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【映画2008】僕の彼女はサイボーグ

 ワーナーマイカルシネマズ板橋7番スクリーンにてSRD鑑賞。

 監督と脚本は「猟奇的な彼女」のクァク・ジェヨンだが、資本、キャスト、スタッフは日本という意欲的な作品だ。ヒチコック、ワイルダー、ヴァーホーベン……。ハリウッドが世界の才能を呼ぶように、日本でもこういう取り組みがあることはすばらしい。

 うん、その意欲は認めるのだけれど、なんだか、とてつもなく奇妙な映画になってしまった。未来の自分が、2008年の自分を救うためによこした綾瀬はるかはサイボーグ(正確にはサイボーグ=改造人間じゃなくて、人造人間)だった。未来の自分は彼女に心を伝えてほしいみたいなことをいっているのだけれど……。

 下敷きにあるのは、もちろん「ターミネーター」だろう。ただ、「ターミネーター」は、未来のリーダーの母親を殺すためにシュワルツェネッガーが送り込まれるという説得力のある危機を設定したため、カイル・リースが守ってくれるという説得力があったのだが、この映画の場合、シュワルツェネッガーに相当するのは、やさぐれた田口浩正である。田口浩正から守るため、過剰なパワーを持つアンドロイドがやってくるというのは脆弱な理由だ。

 もちろん田口浩正は田口浩正である。簡単にかたづいてしまう。敵がいなくなったあと、綾瀬はるかは、便利できれいなドラえもんとして、主人公の庇護者になる。女強化人間として考えると「銃夢」のガリィを下敷きにしていたりもするんだろうね。いてもいなくてもいい存在ではある。

 この映画、全体のモラル基準が狂いすぎている。万引きや無銭飲食を平気でやるやつが、他人の命を救うときだけ活躍しても感情移入はしにくい。パンフレットによれば「悪人を許さない正義感プログラムを搭載」しているとのことだが、無銭飲食や万引きは十分に悪いことです。

 さらに、ウンコとか、ゲロとか、そういう下ネタがあまりにも生々しい。

 先日、話をしたある編集者は、人の生き死にでドラマを盛り上げるのは、最低のやり方で、うちの会社はそういう漫画をよしとしないといっていた。この映画の場合、人の死どころか、困ったときはぜんぶ地震という大量殺戮で片付ける小気味よさである。主人公の故郷がいまはなくなってしまったのは、地震のせい。現在の主人公が絶対的な危機に陥るのも地震のせい。

 韓国の人って、日本は日常的に関東地獄地震が起こっていると思っているのだろうか。

 主人公が綾瀬はるかの能力を唐突に使って、過去の故郷を訪れるシークエンスがある。2008年からわずか10~15年前の日本にしては、むちゃくちゃレトロすぎて、途方にくれる。感覚としては、「三丁目の夕日」だ。1990年代半ばなら、小学生はジョー90のメンコではなく、ポケモンで遊んでるだろ? レトロムードたっぷりの郡上八幡でロケをしているのだが、あまりにもレトロすぎ。だれか、日本人スタッフは止めろよといいたくなる。

 さらにこのあたりのシークエンスで、綾瀬はるかは十分に人間的かつ女性的な心を持っているかのようにふるまうのに、そのあとになると、唐突に心がなくなってしまう。きみは毎晩、心のリセットボタンでも押しているのか。

 未来の自分は彼女に心を伝えてほしいみたいなことをいっているのだけど、底の開いた柄杓で水をすくうようなことになっている。

 心の交流と積み重ねがすべて思いつきレベルの上に、だれそうになると、いきなり地震が来る。その地震のシーンもすさまじい。取ってつけたような強引な演出をは「アルマゲドン」の隕石という。あんまり聞かないかもしれないが、おれはいう。

 だれそうになると、突然、振ってきて、キャストを2~3人ぶち殺す隕石は、脚本作りのカンフル剤だ。

 主人公が助かりそうになる。地震が起きる。綾瀬はるかに瓦礫が落ちる。主人公が助かりそうになる。地震が起きる。綾瀬はるかがコンクリートミキサー車に押しつぶされる。主人公が助かりそうになる。地震が起きる。綾瀬はるかの上にビルがまるごと落ちてくる。このくりかえしだ。

 おれは笑いそうになったよ。

  

 さらにエピローグ近くになるとスピルバーグの「AI」を思わせる雰囲気になるのだけれど、雰囲気だけだ。結局、さまざまな要素をパッチワークのように寄せ集めながら、語るべき人間が存在しないため、困った映画になってしまった。

 ただ、退屈はしなかった。綾瀬はるかという眼福が存在したおかげだ。綾瀬はるかのようにオッパイがでかい女は好きじゃないし、「神様のパズル」の谷村美月ほどの露出もないんだが、綾瀬はるかは表情をみるだけで至福。そんなアンドロイド演技の綾瀬はるかを見るだけでも価値のある作品です。

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