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【映画2005】メゾン・ド・ヒミコ

 「舞台挨拶があるから来なさい」といわれたので、「それならうかがいます」と、渋谷シネマ・ライズで映画「メゾン・ド・ヒミコ」。

 プロデューサーとして柴咲コウや犬童一心監督らと舞台に立つ小川真司は、そこはかとなく「おれはへとへとだぁ」という空気を漂わせている。おれは「がんばれ」と心から声援したくなる。夜7時30分の舞台挨拶のあと、クルマを運転して、山梨の現場に行く小川真司、がんばれ!

 さて、映画だ。「メゾン・ド・ヒミコ」だ。映画の前半は「まぼろしの市街戦」かと思っていたが、「コクーン」のような気がした……なんて書くと、それぞれの映画を見ていないひとにはさっぱりわからないよね。

 自分と母親を捨てた父親はゲイとして、銀座コリドー街にある伝説のゲイバー「卑弥呼」でママとして活躍。その後、バーをたたみ、ゲイのための老人ホーム「メゾン・ド・ヒミコ」を作ったが、死の床にあった。主人公、沙織(柴崎コウ)はそんな父を絶対に許せなかったが、父親の恋人である春彦(オダギリジョー)の提示する高額のバイト代にひかれ、「メゾン・ド・ヒミコ」で働くことになった。

 この映画がなによりもすばらしいのは、オダギリジョーの圧倒的な色気と、田中泯のすさまじい存在感だ。もうね。オダギリジョーを見ているだけで、その背中に抱きつきたくなるんですよ。映画の途中、首にタオルを一枚だけかけて、歩き回るオダギリジョーは、たいていの女優のベッドシーンよりエロかったし、白いシャツのしわがこれほどエロティックに見えるとは思わなかった。

 さらに、この映画の美点は、登場人物すべての本質がいっさい変化しないことにある。

 死ぬものはそのまま、死んでいき、映画冒頭にあった愛はそのままの形で愛となる。憎しみの根が消え去ることはない。さらにゲイはゲイのまま。映画の中で提示される数々の問題は、実際にはほとんど解決されることもない。果てしなくつづく傾斜のさきに、死はその口を静かに開けているし、それに対する悪あがきさえもない。

 観察者として、狂言回しとして、メゾン・ド・ヒミコを訪れた柴咲コウとオダギリジョーの軌跡はかぎりなく接近しながらも、平行線として触れることはないし、柴崎コウと父親、田中泯との間のふれあいもやはり、かぎりなく接近した平行線だ。至近距離の死も過去形の死さえもこの関係を変えられない。

 老いと死と差別されるゲイ……、このような設定なら、たとえようもない寂寥感があってもおかしくないし、その寂しさを語るセリフはあるのに、ドラマ作りの中でそれを感じさせないのは、オダギリジョーのゆるぎない色気、田中泯の一貫して張り詰めた表情、さらにとことん常識の範囲で感情を表現する柴咲コウの健康さにあるのだ。自分を確認する作業としてのセックスまで含めて、柴咲コウが映画の基準点となっている。

 本質は変わらない、変えられないけれど、ことばを受け入れることで、他者との関係は変わっていく。目を開いていくだけで、昨日よりは近くなれる。あるべきものをあるべきところに返してあげられる。

 それにしても空漠たる冥界の淵を思わせる海岸の老人ホームというロケーションが素晴らしい。この地は彼岸に直結した簿明の中にあるのだ。

 いったん離れた平行線が、ふたたび近寄っていく、ラストシーンは静かな感動をともなうが、見ようによっては恐怖さえ感じてしまう凄みがあるとまでいっちゃおう。

 映画のあとは巣鴨に移動。「飲みたい」と臨時召集をかけてきたキブンさんのもとへ。舞台は「ヤキソバーHIT」。スナックを居ぬきで利用した居酒屋……なのかな。目の前でパスタマシーンを使い、手打ち焼きそばを食べさせてくれる店だ。ジャンク系のメニューが多いんだけど、困ったことにどれもバリバリうまいんだよね。

 最近書いていた原稿で気になったことがあったのだが、キブンさんをはじめ、同席したマイミクのhirojkさんから裏づけがとれ、ほっとする。英文の資料を中心に見ていると、かえって日本での空気みたいなものとか、実情がわからなかったりするんだよね。

 ていうか、もっと早めに気づいて、聞いておけばよかったよ。

 帰りはほーせきさんと、いっしょにタクシーで……。

※こちらのエントリーもどうぞ。

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