« ワセダミステリクラブOB | メイン | 東京ディズニーシー »

【映画2007】長州ファイブ

 ワーナーマイカルシネマズ板橋5番スクリーンにてSRD鑑賞。

 「長州ファイブ」というフレーズを初めて知ったのは、京王百貨店の駅弁大会で、そういう駅弁を見たときだ。すごいネーミングだと思っていたら、ロンドン大学に「長州ファイブ」として顕彰碑が立っている長州藩からの5人の留学生の呼称として実在したらしい。

 井上聞多(馨)、遠藤謹助、山尾傭三、伊藤俊輔(博文)、野村弥吉(井上勝)の5人が長州ファイブとのこと。井上馨、伊藤博文はもちろん有名だし、井上勝、遠藤謹助は聞いたことがある程度。山尾傭三はまったく知らなかった。

 まぁ、駅弁の縁もあるからと、見てきた次第。

 開巻、ペリー来航がスーパーで文字表示される。幕末の約束事、「1853年 黒船来航」ってやつだ。その直後「泰平の眠りを覚ます上喜撰、たった四杯で夜も眠れず」とおなじみの狂歌がつづく。これを読んだとき、いやな予感がして、この映画を選んだことを後悔した。

 ペリー来航まではいいのだけれど、これを紹介するときに必ずつける「上喜撰(蒸気船)」の狂歌はもう辞めようよという気分になる。

「上喜撰」の狂歌は、本といえば、司馬遼太郎しか読まない、田舎のおじさんが、幕末の話をするとき、かならず口にするくどいフレーズにしか思えない。

 おじさん、それ、もう何度も聞いたから。

 つづいて映像に映る大名行列。ふたたびいやな予感がしたら、生麦事件をていねいに再現。

 このあたりのバカ正直な描写の連続はちょっと辟易する。事実、これらは時代背景の説明以上には映画としての機能がないシーンだ。

 つづく英国公使邸焼き討ち事件と前後して、高杉晋作をはじめ長州藩士がでてくる次第。

 全体に驚くほど多くのロケーション撮影をやっていて、それには感心する。しかし、せっかくのロケ地を見せようとするためか、かならずフレーム内に数人の全身がうつるミドルショットでシーンを回し、長いセリフを話させる。「もったいない」精神はほどほどにしてほしい。

 役者の顔をきちんとみせたくないのかと思ってしまう。

 長州ファイブの面々は松田龍平を除いて、有名な役者ではないから、アップがないと、だれがだれだかわからない。

 セリフと顔を一致させてくれというのは、正直な気分。

 印象としては、学習漫画ならぬ、学習映画だ。セリフによる時代背景説明が多すぎる。幕末の5人の志士の群像をしっかり描くべきなのに、そこを雑にしている。なんだか、漫画文庫版の「そのとき歴史は動いた」を読んでいるような雰囲気だ。あるいは、地方の博物館用に作られた歴史再現作品を見せられている感じというか。

 彼らを渡航させた藩主、毛利敬親の会話のなかで、「長州のため、"いきたるきけえ"になって、留学させる」というフレーズがある。

 「いきたるきけえ」のフレーズは「生きたる詭計」とか、「生きたる奇形」とか、聞こえてしまい、ちと混乱する。長州弁なまりのようだが、この映画のテーマらしくその後、何度も頻出する。「詭計」や「奇形」ではなく「生きたる機械」とわかったのは、けっこうあとになってからだ。

 武士という身分を捨て、異国の地で自身を精密機械のように鍛練するというニュアンスなのだろうけれど、あんまりいいフレーズではない。

 生麦事件とか高杉晋作をていねいに描いているひまがあったら、長州ファイブの一人ひとりの見分けがつくようにきちんとキャラクター立てしてほしい。

 ひとりひとりの肉声が聞こえず、歴史本の一部をセリフで話している感覚なのだ。

 英国の姿を見て、「攘夷ではなく、開国を!」といいだすのはけっこうだが、彼ら自身が攘夷論が大勢を占める長州の中で、どのようなスタンスをとっていたのかをきっちり描いていないから、単に節操がない男に見えるし、後世の史観で当時を裁く居心地の悪さがある。

 いくつか笑いを誘うシーンもあるのだけれど、それが笑えないのは、人間を描くカメラワークを怠っているからではないか。

 話が動き出すのは、彼らが船出してからだ。主人公が松田龍平が演じる山尾傭三だとはっきりわかってきて、興味深くなった。ルーマニアで撮影されたロンドンやグラスゴーのシーンなど、物語の説得力になっているし、山尾傭三が聾唖者の女性と知りあったことで生まれるメロドラマは、映画にいろどりをあたえてくれる。

 ここでやっと松田龍平のアップが多くなる。ちょっと遅すぎるのだけれど。

 安川午朗の音楽……、とくにテーマはケルト系楽器までもちだした胸躍るものだけれど、使いどころがいまひとつで、もったいない。

 では悪い映画かといえば、そうでもない。仲間の帰国により、長州ファイブが長州ワンになり、ドラマがグラスゴーに移って以降はテーマもきちんとフォーカスされて、おもしろくなる。

 聾唖の女性を救うために、剣ならぬ角材を持って戦うところなど、そうだよ、そういうのを見せてくれよと声をかけたくなる。

 メロドラマにもなっていない作品が、メロドラマになる快感。でもその快感も終幕ちかくでは、長く続かないんだけどね。

 映画による山口県の街おこし作品としてのクオリティはそれなりにあったと思う。ただ、そこにいた若い5人の人間臭い息吹をもっと感じさせてほしかった。
 

※こちらのエントリーもどうぞ。

« ワセダミステリクラブOB | メイン | 東京ディズニーシー »

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:

コメントを投稿

ネットでラクラクチケット予約購入、e席リザーブでシックスワンダフリー

最近のエントリー

カウンターetc

人気ブログランキング - ゲームの王道 atom rss2.0
total カウンタ:today カウンタ:yesterday カウンタ

Pagerank/ページランク

人気記事ランキング

Google Adsense