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【映画2007】世界最速のインディアン

 テアトルタイムズスクエアにて、SRD鑑賞。

 タイトルから、ものすごい勢いで走るネイティブ・アメリカンを想像する人は多いだろう。原題に忠実なのだが、ちょっと損をしている邦題だ。インディアンとはバイクのこと。

 「クロコダイル・ダンディー」、「ライトスタッフ」、「紅の豚」、「チャンス」、「ハリーとトント」……。かつてみた、さまざまな映画が頭に浮かぶ。優れた作品だった。

 インバーカーギルはニュージーランド南島のその南、つまり西欧世界の再辺境ともいうべき土地だ。そこに住むバート・マンロー(アンソニー・ホプキンス)は、地元のバイク乗りたちにもよく知られた男だ。

 かつてはハーレイ・ダビッドソンと並ぶアメリカン・バイク、インディアン。中古で買った1920年型インディアン・スカウトにさまざまなチューンナップをして、記録を伸ばしていく。

 63歳の彼の夢は地球の裏側である米ユタ州のボンヌビル・ソルトフラッツで開催される「スピード・ウィーク」に出場して、200マイルの世界記録を作ること。

 年金暮らしの日々の中で節約して、渡航費用を貯めるのだが、老齢による前立腺障害に加えて、心筋症まで併発して、自身のタイムリミットを思い知る。

 映画のオープニングは、ガレージのような彼の家の内部。壁一面に並んでいるのは、使い古したエンジンのピストン。そこにいきなり「奉納」という文字の字幕。どこの神社かといわんばかりの和風なフレーズで、おれの頭の中に「?」が浮かぶと、Ofeerings to the GOD of speedの手書き文字が現れ、「スピードの神に」と字幕が追う。

 ああ、このことばの匂いは戸田奈津子! と思ったら、やはり、戸田奈津子だった。

 ボンヌビルにたどりついた主人公、バートが「ここで陸上の最速記録が生まれた」とか字幕でつぶやく。「陸上」だって? 頭の中には、カール・ルイス、ベン・ジョンソンとかが浮かぶ。ここは空中で飛行機が打ち立てたスピード記録に対して、地面を走る乗り物の記録のことをいっているわけだから、「陸上」ではなく、「地上」といえよ。

 さらにスピードの表記も相変わらず、勝手にマイル→キロ変換をやっている。200マイルというきりのいい目標をいっているのだから、最初に一回、時速100マイル(160キロ)とか、字幕を書いておいて、その後はマイル表記に統一しろよ。おかげで、クライマックスにややこしい数字が並びまくる結果に。

 また、音声では何度もkiwi(=ニュージーランド人)といっているのに、そこにポイントを置いて字幕を書いていないから、ベトナム戦争の時代、ニュージーランドの田舎から、アメリカに来たという基本的な設定が、うやむやになっている。

 「Dirty old men need love too!」のあたりも、もうちょっと工夫してほしい。

 まぁ、戸田奈津子だから、しょうがないか。

 基本的に「stranger in a strange land」もののひとつともいうべき作品だ。つまり、ある強力なキャラクターをもつ異邦人が、異国にやってくる。ふたつの違う文化が人を通して、接触し、反応しあうことで、浄化作用を及ぼす。

 映画としてはロードムービーである。オーストラリアからやってきた「クロコダイル・ダンディ」や、猫とバイクの違いはあるが、旅をするアメリカ老人という点では「ハリーとトント」にも似ている。

 素朴で独特のユーモアを持ち、夢に正直な、バートと出会ったアメリカ人はバートに手を貸していく。車を格安で売り、ガレージを貸し、一夜の宿をくれ、薬をくれ、お守りをくれ……。

 ベトナム戦争に疲弊していた60年代末のアメリカで、バート本人が魔法の杖であるかのように、ささやかな心の奇跡を生み出していく様子は、ピーター・セラーズの「チャンス」のようだ。

 映画の中で、いくつものピンチは生まれるのだが、お湯の中でくしゃくしゃの紙がほぐれていくように、自然に解決されていく。いやもうバートはなにかの神だよね。

 人が人に親切にする喜びは自然な感情なのだが、この映画にあふれているのは、その豊かな流れなのだ。

 そして、技術とスピードにかける男という意味では、「ライト・スタッフ」や「紅の豚」を思い出させる。

 映画の中ではたくさんの人がバートを応援するが、自分もその一人として、応援したくなる。

 ロジャー・ドナルドソン監督は作品ごとに当たり外れが大きい。「13デイズ」など、見るべきアメリカ映画ベスト100にも入れた作品だが、「カクテル」など、微妙なものもある。

 ドキュメンタリー・テーストの作品で、いちばん腕を発揮する人だと思うが、この作品はかなりの当たりだ。

 テアトルタイムズスクエアはもとIMAX館として設計されているので、椅子の形状がきつく、長時間鑑賞には向いていない。それでも、ここがすばらしいのは、撮影で実際に使用したインディアンの実車がスクリーン前に置いてあること。
indian_movie01.jpg indian_movie02.jpg

 映画鑑賞中は、リフトで奈落に落ちるのだが、上映が終わるとまた、せりあがってくる。

 映画が終わると同時に大勢の観客がバイクに群がり、写真を撮っていた。


※こちらのエントリーもどうぞ。

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