【読書】回想のビュイック8
「回想のビュイック8(上・下)」スティーヴン・キングの邦訳最新作である。帯には「ホラーじゃないキング!」だとか、「グチャグチャホラーは好きじゃない」方にお薦めだとか、書いてあるが、嘘っぱちである。
これはホラーといってもいい作品であり、クトゥルー・テーストのごとき、とびきりのグチャグチャ描写もたっぷり堪能できる。あれやこれは「ダーク・タワー」からの出張なのかな。ちなみに一部の話によれば、G・A・ロメロ監督による映画化が準備中だそうだ。
職務中の交通事故により、警察官の父親を失った少年。突然の悲劇に遭った少年は父親の職場であるペンシルバニア州警察D分署に顔を出すようになる。
あたかも自分たちの家族のように、少年の悲しみを優しく受け止める分署の面々。分署の一員として、少しずつ生きていく力をとりもどしてきた少年は、ある日、分署長にひとつの質問をする。裏にあるガレージBの中にある50年代のヴィンテージ・カー「ビュイック8」は、なんなのかを……。
クルマがドラマの中心にあるということで、かつての作品「クリスティーン」のような作品かと思わせるが、読んでいる感触でいちばん近かったものは、「トミーノッカーズ」である。「トミーノッカーズ」は数百万年も眠っていた巨大UFOを掘り起こすことから起こったある町を襲った災禍を描かれている。それにくらべたら、本作にはずいぶんボリュームを絞ったような恐怖感だが、まるで神経繊維を陶器片でささくれだたせるように、日常と隣り合った理不尽な存在を描く筆致は両作に共通している。
物語のすべての要である「ビュイック8」は、自走することさえない。ずっとガレージに置かれたままである。クルマの形はしているが、クルマとしての機能がない。だが、このクルマには、予想もしない秘密があった。やはり、スティーヴン・キングだから、こういう描写はほんとうにうまい。その秘密にとりつかれた父親の姿を、父の同僚から聞かされる少年。
登場人物一人ひとりに対する暖かな視線と繊細な描写、人間に対する信頼と諦念がみごとに同居しているのだが、ドラマの核となる父親や少年、分署長への肩入れはちと物足りない。
感情描写を排した突き放しているような語り口も気になる。これは大いなる空白を外側から、ことばと指でたどるという本作の構造から生まれる部分で仕方ないとは思う。
もちろん、クライマックスは圧巻だし、爽やかといっていい読後感も、小説の匠ならではの技量なのだが、やはり、その空白が意識から離れることはなく、読後の食い足りなさにつながっているのかもしれない。
最初にもどるのだが、新潮文庫の帯がとにかくダメすぎなのだ。どこぞの映画会社じゃあるまいし、「少年の開眼、大人の勇気。」でも「少年の純真、大人の叡智。」といった作品中に書かれていない部分まで、書いちゃいかんでしょう。
| 回想のビュイック8〈上〉 | |
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| 回想のビュイック8〈下〉 | |
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帯のコピーがマイナスポイント
どうしたキング??
引きずり込まれ損なって・・・




コメント
はじめまして
TBさせてもらいました
よろしくです
投稿者: 慧 | 2005年11月04日 21:36