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【社会科見学】高エネルギー加速器研究機構

つくばエクスプレスで秋葉原からつくばへ。さらに30分ほどかけて、路線バスで高エネルギー加速器研究機構(KEK)へ。
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日本の社会科見学の第一人者、ぴろり、さんが「加速器をみますか」と、声をかけてくれたので「加速器は見たいなぁ」と返事をした結果、はるばるとつくばにやってきたわけだ。
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ここからさきの説明は、基本的に文科系人間のおれが聞いて、わかったようなふりをしている内容なので、もしかしたら、とんでもない間違いがあるかもしれない。そのようなことがあった場合は、KEKの人が悪いのではなく、おれがひたすらに悪いので、そのように考えるように。

加速器とは荷電粒子を加速する装置の総称だ。おれが中学生のころは、加速器といえば、「サイクロトロン」! その名を聞いただけで、かっこよさげなものだった。だって、サイクロでトロンだ。それがつまり、なにをするものだか、いまひとつわからないものだったけれど、電子だか、陽子だかを、加速して、いろいろぶつけると、原子物理学が発展するという仕組みだ。

中学や高校のころは、ブルーバックスなど、よく読んでいたし、なんとなくわかったような気もしていたが、たぶん、気のせいなのだろう。

現在、KEKにあるのはサイクロトロンではなく、シンクロトロンだそうで、サイクロトロンとシンクロトロンの違いがどこにあるのかは、聞いても答えられないのだが、受け売りで言っちゃえば、今回の見学の目玉となったBファクトリー(KEKB)は周長3.016Kmの衝突型円形加速器で、大量のB中間子・反B中間子対を作り出すシステムだ。

最初に座学で、説明していただいたときに、「Bファクトリーは、世界で一番、反物質を作っている施設なんですよ」といわれてたまげてしまう。反物質なんて、物質と衝突すると対消滅を起こして、エネルギーが発生する物質だよ。SFなんかだと、対消滅機関なんてものがあり、ワープしたり、反重力を生み出したり、いろんなことができちゃうんだよ。そんな反物質なんてものが、筑波の山の中で、そんなにひょいひょい作られているなんてこと、想像もしていなかっただけに、くらくらする。
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まずは計算科学センターへ。NECの地球シミュレータをしのぐ最高性能を持つというIBMのブルージーンがずらりと10ラック。

納入されたばかりだそうだが、現時点で日本一速いスーパーコンピュータだそうである。Bファクトリーで生成されたB中間子の崩壊を、こいつが分析するのだ。側面が平行四辺形になっているのが、おもしろい。

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中身はPower PCチップが鬼のように詰まっているらしい。Nintendo64とか、Macの親戚である。

どんな計算をやっているのかはいまいち、わからないが「まぁ、がんばれよ」と、声をかけておいた。

研究本館の常設展示ホール「KEKコミュニケーションプラザ」で、粒子加速のことをざっとお勉強。つまりいろんな磁石で、加速したり、まとめたりするわけだ。
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いよいよ、KEKBへ。
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ここで案内してくださったのが、女性科学者にあたえられる猿橋賞を2004年に受賞された小磯晴代先生だ。

色めきたったのは見学者たち。上品かつメガネの女性科学者である。反物質を背中にしょっている女性科学者である。深く静かに萌えていたひとが多かったと、書いておこう。
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現在、KEKBを設置しているトンネルは地下11メートルにある。全周3キロのトンネル内には2本の真空のパイプがあり、1本を電子が、1本を陽電子が、限りなく光に近い速度で、回転しているのだ。電磁石で形を整えられ、電磁石で加速させられ、電磁石で方向を整えられる。これがつまり、加速器のシステムだ。だから、3キロにわたって磁石だらけ。

