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【映画2008】やわらかい手

 銀座シネパトス3番スクリーンにてSRD鑑賞。

 英国の田舎町で慎ましやかな生活を送る初老の未亡人、マギー。孫の難病治療のために高額な海外渡航費用が必要になった。仕事を探すが、職歴も技能もない彼女に就ける仕事はなかった。たった一つ見つけた仕事は、ロンドンのストリップバーの手こき役だった。

 一枚の壁に丸くくりぬかれた穴があり、男性客がそこにペニスをつっこむ。男性客から彼女は見えず、彼女から見えるのは男性客のペニスだけだ。やむにやまれずはじめた仕事だったが、彼女の「やわらかい手」は評判となった。イリーナ・パームという源氏名となった彼女の穴の前には、長蛇の列ができた。パームはpalmだから、「手のひらイリーナ」くらいのニュアンスかな。

 店のオーナーが、この店のアイディアは東京の風俗店からいただいたと説明する。

 正確に言えば、もともとはニューヨークあたりのストリップバーにあったサービスを、1980年代前半、歌舞伎町の風俗店「ワンダラー」がいただいたもの。「ワンダラー」はフーゾクの総合デパートと称し、1階にはノーパン喫茶、2階にはヘルス、3階にのぞき部屋、そして最上階にあったラッキーホールというサービスというサービスが、この「やわらかい手」のモデルだろう。ラッキーホールの場合は客の顔の前に、工藤静香とか早見優とかの顔写真の切り抜きがあり、その下にマジックで稚拙な体が書いてあった。

 往時は山本カントクが下世話にフーゾクレポートしていたような店だが、「やわらかい手」にはそんな下品さはかけらもなく英国映画らしい落ち着いたトーンが全編にあふれている。なにより、最底辺といってもいい仕事を通して、英国の田舎町コミュニティや、亡夫、そして息子や孫といった、自分の生を束縛するものから、解放されていく主婦の姿を抑制の効いたタッチと上品なユーモアで描いた作品なのだ。

 主演のマリアンヌ・フェイスフルといえば、「あの胸にもういちど(1968)」のヌードシーンが雑誌「スクリーン」などによく掲載されていた美人女優だった。

 ところが、本作では恰幅のいい女性となり、当時の面影もない。この手の店で彼女を実際に見たら、萎えてしまうのは確実だ。

 ちなみに田舎のブリッジ仲間として登場するジェニー・アガターは歳をとっても美しいのだけど……。

 だが、マリアンヌ・フェイスフルの存在感と演技がこの映画にしっかりしたリアリティをあたえているのは、味わい深い。

 モラルある主婦が下品な仕事に遭遇しつつも、芯の部分で下品に染まらず、職業倫理としても上品に誇り高く生きていく姿は、ひたすらチャーミングだ。

 息子やかつての同僚の過剰反応など、話を進めるための無理やほころびもあった。そんなほころびを目にしたとき、これはありえざるファンタジーなのだと、鼻白む瞬間もあったけれど、総じてよくできた映画といっていいだろう。

 ひとつ、彼女の腕に起こった現象でものすごくおもしろいネタがあった。「ありえねぇ」とか思いながらも、聞いた瞬間に大爆笑。完全につぼにはまってしまった。

 許容範囲内の自分探し映画といってもいいんだろうね。魅力的なアイディアにリアリティを着彩して、立体的なものにした手腕はたいしたものだ。

 

※こちらのエントリーもどうぞ。

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