【映画2006】ブラック・ダリア
ワーナーマイカルシネマズ板橋1番スクリーンにてSRD鑑賞。
デ・パルマ作品では「アンタッチャブル(1987)」とか、「ミッション:インポッシブル(1996)」といった世間的な代表作ではなく、「殺しのドレス(1980)」や「ファントム オブ パラダイス(1974)」、「カリートの道(1993)」、「ミッドナイトクロス(1981)」といった作品が好きだ。
技巧派といわれるデ・パルマだが、デ・パルマ映画が最高に冴えるのは、やるせない愛情をデリケートにあつかったドラマを撮るとき、そして、そのドラマにふさわしい女優を配したときだ。
だから、ジェシカ・ハーパー、ナンシー・アレン、ペネロープ・アン・ミラーといったデ・パルマ女優は、おれ的なオールタイムベストに入る。
「ブラック・ダリア」は、そんなデ・パルマ映画の系譜に連なる一本として、すばらしい作品だった。
ミスター・アイスと呼ばれた元ボクサーの刑事、ドワイト・"バッキー"・ブライチャートは、ミスター・ファイアと呼ばれた花形ボクサー、リーランド・"リー"・ブランチャードとともに、ロサンゼルス警察特捜課の花形として活躍する。
幸せな時代、このふたりにリーの妻、ケイを加えた三人はひとつのチームとして機能していた。
しかし、空前の猟奇殺人が起こったとき、そのチームに亀裂が入る。
腰からふたつに切断された全裸の女性、エリザベス・ショート。口は耳まで切り裂かれ、内臓は抜かれ、太股にはえぐられた傷があり、手のひらには聖痕のような傷があった。女優志願で、娼婦まがいのことをしていたエリザベスは、ブラック・ダリアとも呼ばれていた。その捜査をめぐって、狂気がチームを覆っていく。
なにかにとりつかれたかのように、捜査にとりくむミスター・ファイア。戸惑いの中、ケイへの思慕を振り払うように、ブラック・ダリアにそっくりな富豪の娘、マデリンとの情事を重ねていくミスター・アイス。
事件は思わぬ進展を見せ、ロサンゼルスという町の暗部をも見せていく。
ジェームズ・エルロイの複雑なプロットの小説をわずか121分に圧縮した技量はみごとで、スプリットスクリーンなどで知られた"技巧派"デ・パルマの技巧があまり目立たない仕上がりとなっている。
もしも、監督名を伏せて、この映画を観たら、「デ・パルマ」っぽいけど、ちがうかなといってしまうかもしれない。
冒頭の長回しから、堂々たる俯瞰撮影、階段でのさりげないパンフォーカス、360度回しなど、それらしい技巧はたっぷりとあふれているのだが、すべてがドラマの中に自然に織りこまれているから、デ・パルマらしくない。
25年ぶりに登場する盟友、ウィリアム・"ファントム"・フィンレイも、デ・パルマ印なんだけどね。
だが、なによりこの映画をデ・パルマ作品だと感じたのは、さまよう愛情……、ミスター・アイス、バッキーの行き場のない恋愛を、ナイーブに描く視点にだ。
同僚の妻だからこそ手を出せないケイ。捜査の迷宮の中でサイレンのように誘ってくる富豪の女、マデリン。その二重螺旋にとらわれながら、ポルノフィルムの映像の中で、バッキーを誘ってくるブラック・ダリア。
ケイ役のスカーレット・ヨハンソンはみごとにデ・パルマ・ヒロインのひとりになったといってもいいだろう。
幻想のような恋愛模様こそが、複雑に構成されたこの映画の鍵なのだ。
121分という上映時間に圧縮された謎と謎解きは、字幕で読むにはあまりにもハードで、劇場には「うあ! 訳がわからないよ」という空気が漂っていた。
だって、主人公の刑事コンビが、ブライチャートとブランチャードでわかりにくいところに、ケイ、マデリン、エリザベスと3人の女の名前が、いったりきたり。さらになんたらが出所して、かんたらが殺されて、うんたらが新しい人物でと、混乱すること必至だ。相当な集中力が必要だし、その集中力が叙情を妨げるうらみもある。
「ミッドナイトクロス」以前のデ・パルマが好きな人には、積極的にすすめよう。「アンタッチャブル」とか、「ミッション:インポッシブル」のデ・パルマが好きな方には、きついかもしれない。



コメント
>だって、主人公の刑事コンビが、ブライチャートとブランチャードでわかりにくいところに、ケイ、マデリン、エリザベスと3人の女の名前が、いったりきたり。さらになんたらが出所して、かんたらが殺されて、うんたらが新しい人物でと、混乱すること必至だ。相当な集中力が必要だし、その集中力が叙情を妨げるうらみもある。
引用が長くてすみません。
自分の頭の中はまさにこんな状況でした(泣)
マデリンの母親の狂気が強く印象に残ってるようじゃあかんですね。
再挑戦しようかな・・・
ちなみにデ・パルマ作品ではボディ・ダブルが一番好きです。
投稿者: わんだ | 2006年10月21日 01:58
ほんとにこみいったプロットだし、マデリンの母親はスペシャルに強烈でしたよね。そこだけ別の映画からきたみたいでした。
投稿者: 柴尾英令 | 2006年10月27日 19:26