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かくして、加速され、エネルギーをたっぷりあたえられた電子と陽電子は、Belle測定器付近で、衝突する。電子も陽電子もそれぞれ、バンチと呼ばれるリボン状のかたまりにまとめられている。電子なら47億個、陽電子なら70億個から構成されているバンチ。加速器の中にはそのバンチが1000個以上存在している。

陽電子のバンチと、電子のバンチ、すべてが衝突するわけではない。衝突しなかったバンチはさらに回転していき、このコースを10億回以上回るという。

電子と陽電子がぶつかる頻度の高さをルミノシティというのだが、KEKBは世界最高のルミノシティを誇る施設なのだ。
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では、そうやってぶつかることで、なにがわかるのか。電子と陽電子、すなわち、物質と反物質が対消滅するプロセスこそ、宇宙の誕生、ビッグバンで起こったことだ。宇宙が誕生したときには、物質と反物質の双方があったはずなのに、いまの宇宙には、反物質はほとんど存在しない。なぜ、反物質は消えたのか。

そのあたりを解き明かすことが、この巨大な加速器の存在理由のひとつだ。Belle測定器はその様子をとらえる一種のデジカメみたいなものだ。
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通常は放射線が出るため立ち入り禁止のKEKBだが、現在はメンテナンス中とのことで、じっくりと見ることができた。

メガネの女性科学者にも萌えるのだが、やはり、磁石で包まれた長大なる機械にはもっと萌えるのである。KEK全体の消費電力は一般家庭16万戸に相当するという。
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さらに陽電子のパイプには、むき出しのコイルが巻きつけてある。KEKBの立ち上げ後、陽電子のバンチの断面の形がうまくそろわないという問題が発生。ある種の輻射が原因とわかったため、それを解決をするためにソレノイドを、人力で巻きつけていったのだそうだ。3キロの全長で、あらゆる隙間という隙間に、夏休み返上で巻きつけたのだ。

そして、その作業が完了したとき、KEKBは世界最高値のルミノシティをたたき出したという。プロジェクトXなら、一瞬、無音となり、音楽が変わる瞬間だ。
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つづいて、先端加速器試験装置ATFへ。
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近い将来の加速器として、インターナショナルリニアコライダーなるものが計画されている。全長50キロの直線型加速器だ。従来の円形加速器で見られたエネルギーロスをなくし、現在最高規模の5倍のエネルギーで、粒子を衝突させる加速器である。日本、アメリカ、ヨーロッパなどが誘致を画しているのだが、そのリニア・コライダーに必要な技術を研究する加速器である。
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果てしなく回転させて、何度も衝突の機会をもうける従来の加速器と違い、一回勝負の衝突をさせる加速器である。ウィルスの5分の1の大きさの極小サイズのバンチを、正面からぶち当てる制御技術が必要になるのだ。世界最大規模の施設で、ウィルスより小さいものをぶちあてる技術……。

気が遠くなりそうな話だ。
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それにしても、目の前にある加速器を見るとくらくらとする。高度に発達した科学は魔法に等しいものだそうだが、この金属の輝きとくねくねとしたケーブルは文字通り魔法の魅力だ!
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最後は、先生たちとの懇親会である。そこにいるのは世界的な権威の方ばかりである。懇親会なので、くだけた話などもどうぞということだったが、なにより、あれはいったいなんなのかを把握するために必死で、あれこれ聞いてみる。だからといって、把握できたかといえば、まぁ、そんなことで宇宙の秘密は解明されない。

現在、リニア・コライダーを日本に誘致しようとしているのだが、そのためには、多くの人のそれを望む気持ちが大切であるということ。

実験物理学の世界では、国際的な協力体制が理想的に進められており、キリスト教、イスラム、仏教など、宗教やイデオロギーが違っても宇宙の真理を探すという点で、多くの科学者が集まり、惜しみなく力を注いでいるということ。情報を共有していくインターネットの精神もこういった研究開発の土壌から生まれたということ。

そこにあるものも魅力的なら、そこにいる人も魅力的で、大変に密度の濃い見学であった。

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