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【映画2008】ダークナイトふたたび

 TOHOシネマズ六本木ヒルズ7番THXスクリーンにてSRD鑑賞。いやもう何度見てもすごい。

 最初に見たときの感想はこちら。今回はかなりネタバレです。

1)ダーティハリー
 ポッドキャスト「アメリカ映画特電」で町山智浩は、映画「ダーティハリー」→コミック「ダークナイト・リターンズ」→映画「ダークナイト」にいたる経緯を踏まえ、「ダーティハリー」と「ダークナイト」の相似に触れている。ご指摘の通りである。

 監督のクリストファー・ノーランもそれを意識してか、なによりもオープニングの銀行襲撃シーンの末尾で、「ダーティハリー」への敬意をふんだんに見せている。

2)シカゴ
 ティム・バートン版ではニューヨークの色が濃かったゴッサムシティを、一気にシカゴ寄りにしたことが説得力となっている。前作「バットマン・ビギンズ」でもシカゴをロケ地に使っていたが、人工の高架鉄道などが目立ちすぎ、シカゴの色彩が出ていなかった。

 ガーゴイルが飾られ、レンガとモルタル建築があふれ、色彩に満ちたニューヨークではなく、フランク・ロイド・ライトとミース・ファンデル・ローエを擁し、近代建築の生まれた町、シカゴ・ダウンタウンの無機質な情景が、現実のドラマとして「ダークナイト」の説得力を増している。

 今回の映画をきっかけに、あれこれ調べていたのだが、70年代のバットマンの代表的作家、ニール・アダムスはゴッサムシティを描く際、ギャングが跋扈した1940年代のシカゴを念頭においていたそうである。ニューヨークにはないが、シカゴにはありふれた、ひと気のない裏道こそ、バットマンが活躍する格好の舞台だったとのこと。

 英語が読める人はこのあたりの解説を読むと、おもしろいよ。

3)音響
 サウンドデザインがすばらしい。今回の7番スクリーンの音響はすばらしく、クリアに見渡せる映像の性格が、サウンドにも満ちていることがはっきりとわかった。

4)伏線
 序盤から涙腺を刺激する。ハーヴェイ・デントとブルース・ウェインが顔合わせするレストランでの会話。「ホワイトナイト」たるハーヴェイ・デントのその後を考えると、セリフのひとつひとつが、泣けてたまりません。

 ハーヴェイ・デントにはいいセリフが多い。

The night is darkest just before the dawn. And I promise you, the dawn is coming.
You either die a hero or you live long enough to see yourself become the villain.

5)実写
 とことん実写にこだわっている。トレーラーがトンボを切るシーンはCGではなく、実写だったけれど、それだけでなく、病院爆破シーンなど、さまざまなシーンで「実写」を追及しているのが、すごい。「どうせ、CGだろう」という安閑を観るものに感じさせず、 このドラマが地続きの世界で起こっていることを突きつけてくる。

  

6)コイン
 原作や以前の映画化作品でもトゥーフェイスのシンボルアイテムはコインだったが、今回はさらに映画を象徴する存在として使われている。裏と表があるかと思ったコインが、実は両面とも表であり、そのコインの片面が黒くやけることで、二面性を"とりもどした"ということ。それは光の騎士、ハーヴェイ・デントの意志を象徴するとともに、バットマンとジョーカーの存在を暗示するものだ。輝く面も煤けた面もどちらも顔のある表である。

 過去を持たず、完全なる空虚としてゴッサムシティに登場した正体のない男、ジョーカーが、バットマンに正体を明かせと要求する。さらに正体を明かすことを決意したブルース・ウェインの機先を制してハーヴェイ・デントは「自分がバットマン」と偽りの正体を明かす。なにが真実なのか……。

 ハーヴェイ・デントとブルース・ウェインの正義の思想は等価といっていい。だが、レイチェルへの思いの差が正邪の境界を分けたのが皮肉なことだ。

 配置の絶妙はクライマックスに通じ、ふたつの船の生き残りで、一つの答えとなり、深い感動を呼ぶ。乗客がボタンを押さないと信じるバットマンと、ボタンを押すものとして嘲笑するジョーカー。闇がどれほど深くても、バットマンは夜明けを信じるしかない。

※こちらのエントリーもどうぞ。

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