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【音楽】ロード・オブ・ザ・リング シンフォニー

「指輪物語」を読んだのは高校1年のときだから、いまから26年前、四半世紀以上前である。文庫本がそろった前後のころだろう。母校が甲子園にでて三回戦まで勝ち進んだ夏休み、応援のバスやフェリーの中で、読みふけった覚えがある。

サンリオSF文庫が発売されるようなSFブームの時期で、おれはSFをとてもよく読んでいた学生だったのだが、「指輪物語」については、ある種、別格の「幻想小説」ってやつである一方、どこか地続きの「古典」といった存在だった。


当時の文庫版をご存知の方なら、あの活字の小ささを覚えているだろう。あんなに小さい活字の「小説」なんてほかになかった。しかも厚いページで何冊もある。

周囲のだれに聞いても読んだことがある人などいなかった。しかも、読み始めてすぐは、なじみのないホビットという種族とその生活について、延々と書かれている。いまの新訳とちがって、旧訳の文章は、かなり癖があって読みにくい。

「指輪物語」を読むことは、すなわち、チャレンジだった。本を楽しむというより、こういうものの勉強として読みはじめたといってもいいだろう。

「旅の仲間」を読み終え、「二つの塔」に読み進むころには、すっかり耽っていた。ファンタジーというよりエピック(叙事詩)の魅力にとりつかれて読み進んでいき、灰色港からの船出のあたりを読むころには、心の中に「中つ国」が生まれていた。

それから、予備校時代までは何度もくりかえして読んでいた。受験は世界史で受けたのだが、「中つ国史」という試験科目があったら、世界史よりいい点数が取れていたかもしれない。

大学に入って「指輪物語」を読む回数はめっきり減ってしまった。「シルマリルの物語」などをはさみ、最後に読んだのは、12年くらい前。30歳になるころに上梓された新訳が最後だったろう。これから「指輪」を読む人は幸せだな……と思ったものだ。

それから、「指輪物語」のことは忘れていた。いわれれば思い出すが、心の中にある「中つ国」に通じる扉は、がたついて開けにくくなっていた。

ピーター・ジャクソンの「ロード・オブ・ザ・リング」がいとも簡単にその扉を開放してくれたことは、はるか彼方にあの小説を読んだひとの多くが、うなずいてくれることだろう。

クローゼットルームにしまいこんだ「指輪物語」を引っ張り出すのが億劫で、新たにハードカバーをそろえ、すぐに読み返す。みずみずしくよみがえった世界の中に、懐かしい旧友の顔ぶれがならぶ感覚かな。

(薄々は聞いていたのだが、「指輪物語」が萌える腐女子の対象物になっていたことに、おどろきまくりもしたんだけどね)

いやもう浮かれまくって、ロケ地であるニュージーランドの大地を見たくなり、第二部「二つの塔」は日本より2ヶ月前にニュージーランド南島で見たあと、南島を旅し、第三部「王の帰還」は、ウェリントンのオフィシャルスクリーン、エンバシーシアターで見たあと、ニュージーランド北島を旅した。

そして、今日は東京国際フォーラムホールAで「ロード・オブ・ザ・リング シンフォニー」なのである。

じつは前回、8月30日のコンサートは、自分が中心になってチケットの手配をしたにもかかわらず、桃鉄USAのCMソングをうたうサイコ・ル・シェイムのライブを見るため、キャンセルして、Kdさんにチケットを譲ってしまったという、悔しい経緯がある。

そのときは、オケやコーラスがいまひとつだったという話を聞き、ちょっと複雑な気分だったりもした。

そのリベンジともいうべき、今回のコンサートだが、目玉は前回のジョン・マウチェリーから、ハワード・ショアに指揮棒が渡ったこと! つまり、サントラの作曲者自身が指揮をするのだ。

チケットは11,000円から12,000円になったのだが、今回、同行した加賀さんによれば、1,000円分は"ショア代"……とのことって、ダジャレかい。

オケも前回の寄せ集めではなくて、ロシア・ナショナル・フィル! これは期待するでしょう。

客席は中央付近だったのだが、照明音響の制御卓のすぐ前。ちょっといやな席についたと思っていたら、「ここだとうるさいので、席を移ってくださいますか」と、さらに中央よりのもっといい席に変えてくれた。しかも変更前と変更後の両方の席で、デザインの違う半券をもらえたから、うれしさ倍増!(写真参照)

コンサートはもう最高だった。ボーイソプラノが日本人の男の子たちで、カタカナ発音のエルフ語などが、ちょっときついかな……ってところももちろんあったのだけど、カチッとしたロシア・ナショナル・フィルのていねいな演奏と圧倒的な音の厚みに身震い。

「旅の仲間」から構成された第一部が終わるころには、おれ、泣いてました。

もうね。裂け谷をあとにするたびの仲間たちが、モリアの坑道、カザド・ドゥムの橋で迫ってくるバルログが、アンドゥインの大河のほとりで、絶命するボロミアがみえるんですよ。そんな映画のフラッシュバックだけじゃなくて、最初に書いたような初めて「指輪」を読んだころのこととか、ニュージーランドの大地とか、いろんなものが思い出されて、たまらないんですよ。

すごいよ、ハワード・ショア!

第二部は「二つの塔」と「王の帰還」。ソリスト、ケイティ・ヌーナンには完全にやられました。「イントゥ・ザ・ウェスト」はアニー・レノックスをしのぐでき。やっぱり泣き。スタンディング・オベーションの中で、涙をぬぐう。それにしても至福の2時間だった。

その後は加賀さんと池袋に移動。有楽町線の中で、延々とLOTRにまつわるネタ話。中つ国に生まれ変わるとしたら、だれになりたいか……とかね。サムはいやだし、ハルディアもちょっとせつないね。

加賀さんはいっしょにニュージーランド北島をうろついた旅の仲間の一人でもある。最初に声をかけたとき、「(10代の女の子とか、来るのに)こんな腐女子がいってもいいんですか」と、いわれたのも懐かしい思い出。

ニュージーランド仲間が集まるときは、羊を食うという掟があるので、池袋の「幾寅」で、ジンギスカン三昧。腸内羊濃度をとことんまで高めつつ、いろいろと濃厚な話を……。

ほんとにたのしい一日だった。

※こちらのエントリーもどうぞ。

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