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【映画2006】ポセイドン

 メルシャン品川アイマックスシアターにてIMAX鑑賞。

 いま東京で「ポセイドン」を鑑賞するのなら、選択肢は3つある。第一は通常の映画館でフィルム上映を見る。第二は六本木か板橋でデジタル上映のPure4Kで見る。そして、品川に行き、IMAX上映で見る。

 当然、最善の選択はIMAXだ。というか、これしかない。幅22メートル、高さ16メートル、5~6階建てのビルに相当する広大なるスクリーンで展開され、総重量1tを越えるスピーカーシステムで堪能するパニック映画は、至上の幸福である。

 この劇場で「マトリックス・レボリューション」や「バットマン・ビギンズ」を見たことがあるけれど、「ポセイドン」は違う。IMAX用に撮られたとしか思えない体験する映画になっているのだ。

 IMAXで見ると、画面の情報量が圧倒的にちがう! この作品の原題は「POSEIDON: THE IMAX EXPERIENCE」なのだが、文字通りEXPERIENCE!


 34年前のオリジナル「ポセイドン・アドベンチャー」はテレビで何回見ただろうか。荻昌弘が「現実には船が上下逆にひっくり返ることはありえないそうです」などと、放映後、したり顔で解説しているあの顔さえも思い出す。

 オリジナルは、独創的なアイディアとジーン・ハックマンの好演をのぞけば、アーウィン・アレン製作ものならではの、平板な印象の作品だった。パニック映画としてのクオリティは高いとは思うのだけれど、ロナルド・ニームという凡人監督の仕事としては、上出来なのだろうが……。

 新作「ポセイドン」は、旧作にあった人間ドラマさえも吹っ飛ばす快作だ。2時間30分くらいあるシナリオを、98分にダイジェストしたに違いない。投げっぱなしの伏線や設定、ディテールが、いたるところにある。

 それがまずいのかといえば、そんなことはない。きわめて正しい編集だ。

 だからこそ、IMAXという巨大なスクリーンで見る意味があるのだ。「バットマン・ビギンズ」みたいな説教くさい映画ではえられなかったカタルシスがある。

 あらゆる作品をB級テーストにするカート・ラッセルというシステムはきっちり働いている。英雄的な活躍をした消防士がその名声をもとニューヨークの市長になったものの、その後、人生を誤まる。って、これは「バックドラフト」の続編かよ! と、つっこみたくなるのは、折込ずみだろう。その経歴だけで、行動のすべてを説明できる便利さはすばらしい。

 ゲイで老齢の設計技師を演じるリチャード・ドレイファス。恋人(男)からの電話が届かない大晦日の夜、自殺を思い立つのだが……。

 普通の脚本ならば、この設定の中で人間の再生をきちんと描くものだ。

 しかし、このすばらしい映画は、そんなしゃらくさいものは描かない。リチャード・ドレイファスの役割はただひとつ。転覆した船のパーティ会場で、そのまま残る人、脱出しようとする人がいる中、「設計技師としての意見を言えば、この船は沈む。船はもともと上下逆にして浮かぶようにできてはいない」と、説得力を持っていう役割しかないのだ。

 リチャード・ドレイファスは脱出の途次やむを得ず、ある若者を蹴落としてしまうのだが、その後、若者の恋人といえる女性と出会う。いったいどんなドラマが描かれるのかと、期待するが、ドラマはない。というか、映画の後半、リチャード・ドレイファスは一言もしゃべらない。

 リチャード・ドレイファスなのに……。ゲイという設定は? 自殺をしようとしていたと設定は?

 もうね、そういうものはどうでもいいのだ。

 人間ドラマや設定はほんとうにその程度のご都合主義で、それが思い切りよくはまっているのが美しい。パニック映画はこれでなくてはならないのだ。

 クライマックスには当然、犠牲的な死もあるのだけれど、これもすごい。だって、泣けない。緊張感のなかのあまりの死に顔に、おかしくないのに笑いたくなるかもしれないけれど、泣けない。これが「海猿」だったら、それだけで、どんぶり飯10杯、食べられるくらいのおいしい状況だけど、泣けない。それでいいんだよ。そういう映画なのだ。ただ、映画を見ている間はそれを笑えるほどの余裕さえないけれど……。

 画面に映る土左衛門の数もたぶん最高であろう。もうね。いたるところで、土左衛門と、溺死体と、水死体だらけ。ぜんぶおなじですか。そうですか。みんな死にたてだから、生臭くはないけどね。

 巨大な吹き抜けを使ったクリフハンガーシーンも、IMAXの巨大スクリーンなら、1/1スケールで楽しめる。

 カンカンとなる船底や、水中をくぐるサスペンスなど、前作の本歌取りをしつつ、にやりとさせられるシーンもある。

 この映画をいまIMAXで見ることは、ディズニーランドでスターツアーズを見るより、エキサイティングな体験といえる。

 サウンドは最高に刺激的だし、「デイ・アフター・トゥモロー」、「オペラ座の怪人」のエミー・ロッサムの胸元も巨大サイズで味わえるし、もうね。残るものは何もないけれど、それでも見るべき体験が、この「ポセイドン」なのだ。

 心からオススメの映画です。ただし、IMAXで見なければ、すすめられない映画でもあります。

 映画の不満をあえて言えば、サバイバルの中で、エミー・ロッサムはもっとぼろぼろのあられもない姿になるべきなのに、最後までしっかりと胸元ガードをしていたこと。まぁ、健康的なお色気ってことなのか。

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