【国内旅行】信州狂熱の伝統花火・2
信州花火旅行の二日目だ。朝4時まで飲んだあと、朝8時の朝食は眠い。
「おはようございます。昨日はいろいろ話していたんですけど、ほとんど忘れちゃいました。どうやら宇宙の秘密も解明したような気がするんですけど……」
それでもお茶碗2杯のご飯をいただく。ダイエットはお休みである。
立川談之助師匠と瀧川鯉朝師匠は浅草東洋館の「やれば出来るぞ! 古典落語」のために、ここでお別れ。
タクシーで「小黒川のおおまき」こと、「ミズナラの巨木」を見にいく。国指定天然記念物の木はだ。ミズナラとしては日本最大級の巨木で、一般には樹齢300年といわれているが、700年近いのではないかという話もある。毎年のように花火を見に来ている開田裕治さんが、村への感謝の念をこめて、10月28日に開催される村の「さわやか文化祭」のポスターを描くとのことで、その取材でここにきたのだ。


なによりも大きく広がった枝ぶりが美しい。枝の部分だけで、何百年もかけて育ってきたのだ。ちょうど管理人さんもいて、根の合間に、舞茸が生えていることを教えてくれる。天然モノの舞茸は珍しい。28日にはこの木のそばで、お茶立て会があるそうだ。
そのあとは今夜の花火の会場、下清内路諏訪神社を訪れる。夜になるとわからないが、真新しい櫓は、漆を塗ったばかりで、キラキラと輝いていた。

タクシーで向かった「曾山入口」バス停から乗り合いバスで飯田駅前へ。通常のルートなら、30分強で到着する距離だが、私立病院経由とのことで、1時間近くかかる。その分、たくさん寝られてよかった。
飯田の駅前商店街はまだ、シャッター商店街になりきっていない印象。おもしろそうな店もたくさんある。きれいに区画整理された市街地だが、昭和22年の「飯田の大火」を機に整備されたらしい。
ここで、FKJさんと合流。まずは「そば処 おにひら」飯田店で、軽くランチ……。そういえば、開田あやさんが「あまり食べ過ぎないように」と注意してくれたようだが、きっと昨日の酒で損傷を脳細胞がダメージを受けているらしい。「おにざる」に、きのこご飯、海老天盛まで食べてしまう。

そばとしては昨日食べた「末廣」のほうがうまかったかな。
昼のメインイベントは、「飯田市川本喜八郎人形美術館」だ。これは圧巻だった。NHKの人形劇「三国志」は、大学生のころ、放映していたこともあって、きちんと見た覚えはない。だが、「三国志」であるから、登場する人物の数々はおなじみだ。

関羽の人形。エントランスのこの一点だけが撮影可。
四半世紀前に作られたとは思えない劉備、関羽、張飛、諸葛亮の表情のみずみずしさよ。現代のWETAの工房にまさるとも劣らない。1979年作の人形アニメ「火宅」なども見て、充実の体験。
それにしても、なぜ、飯田に川本喜八郎なのだろうかと不思議だったが、今田人形、黒田人形、竹田人形と人形浄瑠璃、人形芝居に200年近いの歴史を持つ飯田では、「いいだ人形劇フェスタ」など、人形文化が盛んで、そこに招かれた川本喜八郎が、自作の人形を住まわせる地として、ここを選んだのだそうだ。
すっかり堪能したあと、博物館の談話室でうとうとと眠る大人たち。睡眠不足でない方は、ここにおいてある横山光輝のマンガ「三国志」などを読んでいた。

ヒコクさんの車で「料理庵 見晴」へ。鯉がうまい店と聞いていたが、いやもう先付けから工夫を凝らしたゴージャスさだ。とれたての松茸を自分で焼いて食べる。木炭ではなく、卓上コンロ用の固形燃料で焼くのがちょっと残念だけれど、それでも秋の味を堪能。


