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【舞台・観劇】君の心臓の鼓動が聞こえる場所

 もちろん、演劇集団キャラメルボックスという劇団があることは知っていたが、なかなか、ご縁がなく、見る機会がなかった。今回は、マイミクの優さんのお誘いでサンシャイン劇場で「君の心臓の鼓動が聞こえる場所」を鑑賞した。

 正直にいってしまうと、しばらくは鼻白むことが多かった。自分でぼけて自分でつっこむ。セリフにかぶせて歌詞入りの曲が流れる。状況や過去を独白で説明する。個人的には繰り返されるそういうパターンがすごく苦手なのだ。登場するキャラクターがすべて、おなじ金型から生まれているのも気になる。タイトルの中の「心臓の鼓動」も変じゃないか。心臓以外の鼓動ってあるんだっけ?

 自分にとって縁のない劇団には縁がないだけの理由があるのだと思った。

 周囲が笑っていても「こんなネタで笑うわけ?」くらいに思っていた。さまざまな断片が1980年代の小劇団のままで、どういうタイムカプセルだよとか、思っていた。テレビドラマに場当たり的な笑いを無数に散りばめたような芝居だと思っていた。

 不器用だけれど、誠意と努力で業界を生き抜いてきたテレビドラマの脚本家の家に19歳の女の子が訪れる。それは離婚した妻のもとにいる娘との14年ぶりの再会だった。札幌から来た娘は、自分が書いた小説の原稿を父に読ませようとする。小説家として大手出版社からデビューしたいといって……。

 過去との対話、幽霊の登場など、12月に見るにふさわしい現代版クリスマスキャロルだ。先述のように往時の少女漫画を髣髴とさせる自意識過剰のセリフの数々に辟易していたのだが、はつらつとした演技に満ちた舞台で、娘がほんとうに自分の娘なのかというサスペンスが生まれるあたりから、しまった、うっかり舞台の勢いに飲まれてしまったよ。

 客演の黒川智花(19歳)の健気さが舞台に生気をあたえ、少々のご都合主義は吹き飛ばしていく。不器用だけれど、仕事にきちんと向き合い、前向きに生きている主人公が、魅力的になる。

 その前向きは自分の嗜好とは明確に違うのだけれど、なるほど、人気がある理由はよくわかる。

   

 大雑把にたとえてみれば、地方都市で社長とスタッフが前向きにがんばって、いくつも支店を出している居酒屋みたいな劇団だ。マニュアルなんて作ってはいないけれど、スタッフそれぞれが話し合い工夫して、毎日新鮮にお客さんをもてなしてるような温度がある。だれもが期待している奇跡をきちんと起こしてあげている。

 前向きになりたいけどなかなかなれない人とか、涙は心のデトックスだと思っている人にはいい芝居なのだろう。

※こちらのエントリーもどうぞ。

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