【映画2008】スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師
TOHOシネマズ六本木7番THXスクリーンにて、SRD鑑賞。
アラン・リックマンの美声は男の自分でさえ、聞いていてぞくぞくするものだけれど、歌声も絶品だった。ダーク・ミュージカル「スウィーニー・トッド」は主演のジョニー・デップの歌ばかりが注目されているが、競演者もすばらしい。ヘレナ・ボナム・カーターの触り心地のよい歌声に酔い、「ボラット」こと、サーシャ・バロン・コーエンの表現力にぞくぞくした。
とりわけ、クライマックスでジョニー・デップとアラン・リックマンデュオを歌うシーンは、すさまじく官能的だった。興奮した。この色気したたる音楽空間をどれだけ堪能できるかが、作品堪能の鍵だろう。
歌手がほとんど出演しないミュージカルである。歌手が演技をするのではなく、役者が歌うアプローチは見るものを興奮させる。
オリジナルのミュージカルは見ていない。だから比較はできないのだが、すさまじく孤独な人々のドラマである。悪魔の理髪師、スウィーニー・トッド、彼に部屋を提供するミセス・ラヴェット、悪徳判事、のタービン、そして、トッドの娘、ジョアンナまでもが、自分の欲望に忠実に生きている。他人の都合などおかまいなしだ。欲望に支配された人々はすべて孤独だ。
そんな中に残された、たったひとつの人と人とのつながり。そのつながりが大量の血のまじわりとして表現されるラストシーンは、くるおしい感動を呼び起こす。すべての歌声が血と混じり、血の中に消えていくかのように。
グロテスクという評価が多い。たしかに大量の血が出る。その血の色をより鮮烈にするために、地の映像も鈍色に染めている。しかし、本来の意味で言うグロテスクさは微塵も感じられなかった。精緻に美しく、多用する顔のクローズアップがときめきを生む。全体のアレンジでサイレント映画の風味を活かしたのも見事だ。
グロテスクではないが、はっきり伝わるのは痛みだ。ゾンビ殺戮映画「28週後」も見たのだが、そちらではかけらも感じられなかった身を切る痛みが、大量の切り口映像とともに、ずんずん伝わってきた。
劇中でジョニー・デップの妻役をやったローラ・ミシェル・ケリーという女優がいいなと思っていたら、この作品の中で、彼女だけが、歌手出身だったのね。
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