかし、こんな意見を言う以上、
彼は自分の命を守る戦いに敗れた時の覚悟が出来ているのだろう。
そして、同じライガ人であっても、四天使達はその覚悟が出来ていない。
ライガが滅び、自分達の命を守る戦いに敗れ、
死んでいく覚悟が出来ていないのだ。
だからこそ、他の星を犠牲にしてでも、自分達の命を守ろうとするのだろう。
エゴイズムの極みである。
だが生物界の基本は弱肉強食だし、
これはこれで戦いの一つの形なのかもしれない。
その戦いに勝った者が、進化を続け、星と共に生きてきたのだ。
命の神メーベが、人に星を預けてから二万年以上。
神星紀元から始まり、神に見放された絶望の時代を乗り越え、精霊紀元が始まり、
三人の英雄が現れた。血の春を経験しながらも、久遠の時代を迎え、
そして古代機械と独裁者により乱された平和を、二人の英雄がまた取り戻した。
そうして続いてきた、いや、続けられてきたレナスの歴史を、
大統一などという大量虐殺で終わらせるわけにはいかない。
以上の理論により、プレイヤーはファルスに生きるための戦いをさせることとした。
ベルツはペトロに言う。
「お前の大切なファルスが死んで行くのを、そこで見ているがいい……」
ここで負けるわけにはいかないんでね、
悪いが全力で行くよ、と言ったのはプレイヤー(爆)
火の呪文に加え、通常攻撃も交えて戦う。
向こうもかなりの強者だったが、エクト・ライガの敵ではない。
とうとう最後の四天使を撃破する。
ベルツは「封印も、そこにいるペトロもくれてやる!どちらも好きにするがいい」と言う。
好きにさせて頂きますとも、少なくとも最善の方法で、と言ったのはプレイヤー(爆)
「だがその封印には、もう何の力もないぞ。大統一は、その最終段階に入った」
嫌な予感がするが、とにかく奴の負け惜しみをゆっくり聞いている暇はない。
「早く封印を取ってくれ」と言うペトロだが、その前に貴方の救出が先です。
しかし、そこに二人のライガ人が現れ、ファルスの労を労った後、
ペトロをミディアの元へ連れて行ってくれる。あそこなら安心でしょう、結界もあるし。
「この城は、最後の希望」とミディアは言っていた。今は確かに、そうかもしれない。
ペトロはミディアに任せるとして、ファルス達には封印を取りに行ってもらう。
無事に残り二つの封印を取り戻すことが出来た。
すると、ペトロの声が聞こえてきた。
「聞いてくれ、ファルス!これが最後のチャンスだ。
封印を持って、僕の……護民官の城へ行け!」
なるほど、あのお城ね。まだ秘密があったのか、と思いつつ、指示通り城へと急ぐ。
余談だが、ペトロが自分を「僕」と言ったのはこの時が初めて。
前作でチェズニは自分のことを「僕」と言っていたので、
昔に戻ったようで懐かしかった。
ミディアの所に行って、自然体になれたのかもしれない。
まぁ、彼らの過去をよく知らないファルスには、それこそ解らない話だろうから、
とにかく先を急いでもらうこととする。
塔の外に出てみて、プレイヤーは驚いた。もちろん、ファルス達もだろう。
エルツの陸半球とレナスの陸半球が、見事に融合してしまっていたのだ。
具体的に言うと、レナスの海半球に、エルツの陸半球が出現した形である。
もう時間がない。大統一は、終焉に向かっているのだ。
真の大統一が成されれば、両星に未来はない。
プレイヤーはファルス達を急がせた。
否、プレイヤー以上に、彼らは急いでいただろう。
しかしプレイヤーは、城へ向かう前にどうしても行って欲しい場所があった。
赤道河の畔、ダフネの家である。
最終決戦に向かう前に、レナス一の賢者に話を聞いておきたかったのだ。
そして、彼女が漏らした言葉は、プレイヤーの心に強く響いた。
「お前やペトロが悪いんじゃないよ」
「……もうすぐレナスは炎になるよ。ソアのように、大きな大きな炎になるよ」
「なぜ、ライガ人はわしらの星にばかり不幸をもたらすんだ!」
もうすぐレナスは炎になるよ。慌てるわけでも、絶望するわけでもなく、
老女は静かに、正確に、この星が辿っている道を述べた。
あまりに壮大すぎる最期。人一人の力では、どうしようもないこと……。
それでもプレイヤーは、それを何とかしたいと思った。
正しい心を持った、正しい神様……ファルスが、まだ生きているのだから。
ペトロの城に着き、上階に上がって行くと、ロボットが登場した。
