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【映画2007】ラストキング・オブ・スコットランド

 DVDにて鑑賞。

 ウガンダ大統領イディ・アミンの主治医となったスコットランド人青年ニコラス・ギャリガンの視点から描いた原作「スコットランドの黒い王様」をもとにした作品。


 アミンといえば「人食い大統領」の名をほしいままにし、アントニオ猪木とも戦う話もあった。実際は反体制派の国民、30万人を虐殺した「アフリカで最も血にまみれた独裁者」だ。

 アミンを演じたフォレスト・ウィテカーがゴールデン・グローブとアカデミーの主演男優賞をとったこの作品の評判は耳にしていたのだが、なるほど、評判どおり、すさまじい作品だった。

 血も涙もない独裁者という表現はよく使われる。しかし、血や涙がなければ独裁者にはなれない。血が濃くて、涙が豊富なほうがいい。それが民衆の熱狂の種となり、独裁者の座を近づける。そして、血が濃くて、涙が豊富であればあるほど、かける愛情に対する見返りのなさに孤独を感じ、絶望でもがく中、他者を傷つけていくのだろう。愛を裏切られた思いこそ、人を残酷にする。

 個人的な経験でいっても、だれかにむごい仕打ちをする人は、だれかをものすごく好きになる人だ。同性からでも異性からでも好かれすぎるということは、危険なことだ。好きが裏返った人は、愛情をこめて迷惑なことをする。

 そんな身近な独裁者は、好きと決めた人の人間性をほめそやし、能力を高すぎるほど評価し、過剰な贈りものとともにやってくる。褒める技術で武装している。もちろん、ほめられた人、評価された人、なにかをもらった人は、うれしくなるものだ。そちらへいきたくなるものだ。

「ラスト・キング・オブ・スコットランド」では、フォレスト・ウィティカーが、愛情あふれるカリスマ、アミンを好演している。スコットランドから訪れた医師を厚遇し、彼の諌言を喜び、自身の主治医につかせた上に、衣食住のいたるところで、あらゆるもてなしをする。

 スコットランドとはまったくちがう色彩にあふれた情熱の大陸で、すさまじいカリスマに魅入られて有頂天になっていく主人公。あたりまえだよね。このあたりは脚本も巧みだ。だが、愛情をふんだんに発散する人は、愛情をかならずとりたてにやってくる。愛情の高利貸しなのだ。

 構成としては、「地獄の黙示録」同様、コンラッドの「闇の奥」以来の、非文明に染まる文明人ものと考えてもいいだろう。

 愛情という闇に取り込まれる中、間接的に自身の手も血まみれにしていく主人公。その闇から逃げ出すことが主眼となる後半は、サスペンスの魅力にあふれている。さまざまなシチュエーションが効果的に使われ、いくつかのショッキングなシーンも含めて、高いテンションを楽しめた。

 この映画の巧みなところは、アミンがむかしのいい大統領から、悪い独裁者になってしまったのではなく、最初からいい人であると同時に悪い独裁者でもあったことをきちんと描いていることだろう。

 30万人の虐殺という歴史は重いものだ。だが、気をつけたほうがいい。アミンはすぐ近くにいるし、自分の中にだって住んでいる。

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