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【映画2006】スーパーマン リターンズ

 圧倒的に美しく、震えるほど気高い映画だった。ワーナーマイカルシネマズ板橋9番スクリーンにてSRD鑑賞。

 ワーナーブラザースのロゴサウンドにわずかにかぶせたジョン・ウィリアムスのあの旋律。そして、本編が始まるとともに、堂々たる"スーパーマン"のテーマが鳴りわたる。

 しかも、クレジットの文字がストリーク効果で流れるんだよ。ストリーク効果といっていまわかる人がどれくらいいるのか知らないけれど、立体の文字が半透明の輪郭の軌跡を残して、飛んでいく技法で、いまならCGでお手軽にできるけれど、往時はフィルムの長時間露光で処理していた。

 「スーパーマン」シリーズのタイトルといえば、ストリーク効果というくらい不即不離の関係で、これはテーマ曲と重ねて、クリストファー・リーブ主演、リチャード・ドナー監督の「スーパーマン」の直系の子孫であることをダイレクトに伝えているのだ。

 ちなみにここだけの話だが、ぼくはクリストファー・リーブのスーパーマンのうち、3作目の「電子の要塞」が一番好きだったりする。

 「スーパーマン」に愛情のある人は、「1」と「2」が好きなようだが、ぼくはもう「スーパーマン」よりもリチャード・レスター監督のセンスとか、リチャード・プライヤーの悪ノリがたまらなかったりするんだよね。

 ちなみに2もレスターの監督作品だが、ドナーのリリーフ登板だったりして、ぼくは苦手だった。4作目はクリストファー・リーブ自身が原案に参加したものの、脱力もののダメ映画だった。

 また、テレビドラマ版の「新スーパーマン・ロイス&クラーク」はけっこう好きだった。これは若き日のテリー・ハッチャーが好きだったため。

 だからまぁ、いかなる意味でも「スーパーマン」のファンとはいえないんだけどね。

 さて、「スーパーマン・リターンズ」だ。ドラマは故郷のクリプトン星を求めて、5年間、宇宙を旅してきたスーパーマンが地球に戻ってきたところから始まる。

 スーパーマンが不在の間に911事件が起き、世界は混迷をきわめている。デイリー・プラネット紙に復職するものの、ロイス・レーンは結婚しており、子供までいる。それどころか、「スーパーマンは不要」という記事で、ピューリッツアー賞候補になっている。

 復職したクラーク・ケントは「5年もどこへ行っていたんだ?」と聞かれるのだが、ジミー・オルセンが「自分探しの旅だよ」とかわりに答えられてしまう。もちろんそれも間違いではないんだけどね。

 はっきり書いてしまえば、今回の作品はスーパーマン=イエス・キリストとしての再構築だ。5年間の空白はキリストの40日の荒野に相当するものだろう。キリストがサタンの誘惑に耐え、人間に道を指し示すために、王ではなく、導くものとして戻ってきたように、スーパーマンも帰ってきた。

「たとえお前が地球の人間として育てられても、お前は彼らのひとりにはなれない。カル・エルよ、地球人には偉大になる可能性があるし、そうなろうとしている。ただ、彼らには正しい道を明るく照らす光が欠けているのだ。だからこそ、彼らに善をなす可能性があるからこそ、私はただ一人の息子であるお前を彼らのもとに送ったのだ」

 北極の要塞で、父、ジョー・エルが息子に語るその言葉は、そのまま父なる神がイエスにあたえた使命だし、養母、マーサ・ケントが聖母マリアをなぞらえているのはわかりやすくあらゆるプロットで、この映画はキリスト受難劇の数々をなぞっている。

 ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」でもキリストはスーパーマン同様、赤と青の衣を身にまとっているという指摘もある。

 ではこれは、辛気くさかったり、説教くさかったりする映画なのだろうか。

 そんなことはない。最高にすばらしく、最高の娯楽をもたらすエンターテインメント作品なのだ。

 スモールビルの畑で少年時代の自分を回想するシーンはセリフもなく、この星で生きていく決意を描いている。 このあたりの映像はかつての映画「スーパーマン」の少年時代のシーンと重なっている。

