【舞台・観劇】『さよなら初代0系新幹線 BORN TO RUN』~引退記念スペシャルバージョン~
原子力空母見学の横須賀から池袋にとんぼ返りだ。東池袋の「あうるすぽっと」という劇場には、初めて入るのだけれど、新しくて居心地のいい空間だ。ロビースペースも大きく、今回の講演にあわせて0系新幹線の写真パネルやジオラマが飾られている。
福岡市が誇る"かぶりもの"劇団「ギンギラ太陽’s」の3回目の東京"地方"公演である。護衛艦しらねの入場混雑で、予定より遅れて、ひやひやしたけれど、幕前の西鉄やくざバス軍団と記念写真を撮ることはできた。
時速250キロ、夢の超特急として登場し、流線型のチャーミングなボディで0系新幹線。しかし、時代はすっかり変わってしまった。営業最高時速300キロの500系や、「ひかり」と同料金で「のぞみ」にぬかれない「ひかりレールスター」にその座を追われ、いまでは博多・広島/岡山間の「こだま」として、細々と生きながらえていた。1999年のダイヤ改正以来、東京にもいっていない。博多南の車両基地でも新型車両に安住の場所を追われ、雨ざらしの屈辱を受ける。
営業運転終了の知らせが届いた夜、彼らの暴走が始まった。10年近く訪れたことのない東京駅に向かって……。
そんな新幹線のドラマをかぶりものをつけた役者たちが演じるわけだ。もともとは8年前の公演をこの夏にリバイバル。それをみたアミューズのスタッフのすすめもあって……。
今回の公演は、今日という日をはさんで劇場を取れたことからすべてが始まった。
引退の日も大阪までしか走らせてもらえない0系。「東京から全国へのびた記念すべき新幹線が最後に東京に行けないなんて・・・」というやりきれない想いがあったところに、30日に東京の劇場が取れるとわかり、「ならばギンギラが0系として東京を走ってやる!!」と心意気だけで決めた公演。すべては今日走るための公演。
と、主宰の大塚ムネトも書いている が、時代とのシンクロ率が以上に高い劇団だけにそのテンションも格別だ。
さらに今回はボーナスとして地元では名高い「女ビルの一生」も併せて上演される。こちらは博多の中洲に君臨したデパート「福岡玉屋」の一生を擬人化して描いたものだ。「博多大丸」、「博多井筒屋」、「岩田屋」など、福岡の地元デパートが総出演し、博多地区と天神地区のデパート盛衰史を描いたものだ。
そもそも福岡と博多の違いを具体的に理解している人はほとんどいない。福岡県北九州市出身の自分も福岡市に1年住み、最近の仕事で双子都市福岡の歴史をかなり細かくたどって、なんとなくわかってる程度だ。「博多大丸」が福岡天神にあり、「福岡玉屋」が博多中洲にあるなんてトラップもある。しかも北天神の没落と、南天神の興隆なんて要素も入るから、ディテールのことごとくが難しい、"ど"ローカルな内容である。
そういう話を東池袋の劇場で演じ、きちんと客席のウケを取るわけだ。これは戦前から戦後につながる日本の商業のモデルケースとして、福博の町をキャラクター化したつくりのうまさによるものだろう。
ギンギラの芝居を見せてもらうと、いつもその上品さに居心地の良さを感じ、秘めたる矜持の端正なることに胸を熱くさせられる。
徹底的にローカルにこだわった題材。ひたすらオーソドックスな作劇作法。安直におもねらないプライド。この三点がギンギラならではのもてなしに満ちた娯楽を生み出しているのだ。
もちろん、川上音二郎を嚆矢として数多くの芸能人を生んだ博多の芸事の伝統もある。
福岡玉屋が回想するクライマックスでは、隣に座っているAkimboくんの感情テンションが一気に上がっているのが、びんびんに伝わってきた。顔を見たら、表面積の7割くらいは涙で覆われていそうである。かわいそうだから、見ないでやったが、そういう芝居なのだ。
今回の公演は短めの脚本ふたつを見せてもらったという印象で、もうちょっとゴツッとしたものを見たいと思ったが、それでも東京という地方で、福岡の劇団を見られる豊かさは痛快で、満ち足りた時間を過ごさせていただいた。
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