【映画2006】単騎、千里を走る。
ワーナー・マイカル・シネマズ板橋9番スクリーンにてSDR鑑賞。
不幸な行き違いから、何年も会っていない息子は民俗学者。その息子が死の床につく。余命なき息子との和解のために、老いた父(高倉健)が中国の奥地に向かう。息子が見たいといっていた仮面劇「単騎、千里を走る。」を撮影するために……。
故人をしのぶ旅というテーマは、映画やノンフィクションでもおなじみのものだ。この映画では、しのぶべき存在はまだ存命であるにもかかわらず、モチーフとしては近似している。人生はロードムービーの中に反映される。
高倉健は高田という役名だが、端から端まで高倉健である。言葉少なに、慈しみをもった目を持ち、不器用だけれど、誠実かつ着実に行動するあの高倉健である。
その一方で、「仮面劇を探しにぃ高倉健がぁ雲南省にいったぁ」と、ナレーションが入りそうなウルルン滞在記のようなイメージもある。ランドスケープや町並みの美しさなど、チャン・イーモウらしさは、ちょっと抑え気味だけど、きちんと見られる。
映画の中で描かれる中国は21世紀のものというより、80年代の雰囲気さえ漂う。すべての中国人たちは底抜けにお人よしだし、人間に対するあまやかな信頼が満ちている。
時をさかのぼることができない以上、人の歴史はすべてとりかえしがつかないものだ。しかし、旅という追体験の中で、感動や孤独をたどりつつ、誰かの存在を近しいものにすることはできる。
なにより息子の"不在"と"拒絶"がきちんと描かれている。コップはきちんと空になっているから、そこに満たされていく心情も豊穣だ。
自分は親子の距離感を描いた作品に弱いので、中盤からかなりぐずぐずに泣いていたのだが、チャン・イーモウ監督の中では、水準作といったところだろうか。