どうやらペトロに頼まれて、ファルス達を待っていたらしい。
そして、秘密の入口を開けておいてくれたようなので、そこから先へ進む。
地底弾道特急があるらしい。
エレベーターで下に降りると、ギガボトルという素晴らしいものがあった。
さらにその先に進むと、8つの封印をはめ込む場所になっていた。
全ての封印をはめ込むと、何か反応があった。側の階段で下に下りてみる。
すると、前作でも活躍してくれた、地底弾道特急があった。
ファルスにとっては、無論初めての乗り物だったろうが、
反応はどうだったのだろうか。
とりあえず前作のチェズニ・ミディア・リヒターは、相当インパクトがあったようだが。
そして、地底弾道特急は、前作での決戦の地……神々の御座へ着いた。
上がって行くと、何やら銀髪の人がいる。話し掛けてみて驚いたのはプレイヤー(爆)
リヒターの子供だった。14歳とまだ年若いが、能力は充分。父の影響だろうか。
母親が誰なのか結構気になったが、
まぁ推測して判るものでもないので置いておく(爆)
さらに上がって行くと、たくさんのエレベーターがあって、結構迷わせてくれた。
この辺り、前作と同じである。
それでも迷ううちに、頂上へ出ることが出来た。
そして、その頂上で待ち受けていた者は……。
グラナダ。ライガにおける破壊の神であり、メーベの対極に位置する神。
真の大統一を目論み、ファルスを利用した張本人である。
いわば、彼はファルスにとって、最後の敵となるわけである。
神々の御座とは、ライガの神が降り立った所だったはず。
となれば、ここでグラナダと戦うのは、
ちょっとした運命の計らいなのかもしれない。
意を決してグラナダに話し掛けると、彼は言う。
「真の大統一は最終段階に入った」と。
無論こちらはそれを止めに来たのだが、これでかなりファルスは挑発されたらしい。
「いい顔をしている。戦う意志に満ちた顔だ。せっかくだから、お前と戦ってやろう」
とさえ言われる。余裕があるのだ。
自分の計画が失敗するかもしれないという懸念が感じられない。
そこまで自分の勝利に自信を持てる理由は何だ、とプレイヤーは密かに思った。
奴にはまだ何かがある、切り札を持っている。
ペトロとミディアが、グラナダが持つエナジーサークルを警戒して、
自分達の分身を送り込んできてくれた。
分身とは言え、力の全てを注ぎ込んでいるので、本人達と変わらない。
戦闘に入る。
さすがにグラナダは強い。
複数回の攻撃は当たり前、しかもその強さもなかなかのものである。
しかし、こちらも負けてはいない。
きちんと装備を整えて、精霊を吟味して、レベルを上げてきたからだ(爆)
そして、ペトロとミディアの援護が的確なのである。
火の精霊の扱いに長けているのは前作で知っていたが、
ペトロの呪文の威力は凄い。
そして、もちろんミディアの光の呪文の威力も凄いのである。
さらに彼女は、得意の土の精霊、つまりは癒しの呪文で、
体力回復までしてくれる。
おかげで、結構早い段階で、グラナダのエナジーサークルを破壊出来た。
一旦、戦闘が終了する。二人の力の維持が困難になったらしく、分身が消える。
しかし、エナジーサークルも破壊出来たし、後はこちらだけでもいけるだろう。
グラナダは宇宙船らしきものから力を供給してもらっていたが、
こちらもペトロとミディアに体力回復とボトルの補充をしてもらった。
二人に密かにお礼を言いつつ、戦闘再開。先程より時間はかかったが、倒した。
だが、喜びも束の間。やはりグラナダには切り札があった。
この物語は一種の賭け事、切り札(トランプ)は初めからあるのだろう。
先程の宇宙船を利用して、グラナダは逃げてしまった。
その上神々の御座にバリアを張って、ファルス達を閉じ込めてしまう。
「そこで大統一の最後の瞬間を見るがいい」
そんなわけにはいかない。何のためにここまで来たのか判らない。
ファルス達の危機に、ペトロとミディアが力を貸してくれる。
幻影城をバリアに衝突させて、見事バリアを破ってくれた。
この時、初めてミディアは、ペトロのことを「チェズニ」と呼ぶ。
彼がチェズニだというのは、もう判っていたことだが、
プレイヤーは改めて嬉しくなった。
ファルスもこれで、レナスの救世主が
常に自分を助けてくれていたことに気付いただろう。
宇宙空間に浮かぶ船に逃れたグラナダを追って、重力の虹を渡る。
最終決戦だ。