アンデル、エルツ、レナス。様々な世界を旅してきたファルスの決戦の地。
どんな気持ちで、彼はグラナダを目指したのだろうか。
プレイヤーの心の中では、様々な出来事が思い出されていた。
奴の策略で滅びたアンデルのためにも、
今まさに燃え上がろうとしているエルツとレナスのためにも、
勝たなければならない。
グラナダは、船の最深部に座っていた。
話し掛けると、彼は衝撃的な真実をファルスに告げた……。
「良いことを教えてやろう。お前は不思議には思わなかったのか?
なぜ、俺にも出来なかった地底の大統一を、お前が完成させられたのか?
大統一を防げと言うなら自分で集めれば良いのに、
なぜペトロはお前に封印集めを命じたのか?
なぜミディアは、重力の虹に乗せて、お前をレナスに送り込んだのか?」
「お前自身が、大統一だからだ!お前が、大統一のスイッチなんだよ。
地底の大統一も、封印も、最終大統一も、お前無しでは動かないのだ!
お前がそこにいて、お前の体内エネルギーが与えられない限り、
星が燃え出すことはない。
神々の御座の頂上で、お前がくたばるのを待っていたのさ!」
何と素晴らしい、計算に満ちた完璧な計画であることか。
彼はファルスに気付かせることなく、二重に彼を利用していたのだ。
地底の大統一を起こしてしまったことを悔やみ、償いのためここまで来ることをも、
彼は計算していたことになる。ここでファルスが死ねば、目的は果たされるのだ。
「俺もエクト・ライガだ。俺自身もまた、大統一のスイッチだ。
お前が俺を倒せば、大統一は止まる。
お前と俺は、同じコインの裏表……。
俺を殺せるのはお前だけ、お前を殺せるのは俺だけだ!
俺はお前を殺す!殺して、大統一を完成させてやる!」
ONか、OFFか。対極に位置する同じ者達が、星の命運を賭けて戦う。
伝説に謳われた、命の神メーベと破壊の神グラナダの戦いが、
今、再び始まるのだ。
自分が殺されて、大統一が完成するか。
グラナダを殺して、大統一を防ぐか。
ファルスにとっては、そのどちらかでしかない。
運命が、世界の支配者が定めたこの戦いの行く末は、如何なるものなのか。
結末を導くのは、ファルスの力と、プレイヤーの技であろう。
様々な攻撃を駆使してくるグラナダに、こちらも様々な戦法で応戦する。
さすがに攻撃力・防御力ともに高かったが、背負っているものの重みが違う。
向こうはライガ一つかもしれないが、こちらはエルツとレナス、そして、滅びたアンデル。
想いの強さは力の強さとなって、破壊の神を討った。
グラナダが滅びた。大統一は、とうとう防がれたのだ。
ファルス達は、宇宙船を脱出する。
エルツとレナスは再び分かたれ、全てが始まりに戻った。
長い長い、道程だった。
ファルスの心の中には、どんな想いが去来していただろう。
そして、ハモンドの丘にある屋敷で、ファルスは目を覚ます。
ずっと眠り続けていたらしい。
『夢の宴』が始まる。
前作同様、今まで雇った傭兵達と話が出来るのだ。
大統一の五使徒とも会えたのは嬉しかった。
彼らのうちの一人が、テラノ族の復興を誓ってくれた。
プレイヤーにとっては最も心が痛んだ、あのアンデルの崩壊から、
彼らは立派に立ち直ろうとしているのだ。
他にもたくさんの傭兵と会うことが出来た。
思い出を偲びながら町中を回っていると、ペトロとミディア、そしてピアズがいた。
ミディアに話し掛けると、彼女は興味深いことを教えてくれた。
「エクト・ライガには、二つの意味があります。
大地に生きる全ての命の象徴。
そして、善悪を知らずに無邪気に悪を成す、悪夢の神。
ファルス、貴方は自らの意志で大統一を防いでくれた。
そして、グラナダは、自分自身の意志で……。悲しいことです」
大地の命となるか、悪夢の神となるかは、ファルスの意志次第ということだ。
ファルスには、ペトロやミディアにはない力がある。
それ故に、意志の、心の持ち方が重要になってくるのだろう。
そしてミディアは言う。自分やペトロが戦っているという敵のことを。
そう、それはプレイヤーにも疑問だったことだ。
そもそも、「大統一」というものを起こせるようにしておいたのは誰か?
誰がグラナダに大統一の野望を抱かせたのか?
