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【舞台・観劇】12人の優しい日本人

 やはり三谷幸喜の舞台を見られるというのは至福だ。チケット争奪戦が熾烈な中、けーむらくんの強運によって、見ることができたのも、幸せだ。

 今回が四度目の上演であり、映画にもなった「12人の優しい日本人」は、映画「12人の怒れる男」をベースに、日本にもし陪審員制度があったらという過程のもとにある殺人事件を裁く12人の典型的な日本人の姿を、コミカルに描いた傑作だ。


 浅野和之、石田ゆり子、江口洋介、小日向文世、鈴木砂羽、筒井道隆、生瀬勝久、温水洋一、堀内敬子、堀部圭亮、山寺宏一という、三谷幸喜の芝居やドラマではおなじみのメンツやそれほどでもないメンツが、舞台上に会し、開幕から終幕まで出ずっぱりで、ことばを交わしていく一幕もの。

 映画も観ているのだけれど、漠然とした印象しか覚えていなかった。なにより、1991年に映画を観たときは、三谷幸喜作品として意識していなかったんだよね。

 オリジナルが14年前に作られ、三谷幸喜自身がはじめての一幕ものとしてこれを作ったというのが信じられないほどの完成度だ。

 ことばの上に、ことばを重ねていく……。その言葉の中から裁判の焦点となる事件が浮かび上がっていく様はエキサイティングで、巧みなことばと、事件を想う出演者の演技から、見えない現場の光景が見えてくる小気味よさがある。

 優柔不断だけど頑固。自信家だけどいたずら者……。登場する陪審員たちのキャラクターも単調に作られているわけでなく、意外性に満ちたふたつの側面を、意外とは思えないほどみごとにかけあわせ、合議が進んでいくにしたがって、味わい深くみせてくれる。最後にはこういう人いるよねと、納得できてしまうのだ。

 なによりも下敷きにした名作「12人の怒れる男」から、にやりとする引用があったかと思えば、その名作をポーンとひっくり返すしかけもある。もちろん笑いもふんだんにちりばめられている。2005年の風物詩ともなったあんなものやこんなものが、絶妙のタイミングで挿入され、その手練れぶりには舌を巻く。

 ともすれば、理に終始しそうなドラマを圧倒的にかきまわす温水洋一はものすごい運動量の芝居を見せるし、一方の理の代表を務める小日向文世のイヤミな空気もたまらない。「12人の怒れる男」ではヘンリー・フォンダにあたり、審議の要をつとめる生瀬勝久もアメリカの両親を代表するヘンリー・フォンダではなく、悲しくもどこかにいそうな日本人陪審員なのだ。舞台が始まったときは、声が通りにくいように感じられた石田ゆり子も舞台が進むにしたがって、のども温まり、味わいを見せてくれる。ぜんぜん知らない人だったのだが、堀内敬子の天然で頑固でチャーミングな主婦という役柄には、ほんとに感心した。山寺宏一はもう山寺宏一なんだが、その存在感がすばらしい。江口洋介はまぁ、がんばっていたかな。

 終幕に近づくにつれて、この空間が終わることがせつなくなっている。自分が13人目の陪審員として会議室にいるかのような気分だ。ぜんぶ見終わって、また見たい。あと3回くらい見たいと、思ってしまう。すばらしい体験だった。

※こちらのエントリーもどうぞ。

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