【映画2008】バンテージ・ポイント
ワーナーマイカルシネマズ板橋2番スクリーンにてSRD鑑賞。
12:23。スペインのサラマンカで開催された首脳会談に出席したアメリカ大統領が、サラマンカ広場での式典に登壇した直後、何者かに狙撃された。映画はビデオテープを巻き戻すかのように時間をさかのぼる。視点を変え、場所を変え、主人公を変え、12:00から事件へと流れる時系列の中で、浮かび上がる真相をじつにダイナミックに描いた作品。
物語のかなりのところまで興奮しっぱなしで鑑賞した。たとえば「羅生門」なら、時系列をさかのぼると同時に、視点によって真実さえも異なるという構成だが、「バンテージ・ポイント」の場合、カメラ位置こそ異なるものの「羅生門」スタイルとはちがい、真相が"藪の中"になることはない。
事件と人物とを細かいところまでExcelで表にしたうえで、丹念に何度も校正していったような作品だ。
シナリオ的には犯人側、大統領側双方で、何段階かのツイストがあり、それが明らかになるにつれ、興奮も増してくる。
さまざまな視点から描くことで、きっちりと作られた三次元の彫像を浮かび上がらせるような作品だ。この手のタイムシフト映画に見られる混乱は一切ない。しつこいと感じられるぎりぎりのところで、踏みとどまっている印象がある。
このわかりやすさもふくめて「24」や「LOST」、「HEROES」のような、いまどきのアメリカテレビドラマフォーマット作品なのだ。叙述の中に映画を感じさせる要素が少ない。シナリオデベロップメントアプリをきちんと使いこなして、展開を構成したような作品だ。
最近、アメリカドラマを見る機会が多い。そのため、ちょっとやそっとのレベルの作品では、驚かなくなってしまっている。作りはていねいだけれど、最良のドラマにくらべたら、ちょっと落ちるかなという印象だ。
もちろん、このような映画があってもいい。しかし、ドラマから離れて、映画の魅力があるかといえば、疑問が残る。デニス・クエイドやフォレスト・ウィティカー、ウィリアム・ハートのような役者まで脱色した印象になっている。もったいなさを感じてしまう。ウィリアム・ハートなど、大統領として、ものすごく、かっこよくなりうるダイアログがあるのに、そのあとの展開が消え去っているのが、残念だ。
後半のカーチェイスシーンなど、よくがんばっているのだが、全編メキシコロケをスペインと言い張っているだけに、サラマンカには存在しない高架道路などがあって、どんよりした気分になるし、CGで消しそこなった、カースタント用の補助車輪(ストレッチャー型の台座)がクルマの下から見えていたりもする。
なにより、映画的には狙撃現場から子供でも走っていける程度の距離を目的地としているのに、そこにいたるまで、クルマで長時間走り回るのって、マヌケじゃないか。 とりあえず、カーチェイスをサービスしとけって感じだが、構成的にも大きく減速。
謎の全貌が見えてくるまでは、非常におもしろかったのだが、全貌が見えてしまってからは、ありていなアクション映画になってしまった。
サスペンス製造マシンとしての構成力は感じるのだけれど、そのフォーマット化する技術の中で、人の存在感が矮小になってしまったのは残念だね。
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