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【映画2007】ゾディアック

 ワーナーマイカルシネマズ板橋5番スクリーンにてSRD鑑賞。

 アメリカで劇場型連続殺人の代名詞ともいえる「ゾディアック事件」。その顛末を報道と捜査にフォーカスして描いた作品だ。

 現代の日本でもさまざまに血なまぐさい事件が起きているわけだし、911という悪夢やコロンバイン高校の乱射事件など経験した21世紀において、旧世紀の連続殺人鬼はどこか手ぬるい感じがしてしまう。


 19世紀ロンドンの「切り裂きジャック」にしても彼が殺したとされるのは5人程度だから、意外と少ないと感じられてしまう。20世紀カリフォルニアのゾディアックさんも5人程度ですか。

 映画としても「アポカリプト」ですさまじい数の死体を見せられたあとでは、有名なゾディアックさんも手ぬるい感じがしてしまうのですよ。マヤの首切り司祭に比べたら、おまえなんか、ちいせぇ、ちいせぇ!

 映画は1969年から始まり、70年代前半を中心に描かれる。その時代の西海岸の様子を当時のフィルムカラーそのままにリアルに描いているのは、すばらしい。

 フォルクスワーゲン・ゴルフの初期モデルなど、ああ、父親も乗っていたと、懐かしく見られたし、いたるところで、自分が集中的に映画を見はじめたころの「現代」があって、そこにはほんとうに浸っていた。

 劇中でもゾディアック事件をモデルにした「ダーティハリー」のプレビュー上映などがあり、1962年生まれの監督、デヴィッド・フィンチャーのこの時代に対する"思い"がきちんと反映されている。

 スタイルに淫しがちなフィンチャーとしては、珍しくオーソドックスに撮っている。時代の再現にエネルギーを注いだのだろう。ただ、いつものフィンチャーと同様、人間を描くのはとことん弱い。

 たぶん、ゾディアック事件という迷宮で、人生を崩していく男たちの姿を描きたかったのかもしれないが、まるっきり描けていない。だから、時代の再現フィルムとしてはよくできていてもその時代を描く映画としてはまるでダメ。

 同様の未解決連続殺人を描いた韓国の「殺人の追憶」のほうが、濃密な空気とあやういユーモアのおかげもあって、きちっと時代を切りとっていた。

 「殺人の追憶」には追跡シーンを初めとしてアクションも多いのだけれど、「ゾディアック」は警察署と新聞社を舞台にしているだけあって、動きが極めて少ない。

 もちろん、役者はみんながんばっているのだが、悲しく空転しているのがせつない。眼鏡をかけたクロエ・セヴィニーに、ちょっとときめいてしまったけどね。

 ゾディアック事件は犯人探しの側面よりも、劇場型犯罪として「スクールバスを襲う」宣言から発生したマスヒステリーなどをきちんと描かなければ、現代において理解されることはないのに、そのあたりはさらっと流している。

 映画を見ていて思うのは、「ゾディアックはたいして悪いことやっちゃいないのに、なんでこんなに、刑事や記者や、新聞漫画家が身をもちくずしていくの?」という疑問だ。フィンチャーってば、ていねいに描けば描くほどこの事件を陳腐化させている。

 「Zodiac Unmasked」という事件を徹底取材したノンフィクションをベースにしていることが、完全に裏目となっており、どんでん返しというフィンチャーの得意技も封印されている。

 この映画の見どころは、フィルムもビデオテープも使わずに、撮影段階からハードディスクを使い、フルデジタル処理で身近な過去を再現しているあたりなのかもしれない。「ALWAYS 三丁目の殺人」みたいなものだ。

 これだけの技術力があるのにもったいない。おれならこの技術を使って、天地茂の「非情のライセンス」とか、きちんと70年代を舞台にリメイクするのに。 市川染五郎が主演なら、かなりはまるよね。
  

※こちらのエントリーもどうぞ。

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