【映画2007】龍が如く 劇場版
ワーナーマイカルシネマズ板橋7番スクリーンにてSRD鑑賞。入り口のプレートにはSRD-EX表示があったけれど、エンドロールを観たら、SRD-EX用のプリントは用意されていない模様。
ああもう、セガってば自社製作でこんな映画を作っちゃって、どうするんだろう……と、そういう視点でレビューを書くつもりで、劇場にいった。
ネットでは「この映画に1,800円を払うなら、「PS BEST」版の原作ゲームに1,980円払ったほうがマシ」などと原作ゲームファンががっかりレビューを書いているし、もとより三池崇史監督の作品には当たり外れが多いし、監督本人が「映画秘宝」のインタビューで「笑える暴力を描いた」とか、「それってどうよ」な発言をしてたし……。
まるっきり期待はできなかったけど、うっかり映画版「デッド・オア・アライブ」を見逃した俺としては、このトンデモ映画の香り漂う作品まで、見逃すわけにはいかない。
ところが、ところが、ところが、これ、映画として、すばらしくおもしろすぎです! ほんとに掛け値なしにおもしろかった。
いろんな予断を大きく裏切る快作で、これを映画館で見ていられる幸福にたっぷりひたることができた。
ヤクザ映画だと勘違いしているレビューも多いけれど、これって映画の構造的にはロバート・アルトマンばりの群像コメディなんだよね。そこにクエンティン・タランティーノの百倍の技量のアクションが加味されている。
歌舞伎町ならぬ架空の神室町という舞台で、マヌケな銀行強盗、右往左往の警察官、手当たりしだいに強盗をくりかえす若いカップル、わけありのホストたち、異常なまでにMの情報屋、韓国人のスナイパー、マル暴の刑事、母を探す少女、秋田犬、すさまじい回復力とバッティングセンスを持つ片目のヤクザ、そして、出所したばかりのヤクザが、暑い夏にそれぞれの理由で動きながら一夜を彩っていく。
登場するキャラクターに対しては余分な説明がいっさいない。必要最低限の情報があるだけだ。さらに映画全体の方向を告げる消えた百億の金と、消えた母親という鍵はあたえられるが、文字通りのマクガフィンとして、ドラマを進めていくだけの存在だ。ドラマ作りには大きな要素となっているけれど、ほんとはどうでもいい合言葉ね。
余計な説明こそないからこそ、くっきりと映画の中で生きているキャラクターが鮮烈だ。なかでも岸谷五朗が演じる片目の直情径行ヤクザ、真島吾朗が、もうめったやたらにすばらしく、この映画の見せ場の八割に登場している。
岸谷五朗が出ているだけで、映画が活気づく。
岸谷五朗と北村一輝のタイマンシーンすべては出色で、タランティーノは爪の垢を飲めという出来なのだが、「♪五朗と一輝、なかよくケンカしな! ゴロゴロゴロ、ニャーゴ、イッキ、イッキ、イッキ、チュー」というネタをふってどれくらいわかるのか知らないが、そういう幸せなタマの取り合いだった。
これは21世紀の歌舞伎町ではなく、どこかの時代のニホンとかいう国の神室町という設定だから、もうクライマックスにさえある「ありえねぇ」展開も楽しい。
そこそこに入っていた劇場では、客席のいたるところで観客の頭から「?」、「?」、「?」、「?」、「?」が浮かんでいたのだが、そんな様子でなければ、おれは随所で声を出して笑っていただろうし、とてつもなく幸せで、とてつもなくかっこいいセンスが横溢していた。
映画というメディアが持つ楽しさのエッセンスは、この作品の中に凝縮されており、おれはそれだけで、嬉しくなってしまった。
もちろん、多くのレビューがよくないのはわかる。ヤクザ映画を観ようと思った人には、義理も人情も浮世の渡世も感じられない。暴力を観ようと思った人には、痛みとスリルの感覚は感じられない。ストーリーを読み取ろうにも、群像劇の中でなにがなににつながるのかわからない。真剣に見ていたら、とんでもないギャグがやってくる。
「原作のファンならおすすめ」という陳腐なフレーズがある。小説にしても、ゲームにしても、原作のファンが満足するような映画化というのは、なかなかない。どんな映像化でも本人のイマジネーションと解釈にはかなわないからだ。
この映画でもそういうレビューを読むが、それはどうかと思う。
これは「龍が如く」というゲームを大好きな人には、けっしてオススメができない作品だ。だって、ゲームをよく知っているまじめな人だったら、この映画の世界観は許せないでしょう。
そういう意味で、最初に書いた「ああもう、セガってば自社製作でこんな映画を作っちゃって、どうするんだろう」というフレーズはぴったりかもしれない。この内容じゃ原作ファンは喜ばないし、この映画を観て、原作をやりたくなる人はいないだろうから。
おれがセガのプロデューサーならシナリオを読んで、ストップをかけるよ。それが仕事だからね。
ゲームをやっていないとストーリーがわかりづらいというレビューもあるけれど、大丈夫です。この世界観はゲームをやっていなくても伝わります。逆にゲームでついたキャラクターに対する先入観がない分、いいくらいです。
この映画を薦めるのは、タランティーノとかロドリゲス作品のなにかが好きだけれど、いまひとつ乗り切れないという人かな。あとはやっぱり、三池崇史の笑いのセンスに違和感がない人だね。
暴力パラダイスの真夏の夜の夢は、すばらしかったよ。
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