最終的に、エルツとレナスは融合したが、あの地形を見ると、
明らかに最初から二つの星は融合「出来る」ような構造になっていたではないか。
グラナダの上を行く策略家である「誰か」がいたのだ。
そして、その人物こそが、ミディアの言う「敵」なのだ。
ペトロに話し掛けると、彼は驚きの提案をする。
「僕達は、ライガへ行こうと思う。僕らの真の故郷へ」
全ての悲しみと、全ての幸せをもたらす場所。
チェズニ、ミディア、ファルスの真の故郷、天上の国、ライガ。
滅びかけている母星で、今何が起こっているのか。
全ての謎の答えを求めて、彼らはとうとうライガへ旅立つのだ。
ペトロはファルスを誘う。
前作の場合と違って、ファルスはこの星に肉親もいないことだし、
名残惜しさはあまりないかもしれない。
何より、ライガへ行けば、
自分が抱えてきた疑問の答えが見つかるかもしれないのだ。
もちろんそれは、プレイヤーもしかり、なのだが。
そして彼らは、天翔る船に乗り込み、ライガへ向けて旅立つ。
ライガ。精霊紀元を始めた三人の英雄、コーム、ソフィ、ガブニードスの故郷。
彼らもまた、ライガへ帰ろうとしていた。
それは叶わなかったのかもしれないが……。
チェズニやミディアをレナスに送り込んだのも、
ファルスをアンデルに封印していたのも、
全てライガにいる「誰か」の仕業なのだろう。
神の住む天上の国……真の、「神々の御座」、ライガ。
だが、その謎も、ライガでの冒険……レナスVで明かされるのだろう。
それがいつのことかは判らない。
創られた運命は、解き放たれるその時を、静かに待つしかないのだ。
世界を支配する運命は、自らを支配する神々の命を与えられるまで、
動きはしない。
「レナスII〜封印の使徒〜」は、これで全て終了である。
前作にも増して、素晴らしいストーリーだったように思う。
益々レナスIIIがやってみたくなってしまった。
存在しないのは判っている。正に幻、伝説である。
それでも、プレイヤーが最も興味を持った星は、エルツでも、レナスでもなく……
やはり、ライガなのだ。全ての始まり、全ての終わりである、天上の国。
そこで何があったのか。何が起こっているのか。何が、始まるのか……。
作中でその存在を語られながら、
ついに姿を現さなかった創造神、命の神メーベ。
全ての鍵は未だ、凍れる時の中に「封印」されたままなのだ……。
どんな形でも構わない。どんな場所ででも構わない。
この星々の全ての謎が解き明かされる日を、私は待ち続けたいと思う。
「その日」が来ることを信じて。
ここで、番外編とも言うべき考察をしてみよう。「名前」についてだ。
二人の人物の名前が、
プレイヤーにとっては大変意味ありげなものに聞こえるのだ。
まずは主人公、ファルス。
Falseと綴るのだとしたら、これはかなり興味深いネーミングである。
英単語なのだが、その意味が面白い。
「欺く」を原義とした単語で、意味としては誤った、間違った、という形容詞。
または、人造の、人工の。偽の、偽造の。
彼は「誤って」アンデルを崩壊させてしまったし、
その「間違い」に気付いて大統一を防ごうとした。
そしてその彼は、アンデルでの神だった……。
もちろん、彼自身に神懸かり的な力や知識があったわけではなく、
飽くまで彼は「人々によって」神とされていただけだった。
いわば「人造の、人工の」神である。「偽物の」神とも言えるかもしれない。
名前が彼の全てを表しているのである。名は体を表すと言うが、正にそうだ。
そしてもう一人は、前作の主人公チェズニが名乗っている名前、ペトロだ。
どこかで聞いたことがある気がしていたのだが、ようやく判った。
キリストの弟子の一人であり、最後はネロ帝に迫害されて殉教した聖ペテロ。
この人は場合によっては発音の違いでペトロと表記されるはず。
彼はカトリックでは、初代ローマ教皇とされている。
そして、ローマ教皇とは、キリストから預かった「天国の鍵」の番人なのだ。
ゲーム中、ライガは「天上の国」とされる。即ち、天国である。
レナスの人々にとっては、神のいる星でもあるだろう。
そこから来る人々は、神に使わされたもの、即ち使徒、天使とも考えられる。
レナスIIの副題は「封印の使徒」だが、
これはファルスの立場を端的に表しているわけだ。
さて、その中でペトロ、即ちチェズニは、ラストでの展開を見ても分かるように、
確かに「天上の国ライガ」へ行くためのキーパーソン、
つまり「天国の鍵」の番人なのだ。
こちらも名前がその立場をきちんと表現していることになる。
もしかしたら、ただの考え過ぎなのかもしれないが、
もしそうだとしても、ここまでの符号を見せているのだから、
逆にそっちの方が面白い。
偶然の一致にしては出来過ぎだ。
以上で、全ての文章を終了させて頂く。
最後まで不思議な感覚を失わずにプレイを終えることが出来たのは、
偏に制作者達の努力の賜物であろう。
また一つ、私にとっての『夢の宴』が終わった。
「レナス」に続いて、「レナス2」も
すばらしいテキスト上のリプレイでした。
ゲームも、それ自体が表現物であるかぎり、
それに応じた読解力のあるレポートを拝読すると、
作り手として、不思議な興奮がえられます。
さて、名前に関する考察ですが、
「バレてるなぁ」というのが、素直なところです。
もちろん、「ファルス」という名前には、「虚・偽」の意味が含まれています。
開発中、このことを指摘したのは、プログラマー関係の人でした。
そして、ペトロが聖者の名前にちなんだというのも事実です。
なにしろ、ミッション系の小中学校に通っていたので、
聖書も読んでいたりします。
さらに、かれが「護民官」だったのにも理由があって、
これは聖書ではなく「夏への扉」という小説に、ちなんでいたりします。
ほかにも名前については、いろんなところから、
着想していますが、まぁ、その手のネタバレは、
ここだけの秘密としておきましょう。
「レナスII」を遊んでいただいて、どうもありがとうございます。
柴尾英令