28日は午前11時40分に、銀座・数寄屋橋の品川近視クリニックへ。いよいよイントラレーシック手術である。香水や整髪料はダメだし、静電気のおきやすい服装はダメだというので、シャワーを浴びたあと、ヘアトニックもつけなかったし、なるべく化繊を身に着けずに病院へ行く。
待合室のプラズマディスプレーでは、スピルバーグの映画「AI」が上映されていた。ハーレイ・ジョエル・オスメントが、「母親」の髪を一房切るシーン。まだ、始まったばかりだね。
受付で、事前に渡されていた同意書に署名捺印したものを渡し、手術料を支払う。手術料は税込みで198,000円だ。カウンセリング代、麻酔代、アフターケア費はすべて込み。ネットから印刷した5,000円割引券を使って、193,000円をクレジットカードで支払う。これで1930マイルをゲットだぜ。
このカウンターで、帰宅後、外出するときにかけるプラスチック製のサングラスと、就寝時に使う保護用眼帯を渡される。サングラスは二種類のものからひとつを選べるが、あとでかけたら、むちゃくちゃ人相が悪くなっていた。香港ヤクザ系だ。また、サングラスのパッケージには花粉防止用と書かれていた。なるほど。保護用眼帯は透明のプラスチック製。これは絆創膏で顔に貼り付けて、寝るわけだ。
まずは、直前の視力検査である。名前はよく知らないが、おなじみの覗き込む機械と、Cの字を上下左右に傾けたランドルト環の視力検査表でチェック。左右ともに視力は0.04とのこと。
いったん休憩室にもどる。「AI」では、とらえられたハーレイ・ジョエル・オスメントが見世物の中で、あわや溶かされそうになるシーン。
ふたたび呼ばれて、眼科医による検診。目の表面をチェック。「大丈夫ですね」といわれる。「最初の処置では、機械で目の表面を強く押さえつけますが、そのとき、中央に見える光を見て目をそらさないでくださいね。それだけ気をつけてくだされば、大丈夫です」
目に麻酔を点眼。手術の予定は12時40分と20分後だが、「今日は込んでいないから、大丈夫でしょう」といわれる。
待合室にもどると、歓楽の町、ルージュシティで、ハーレイ・ジョエル・オスメントはブルー・フェアリーを探していた。
しかし、そこからが長かった。午後1時30分、結局、「AI」をエンドロールまで見てしまったよ。そのあとに始まったのは「シカゴ」。好きな映画なのだが、音声なしでミュージカルを見るのはつらい。
そろそろ、「おれのこと、忘れられてませんか」と聞こうかと思ったところで、名前を呼ばれる。
手術室の入り口で靴を脱ぎ、サンダルに履き替える。首から自分の名前を書いた名札を下げ、頭には、頭髪の飛散を防ぐシャワーキャップみたいなものをかぶる。イントラレースFS30レーザーの機械のベッドに横たわる。
「あと3センチ、頭を上げてください。そうですね。もうあと1センチ上がりますか」
横になる位置が決まると、毛布をかけられる。
まずはフラップ作成である。フラップとは眼の表面にある角膜の表面を薄くコンタクトレンズのような形にめくり取る作業である。500マイクロミクロンある角膜のうち、100マイクロミクロンを、レーザーを使って剥ぎ取るのだ。このフラップそのものはCの形となり、一部がヒンジ(ちょうつがい)として角膜上につながった形となる。
フラップを作るメリットはいくつもある。
■ 角膜表面の膜(上皮とボーマン膜)を傷めないので、痛みが極めて少ない
■ 手術後早期(翌日)に視力回復が得られる
■ 上皮を剥がさないので、感染の危険性が少ない
おれの寝ているベッドがぐるんと回り、機械の下に頭がもぐりこむ。
機械と目の位置調整を済ませたところで、さっきの眼科医が登場。ソフトな声で、「柴尾さん、お待たせしましたね。ごめんなさい。これから機械が下りていきますが、ちょっとだけ我慢しましょう」また、目薬をつけられ、まぶたを開けっ放しにする器具がつけられたようだが、手早い処置にナニがなにやらって感じだ。
眼球の上に機械が下りてくる……。とはいえ、あまりに近い距離にあるから、眼球を押さえるといっても、よく見えないし、目には麻酔がかかっているから、目にかかる圧力もよくわからない。
周辺にいくつもの光点が、円を作っている。その中央をずっと見る。眼圧を調べるためだろうか、まず、機械が目を押さえつけたあと、女性の操作技師が「3.3です」がいうとともに、いったん力が弱まり、いよいよ本番。
どうやら、目の表面を切っているようなのだが、目に見えるものは先述の光の点だけだ。痛みはないから、つらくはないが、なんだか微妙に不安はある。「あと45秒です!」女性技師の声が聞こえる。「あと30秒」、「あと10秒です」。最後の10秒は、長く感じられたが、まず右目の処置は終わり、左目も同様に終わる。
そこから手術室を移る。歩く距離は4~5メートルなのだが、視界一面、白濁している。五里霧中というか、鼻をつままれてもわからないというか、なにがなにやらって感じだ。このとき、角膜表面に形成されたフラップはペロンとめくれているのだが、コンタクトレンズのように表面にぺたんとくっついているのだろう。
さあ、ここからエキシマレーザー照射である。ふたたび、横になり、機械の下に頭が移動する。この部屋の様子は、さきほどとちがって、ほとんど見えていない。
目薬が点眼され、まぶたが固定され、機械が近づいてくる。視界の中央にはぼやけた緑の光がある。その光を見てくれといわれる。ほぼ1分で完了するとのこと。「30パーセントです!」今度はパーセントで呼んでいる。「60パーセントです!」「90パーセントです!」まるで、ヤマト波動砲のエネルギー充填のようだが、120パーセントにいくことなく、レーザー照射は完了!
