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【映画2006】パニック・フライト

 DVDにて自宅鑑賞。

 70年代に、「サランドラ」を作り、80年代に「エルム街の悪夢」を作り、90年代に「スクリーム」を作ったウェス・クレイヴンの新作だ。日本では劇場公開されず、DVDのみで公開。

 ウェス・クレイヴンは当たり外れの幅が大きい監督だけれど、メリル・ストリープ主演の音楽映画「ミュージック・オブ・ハート」なんて、非ホラーの佳作もあるくせものだ。職人として肩の力をぬいて作ると、うまいひとだ。 さらに潜在的に若さ、瑞々しさの表現がうまい。若い役者の旬の表情を引き出すのが得意なのだろう。

 「パニック・フライト」なんて、やる気のない邦題がついているが、原題は「Red Eye」。これはred-eye flightともいい、飛行機の深夜発明朝着便を意味する。乗客が睡眠不足で目を赤くするところから、名づけられたという。


 昨年秋、ジョディ・フォスターの話題作「フライトプラン」の前に、ざざっと撮りあげ、一気に公開した結果、アメリカでスマッシュヒットを飛ばした作品だ。

 日本で、「フライトプラン」にあやかって、「パニック・フライト」としたかった気持ちはわかるが、そもそも「フライトプラン」にあやかるだけの甲斐性はない。しかも、だれもパニックしてないし……。

 ちなみに、「フライトプラン」は製作費が5千万ドルで、米国内興行収入が9千万ドル弱、Rotten Tomatoによる満足度が38%であるのに対して、「Red Eye」は製作費が2千5百万ドルで、米国内興行収入が5千8百万ドル、満足度は80%である。

 ジョディ・フォスタークラスのスターが出ていない映画としては、大健闘である。さすがに海外のマーケットでは苦戦をしているが、非スター映画として、仕方のないことだろう。

 ひとことで言えば、爽快なサスペンスだ。一流ホテルのフロントマネージャーであるリサは、ダラスで祖母の葬式に立ち会ったあと、マイアミへの最終便を待つ空港でハンサムで優しい男、リップナーと知り合い、機内で隣り合った席に座る。

 冗談めかした会話の中で、自己紹介をするリップナー。「自分は暗殺をしているんだ」

 それは真実だった。リップナーは政府要人暗殺のために、リサの協力を求める。「協力しないと、お前の父親を殺す」と……。

 この映画がすばらしいのは、リサが決してくじけないことだ。負けないことだ。

 絶望的な状況の中で、テロリストに対してさまざまな抵抗を試み、実行と失敗をくりかえす。何度失敗しても負けない。高度3000メートルの密室で、集団の中での孤独ともいえる、テロリストとの一対一の対決を繰りひろげるのだが、いやみにならない頭の良さと、凛とした勇気で立ち向かっていく。

 たしかに陰気で狂気じみた「フライトプラン」なんかより100倍くらいおもしろい。

 なによりもアメリカの映画館で大勢の観客といっしょに見たい映画だ。リサの活躍に対して、声をかけて応援したい。映画を見終わったあとには「よくやった」と喝采を送りたくなる。

 リサが戦う理由、戦える理由、戦いをやめない理由が映画的にうまく処理されており、女優、レイチェル・マクアダムスの豊かな表情もあいまって、好感が持てる。

 テロリスト役のキリアン・マーフィもいい。「バットマン・ビギンズ」にも出ていたらしいが、まったく覚えがない。微妙に崩れたハンサムで、不気味な青い目が印象的だ。ストーリーの設定上、無名(IMDBproのSTARmeterで346位)に近い彼が起用されたのは、仕方ないのだが、かれの存在が成功の鍵だったね。

 まもなく「United 93」も公開されるが、911事件以来、アメリカを覆っていた"空"への憂さを晴らす小気味よさが受けた理由のひとつなんだろうな。

 近所のDVDレンタルにおいてあったら、ぜひ、ご覧ください。プログラム・ピクチャーとしては最高の作品です。

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