【舞台・観劇】エキストラ
おなじ三谷幸喜の「オケピ!」同様、傍流というか、エンターテインメントを支える裏方に焦点を当てた群集コメディだ。
俳優としてスポットライトの当たる存在ではなく、美術とか、大道具とか、小道具とか、つまりバックグラウンドと同等のエキストラたちの喜怒哀楽を立体的に描いた作品になっている。
三谷幸喜作品のすべてを見ているわけではないけれど、自分のみた範囲の三谷作品の中では、もっとも冷めたヴィジョンにあふれたものだった。
たとえば、端役である自分たちの名前をきちんと覚え、その名で呼びかけてくるスタッフ。
「あのひとはいい人だね。私たち、エキストラの名前をきちんと読んでくれるもの」
「ああいう下の人にいい顔をしたい人は、上の人にもいい顔をしたい人なのよ。みんなにいい顔をしたいんだから」
うろ覚えなのだが、セリフのいたるところに、残酷なまでにすっきりした人物観察があふれ、登場人物たちはその観察通りの人格を見せていく。
佐藤B作が率いる東京ヴォードヴィルショーの全劇団員に加えて、伊東四朗や角野卓造といった「グッドニュース★バッドタイミング」でもおなじみの芸達者が主軸を支え、はしのえみが全体をさわやかにまとめている。
伊東四朗がなにかをやりそうだと思えば、客席が固唾をのむし、なにかをやってくれれば、喜びに満ちた笑いが生まれる。
さまざまな事情をかかえつつ、現場ヒエラルキーの最下層ともいうべき、エキストラの世界にしがみついている人々。かれらの工夫や演技なんて、ドラマや映画という完成品の中では、些細なものにすぎない。
撮影しているのが、元アイドルの男女が主人公のタイムトラベル冒険ドラマの撮影という設定なので、江戸時代の百姓から、未来人、縄文人、進駐軍といったエキストラの見せ場も多く、めくるめくような笑いの構図もある。
なんらかの目的を目指しそこに達するといった構成をとっていないため、ドラマ全体に大きなうねりは生じないのだが、それだからこそ、エキストラ一人ひとりの喜怒哀楽すべてを飲み込んで、現場は動くという輪廻転生にも似た無限ループが浮かび上がる。
「ショー・マスト・ゴー・オン」そこから生まれる狂気と無情が複雑な余韻となり、夢さえも折れていく「どん底」の哀愁がこみあげる胃液のように感じられるコメディだった。
よく笑いつつも、やがてぞくっと寒くなるような作品だ。底意地の悪いAD役の奈良崎まどかは、まさにもうけ役。ちょっとどきどきしながら見てしまったよ。
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