エキシマレーザーは、眼球の動きを追尾する装置がついているそうである。多少目を動かしても平気とはいえ、やはり、緊張する。
機械が取り除けられると、フラップを固定する作業だ。ここは手作業でやっている模様。円形の器具や、ピンのような器具がときどき、視野に入る。水で目を洗われる。なんか、目が料理されているような気がする。
「ああ、大きな目をしてますね。手術もしやすいですよ」と、いわれる。おれに大きな目のDNAをくれたじいちゃん、父ちゃん、ありがとう!
同様に左目も終了。「お疲れさまでした」の声とともに、解放される。看護師さんといっしょに術後の休憩室へ。途中でサンダルを靴に脱ぎかえたりもする。さっき感じた霧はかなり薄くなっている。どこになにがあるのか、だいたいわかる。痛みは全然ない。
薄暗い休憩室に到着。カーテンで仕切ったスペースにゆったりしたソファがたくさん並んでいる。横にナースコールボタンもある。「これで女の子が来たら、セクパブみたいだな」と思ったのは、大人の話だ。
「目を軽く閉じて、ときどき、まばたきしてください」といわれたが、どの程度のサイクルで瞬きをすればいいものやら……。往年のラジオ番組「歌のない歌謡曲」みたいな音楽がずっと流れている。
あらためて振り返るが、手術そのものはそんなにたいした負担ではなかった。つらさでいえば、1ヶ月前の「レーザー網膜光凝固術」のほうがしんどかった。左上をしっかり見てくださいといわれ、目の前から発射されるレーザーを視界に入れながら何発も何発も受けるのはけっこういやなものだったが、完全に横たわり、正面を見ているだけの手術には、それほどの恐怖感がない。もちろん閉所恐怖症のひとなどかなり、厳しいだろうが……。
15分の休憩後、同じ休憩室の端に設置された器具で、医師が目の状態をチェックする。とくに問題なし。
待合室のプラズマディスプレーでは「シカゴ」が佳境に入っていた。待合室の端にあるテーブルでカウンセラーの女性から、抗菌抗炎のもの、感染症治療のもの、保湿用のもの、そして、非常時のための眼科用表面麻酔の4種類の目薬と、炎症、アレルギー防止の内服薬をもらう。目薬の前者3種類だが、手術当日は1時間おきに点眼し、さらに、前の目薬とあとの目薬をさす感覚は5分以上あけることと指示される。
そのほかにも手術後の注意事項をあれこれと……。
午後2時過ぎには、銀座の町へ。
すこし白く濁っていて、うっすらぼやけているもののきちんと銀座の町が見える。とても不思議な感じだ。トイレの鏡でサングラスをかけた自分を見たら、かなりあぶなっかしい人に見えるが、しかたない。
そういえば、丸の内のTOKIAにできたインデアンカレーには、まだいっていない。やまけんブログでその存在を知って以来、ずっと気になっていたし、mixiのカレー大好きコミュで話題になっていたのだが、大阪では食べる機会がなかった。そのインデアンカレーが、東京にできたとなれば、いかなければならない。
大阪のカレーである。当然、生卵は乗っけるとしても、ルー大盛りもゆずれないところだろう。最初の一口は甘く、あとから、スパイシーな辛さが弾けると表現されるインデアンカレーだが、たしかにそのとおり! こっち系の辛さはぜんぜん平気なおれだが、付け合せのキャベツのピクルスを食べると、辛さがすっと引くのはみなさんが評するとおり。さらにルーそのもののコクもきちんとある。上品な旨みが口の中に広がるぞ。
残念なことに視界は、いまひとつだが、これはおいしい。
午後3時30分には帰宅。テレビやパソコンをあまり見ないようにしろといわれているし、PCの画面に焦点が合いにくいのも事実。本だって、読める状態じゃない。手術を受けた報告のみをmixiの日記にアップして、漫然とテレビを見たり、音楽を聴いたり、英語を練習したり……。
お風呂やシャワーも浴びてはいけないので、ほんとにやることがない。それでも手術後4~5時間は起きていなければならないので、困ったものだ。痛みがないこと、時間とともに視界がクリアになることはうれしいのだが……。
午後9時までおきてから、保護眼帯を絆創膏でぺたぺたとつける。むちゃくちゃあやしい。音楽を聴きながら就寝。