 暴走した次世代スペースシャトルとB777を墜落から救うシーンは圧倒的にすばらしく、かつてリチャード・プライヤー相手にするしょぼくれたスーパーマンに拍手を送っていたおれさえも、「帰ってきた! スーパーマンが帰ってきた!」と、涙を流させた。

 もうね。救出が成功したところで、劇場のいたるところで、ぐすぐすと鼻を鳴らす音が聞こえるんですよ。

 つづくスーパーマンの活躍の数々は、キリストの奇跡に重なる。絶対にぶれない"道"を行動で示すスーパーマンは、その行動だけでも感動を呼ぶ。

 監督のブライアン・シンガーは「X-MEN」シリーズもよかったのだけれど、「X-MEN」をしのぐ堂々たるシナリオをありがとうって感じだ。

 すばらしいのはクラーク・ケントやスーパーマンのセリフを最小限に抑えたこと。もともとスーパーマンは「正義」と「真実」と「アメリカンウェイ」(Truth, Justice and the American Way)の守護者たる存在だ。しかし、いまや「アメリカンウェイ」と無邪気に語れる時代ではない。

 もちろん、最初の救出劇では、アメリカの象徴ともいうべき、スペースシャトルを救出し、旅客機を、大リーグの球場におろすということで、「アメリカンウェイ」の香りはしっかりのこしているのだが……。

 また、ロイス・レーンとのラブシーンでさえ口数が少ない。百の言葉よりも雄弁な大空でのデートだが、彼はロイスの愛をとりもどすことはない。スーパーマンが不倫をするわけには、いかないとはいえ、さまざまなシーンで見せる彼の孤独の深さは、同時にこの地球を故郷として生きていく彼の決意の気高さをはっきりと浮かび上がらせる。

 まぁ、スーパーマンの忍ぶ恋ってのもなかなか、ロマンチックかな。

 スーパーマン役、ブランドン・ルースは美しい。この美しさは監督がゲイだからとかで片づけるわけにはいかない。

 ケイト・ボズワースはオーランド・ブルームの恋人という認識しかなかったが、左右の目の色が違うオッド・アイが、今回のテーマを象徴しているようで意外や好印象。

 2時間40分という尺はかなり長いし、あと20分くらい短いほうがいいとも思うのだが、新時代の寡黙な救世主という意味づけをされたスーパーマンはせつなく、もう一度くらい付き合ってやろうかと思う。

 この映画は「スーパーマン」の「リターンズ」のみならず、亡きクリストファー・リーブの「リターンズ」であり、911に失われた信仰の「リターンズ」でもある。

 品川のIMAXでは一部3Dで公開されるっていうから、そっちも見にいこうかな。

(※追記)IMAXの同作を見てきました。感想はこちら


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コメント

>2時間40分という尺はかなり長いし、
ありゃ、そうですか?
僕は、昨日最初の公開時間にみました。もうすこし活躍してほしかったぐらいに思いましたが?
スターウォーズ3と同じく。
時間配分はうまく出来ているようですよ。

好評のようなので、次回作が期待できそうですね。

■コウスケさん
  はじめまして(ですよね?)。コウスケさんのコメントを読んで、不思議に思う点はいくつかあります。

1)最初から最後までこの映画について絶賛している文章の中から、なぜ「2時間40分という尺はかなり長いし」というところだけをわざわざぬきだして、そこについて、あげあしをとるような感想を書くのでしょう? 他の部分とか、お読みになっていないのでしょうか?

2)「時間配分はうまく出来ているようですよ。」と、いう具合になぜ、「ようですよ」と、伝聞の助動詞を使うのか、。「時間配分はうまくできている」というのは、コウスケさんの意見ではないのでしょうか。

3)なぜ、面識もなく、親しく交流した覚えもないのに、「ありゃ、そうですか?」などと、くだけた文体を使うのか。

 とはいえ、返事はお待ちしていませんから、書かなくていいです。

「あげあしをとるような感想」とうけとられたようで、ごめんなさい。

もちろん全文読んだ上で書いたのです。
僕は、コメントというものは、書かれた内容についての個人的感想を書くものだと思っていたのです。

「ようですよ」というのはもちろん僕の感想です。
そちらの感想とちがったようなので、ついこういう書き方になってしまいました。

またついくだけた書き方をしてしまいもうしわけありません。

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