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【映画2007】カーテンコール

 DVDにて鑑賞。

 北九州市八幡東区にある実家からわずか450メートルほどにある映画館「前田有楽劇場」は、ポルノ映画館で、八幡製鉄所西門から吐き出される男たちにしばしの夢をあたえていた劇場だ。

 一昨日聞いた落語に高校生が背伸びしてポルノ映画館に行くとき、大人1枚とかいって「ここは大人しかないのよ」と、ばれそうになる話があったけれど、ぼくも高校生のころに大人のふりをしながら入って、谷ナオミが縛られたり、未亡人が下宿であれこれしてたり、たまにしなやかだったり、したたかだったりしながら、そういう4本立てを見たりしたものだ。

 映画「カーテンコール」は、まさにその「前田有楽劇場」が物語の要となる映画館となる。映画の中では、下関の「みなと劇場」として登場するのだが、これはもうどこからどう見ても「前田有楽劇場」で、映画を観ているときに、とてつもなく奇妙な感覚になった。

 あるトラブルにより、東京の写真雑誌編集部から、福岡のタウン誌編集部に異動になった香織(伊藤歩)のもとに届いた一通のはがきから物語は始まる。

 かつて映画産業華やかなりしころ、下関の映画館「みなと劇場」に幕間芸人がいて、映画と映画のあいだに声帯模写などの芸をしていた。下関といえば、香織の実家があるところ。このはがきに興味を引かれ、香織は取材を始める。

 「みなと劇場」は映画的タイムマシンとして、現代と過去、ふたつの時代をつなげる装置となっている。昭和36年当時の幕間芸人を演じるのは修平(藤井隆)。上映事故の場つなぎをするために舞台に立ったことから、幕間芸人となった修平はやがて映画を見に来ていた良江(奥貫薫)と出会い、結婚。ふたりのあいだに娘が生まれる。

 しかし、映画の最盛期はやがて終わり、修平たち家族の運命も……。

 ドラマは中盤で修平が済州島から来た在日韓国人だということがわかり、急展開。海峡をはさんだ親子の話になっていく。

 これはつまり、名もない人のドラマなのだ。

 シナリオの構成で考えると、つながりに疑問も多く、アトモスフィアとエモーションでつながっている印象なのだが、どんな町にも「ニューシネマパラダイス」があり、あたりまえの人間模様に見えても、背後には複雑な事情があることを、柔らかなタッチで描いている。

 けっして本職ではないまま、映画全盛期の熱気のままに、幕間芸人になってしまった修平を演じる藤井隆を形容するには、かの懐かしき「ペーソス」なるフレーズを使うしかあるまい。どこか悲しい笑顔がいとおしい。劇中、彼が半島の出身者とわかり、その表情さえも納得がいくのはうまいしかけだ。

 そして、いまよりももっと活気があり、町に人があふれ、町そのものが生きていたあの時代に、そういう名もない幕間芸人がいてもひとつもおかしくないリアリティがある。なんてったって、おれもいまから、25年以上前、あの映画館でどきどきしていたわけだから、ちょっと平気ではいられない。2年半前、ちょうど帰省しているときに、この劇場を使ったロケがあったとかで、撤収作業をのぞきにいったりもした。

 最近「DEATH NOTE」や「海猿」、「ALWAYS 三丁目の夕日」、「初恋」など、北九州でロケをした作品は多いのだが、たとえば、「初恋」のときのように、黒崎中央大劇が新宿の映画館になったりしても、同時代的シンクロニシティはない。

 聴きなれた土地のことばとともに、この作品にあふれる上品なノスタルジーと、おれ的当事者意識の混淆はなかなか気持ちがいいものだった。
 

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