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【映画2006】オリバー・ツイスト

 ワーナーマイカルシネマズ板橋2番スクリーンにてSDR鑑賞。

 「プライドと偏見」の直後にこれを見るのは、すっごい皮肉なことだよね。ほぼ同時代のイギリス。カントリーサイドにある「プライドと偏見」の世界では、貧しさの中でも上品な恋愛が生まれているのに、「オリバー・ツイスト」のロンドンでは、汚い街の中を、スリや強盗が闊歩している。

 恐ろしく精緻かつゴージャスかつダイナミックに再現されたオリバー・ツイストの世界観には舌を巻く。なによりもプラハで作られた19世紀ロンドンのセットがすごい!

 原作とくらべると、キャラクターは若干整理されているが、ベン・キングスレー演じるフェイギンをはじめ、著名なキャラクターはきちんと登場。善悪がないまぜになった男を巧みに演じている。


 ただね。これは困った作品なんですよ。主人公のオリバーをはじめどこにも感情移入のよりしろとなる存在がないから、上映時間中、ずっと対岸の火事を眺めている感じ。クライマックスから結末にいたっても「ほうほう、よかったですね」と、ため息まじりに感想をいうしかない。

 ロマン・ポランスキー作品はどれも好きだし、オリバー・ツイストを撮ると聞いたとき、「テス」や「ポランスキーの吸血鬼」のイメージを思い出し、かなり楽しみにしていたのだが……。このひとにこの映画を撮らせちゃいかんでしょうという結果は残念。

 低い位置に配したカメラ構図など、子供の視線をかなり意識しているのだけれど、ことばも行動も主人公があまりにも静的で躍動感がいっさい感じられないため、子供が主役の映画とはとても思えない。ロンドンまで70マイルを徒歩で歩いて、倒れたり、お仕置きされて倒れたり、腹ペコで倒れたり、撃たれて倒れたり、オリバーってば、寝っぱなしである。

 また、母の悪口をいわれ、喧嘩をするオリバーの「理由」が原作からカットされているため、観客にオリバーをジャッジする機会をあたえてくれない。

 オリバーは子供でありながら、さまざまな苦難を受けているが、子供としての魅力が観客に伝わらないので、苦難の痛みも伝わってこない。

 あらゆるキャラクターを独断的に裁かないポランスキーのビジョンは映画によっては魅力となるが、今回の場合、映画そのものの視座を混乱させてしまった。

 6000万ドルをかけた作品だが、2週間で打ち切られたアメリカの興行収入は200万ドル、ほかの国でのトータルが3100万ドル程度と苦戦しているのもわかる気がする。

 ポランスキーにはもっといっぱい映画を撮ってほしいので、この結果は残念なのだが……。

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