【映画2009】おくりびと
新宿ピカデリー4番スクリーンにてSRD鑑賞。
はい、泣ける映画です。
所属するオーケストラの解散によって、プロのチェロ奏者でいることをあきらめ、故郷にもどった本木雅弘が、幼いころ練習していたチェロをひっぱり出して演奏するあたりなんて、どれだけ傑作になるんだよと、興奮した。
死体の数が増えるたびに泣けるし、生死を問わず肉親や友のことを思い出せば、また、泣ける。プロフェッショナルとして納棺師の所作は美しいし、伊丹十三の「お葬式」を思い出すような笑いや食事シーンもある。
納棺師がいちばん近しい個人の目の前で、肌をほとんど見せずに、なきがらの股間をさわり、死出の支度をするあたりのすさまじいエロティシズムなんて、衝撃的でさえある。
その引き締まった腹を見るだけで3本は抜けそうな広末涼子(妻役)のウェスト(パンツ付き)をねぶるように映すカメラワークは最高だ。
死体、広末、チェロという三位一体はみごとすぎる。
本木雅弘と山崎努のキャラクターは擬似的な親子関係を含め、じつによく作られていて、映画のリアリティを高めてくれている。
なるほど、これは2008年公開作のナンバーワンになりそうだと、思った。
しかし、本木の選んだ納棺師という職業が妻にばれてしまい、「穢らわしい」の捨て台詞を残して、妻が出て行くあたりから、その奇跡のアンサンブルはくずれ、大部分の人間がプロットを説明する機械になってしまう。
死亡フラグが立ちまくった人が、狙いすましたようなタイミングで死んだり、死んだ人の気持ちを代弁する人がこれ以上ないほど正確な場所にいて、死人の気持ちを説明したり、映画の前半では生きていると思ったキャラクターが道具となり、機械となって、事実上死んでいくのが、残念だった。
もちろん泣けるよ。でも、それは映画を見てというより、自分の中にある死を思っての涙だ。「泣ける映画ない?」ときく人には、「ぜひ」とすすめるけど、「いい映画ない?」ときく人には、すすめない作品だ。
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