そして、鯉である。まずはあらいから。軽く酢味噌をつけていただく。むっちりした鯉の油の甘さをともなううまみが、口の中に広がる。たまらん。

さっき「おにひら」で天ぷらを食べた自分を呪うよ。しかし、胃袋のマージンはうまいもののために広がるのだ。

そこへ登場したのが、鯉の塩焼きだ。60センチくらいある鯉を口に含むと意外なうまさ。大人になって鯉の塩焼きを食べたことはない。子どものころ、北九州の河内貯水池のそばの割烹で鯉を食べたことはあったけれど、ほとんど記憶がない。川魚といえば、臭いという印象があったのだけれど、臭くない。それどころか、上品な香りがある。さらに口の中に含み、噛んでいるとじんわりとうまさが広がる。熱々の鯉の皮もうまい。

人生における"鯉"観が変わる体験でした。シメに五平餅をいただく。ここの名物である五平餅は、小判型のものではなく、丸く平らに伸している。香ばしく焼きあがった餅がふんわりしていて、味噌も上品にうまい。
ああ、昼に天ぷらなんて食わなければよかったよ。ほんとに。
ヒコクさんに車で下清内路諏訪神社へ。花火が始まる時間まで、ご友人のお宅に上がらせていただき、いろいろと話をうかがう。花火の手筒や、火薬を磨る薬研など見せてもらう。

花火の番付表。その裏には今回の花火に寄進した人の一覧が。「開田裕治と仲間たち」の名も!

手筒花火を抱えるあやさん。このあと……。

これが薬研!
下清内路諏訪神社へ。昨夜同様の肌寒さであるが、体の中心からホカホカしている。このあと、みんなで話したのだが、このぬくもりは鯉のおかげではないか。雑に「鯉パワー」とかいっていたけど、なんだか不思議な調子のよさは翌朝も続いていた。
昨日の「上」と「下」の一番の違いは「近さ」である。「上」の花火は小山の上の広場で行われるのだが、「下」の花火は民家が立ち並ぶ中に立つ神社の境内で行われる。伝統があるから、この近さでも花火を仕掛けられるのだが、こんな至近距離で新たに許可が下りるわけはない。
今回もざっと編集した動画があるので見てほしい。見ようによっては戦場である。ほんとに近い。ぼくらとちがう場所で撮影していた開田裕治さんは迫り来る火の粉を前に、必死でこらえて、逃げなかったとのこと。
また、製法もちがうこともあり、「上」と「下」では火の粉の重さもちがって見える。「上」の仕掛けの多様さはないけれど、こちらのほうが神事に近い印象だ。

大きな見世物のひとつは、手筒花火! 1メートル近くある手筒を「捧げ筒」の姿勢で保持し、そこから吹き上がる炎をヘルメットなしの全身で、浴びるのだ。自分で作り、自分で発火させる究極の自己責任だ。

3本の手筒が終わったあと、ヒコクさんがうれしそうにしている。噴射し終えた花火をもらったのだ。太い竹の周囲をしっかりと密に荒縄で締め上げている。年に3本しかない縁起物だ。玄関にかけると厄除けになるという。
と、「わたしももらいました!」と開田あやさん。どうやら終わったばかりの村の衆が「ほしい人にあげます」と、やってきたところ、ウルウルの目でゲットしたとのこと。ヒコクさんのものより、大きい筒である。もたせてもらうとずっしりとしている。これには火薬が入ると、さらに重いだろう。
「いま、警察に捕まったら、硝煙反応でまくりだね」などと話しながら、宿にもどる。宿では2時くらいまで、酒盛り。
清内路村の名産、アカネ大根を使った「あかねちゃん」なる焼酎を、あやさんが買ってきている。2006年産だ。少しいただく。ふわりとしたアルコールの香りに続き、たくあんのごとき、かなりユニークというか、独特というか、稀有というか、おれの好みとはちがう香りが立ち上る。うひゃああ。話に聞けば、これは2006年製で、2007年は樽仕込でかなりうまくなっているそうである。
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