【映画2008】ウォーター・ホース
ワーナー・マイカル・シネマズ 板橋2番スクリーンにてSRD鑑賞。
つまり、「ET」だとか、「河童のクゥと夏休み」だとか、「のび太の恐竜」だとか、「遠い海から来たCoo」だとか、「REX 恐竜物語」だとか、おなじみのボーイ・ミーツ・エイリアンものである。今回、少年が出会うのはネッシー(=ウォーター・ホース)なわけだ。
時代は1942年。ネス湖湖畔のお屋敷にイギリス陸軍連隊が訪れる。北海で跳梁跋扈するドイツUボートをネス湖に誘い込み、撃破する陣地を作るためにやってきたのだ。お屋敷には、少年と姉と家政婦の母が住んでいる。水兵とした少年の父親は海上で戦死。だが、少年はその死を認めず、父親が満期除隊する日を待っている。そんな少年がネス湖の湖畔で見つけた卵から、不思議な生き物が生まれて……。
なにしろWETAがSFXを担当しているから、映像はほんとうによくできている。また、スコットランドとニュージーランドで撮影したシーンは瑞々しく、ジェームズ・ニュートン・ハワードの音楽は心に響く。
で、よいところはそれだけだ。
だいたい、ボーイ・ミーツ・エイリアンものであれば、少年がひろった生き物を苦労して育てるシークエンスが前半の映画的サスペンスになるのだが、まったくといっていいほど、それが見あたらない。
戦時中である。ただでさえ、餌の確保に苦労しそうな上に、キッチンを占拠した兵隊が、少年の出入りを禁止する。どうなることかと思ったら、ただ、残飯のバケツを運び出すだけ。ちびネッシーもそれを熱心に食べている。さらにちびネッシーは、1を食べて、10太るような性質だから世話いらずだ。
また、それを家族や兵士に隠すサスペンスがあるかと思ったら、大して苦労もせずに隠しおおせてしまう。
時間経過の描写もほとんどないから、手のひらサイズのウォーター・ホースが成人と同じくらいの大きさになるまでに2~3日程度しかかかってないような気がする。
こんなんで「ぼくが卵から育てたんだ」と、主張されましても……。たまごっちのほうがもっと苦労するぞ。
また、ETは自転車を飛ばし、河童のクゥはすごい力を発揮するなど、日常からの飛翔感が、この手の作品のクライマックスになるはずだ。
この映画にもそれはある。巨大化したウォーター・ホースの首に乗り、水上を疾駆する。それだけではない。ネス湖に潜水。水中を自由自在に泳ぎ回るのだ……。
ってちょっと待て! ネス湖があるのは、インバネス。湖面の平均水温は9.2度。湖底では平均水温が5.5度になる。それだけでも死にそうだ。しかも少年は水が怖くて、泳げないという設定なのに、つるつるしてどこにも捕まれなさそうなウォーター・ホースにどうやってしがみついたのだろう。
見ていて、ぜんぜんうらやましくないぞ。この手のものは観客が自分もウォーター・ホースに乗りたいと思わなければ、失敗だろう。
また、戦時中なのに出征もしていないなぞめいた下働きの男が現れるのだが、この男について、16通りくらいのストーリーができそうだというのに、ほとんど、投げっぱなしだ。後半になって、つまらない正体をさらされてもなぁ。
ドラマにツイスト(ひねり)がひとつもないのだ。無理にひねる必要はない。伏線とその回収をきっちりしていけばいいだけなのに、それさえもない。ものすごいリソースの無駄遣いだ。
クルーソーと名づけられたウォーター・ホースのキャラクターが作りこまれていないことも問題だ。ただ、それっぽくかわいく作っているだけ。
WETAスタッフ「監督、クルーソーなんですが、動きの特徴とか、キャラクターはどうしましょう?」
監督「きみたちにまかせるよ。きみたちはWETAだ! ぼくがいろいろ言わなくても、それっぽく作れるでしょ」
その程度の作りこみだ。WETAスタッフを遊ばせないために作った企画なのでしょうか。
製作スタッフが、数多のボーイ・ミーツ・エイリアンものを参考にしたことはよくわかるけど、仏作って魂いれず。材料を並べただけでは、料理とはいえない。
おれは子供の心がわかると勘違いした感性の鈍い大人が作ったハイクオリティなニセモノ映画だ。


