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【映画2009】プライド

 シアターN渋谷1番スクリーンにてSRD鑑賞。

 すさまじく楽しんだ。ちょっと油断しているうちに、東京ではミニシアター1館のみの公開となってしまったが、見ないのはもったいない。日本のソープオペラとかアイドル映画の中でも出色というべき名作なのだ。

 一条ゆかりの原作のエッセンスをきちんと残し、すばらしいバランスでまとめている。監督の金子修介といえば、平成ガメラや「デスノート」で有名だが、どこぞのインタビューで、女の戦いを怪獣映画のノリで演出したといっていた。なるほど、全編が小気味よいドロドロに包まれている。

 この映画を構成するいろんなパーツは、過去の日本映画でも頻出するパターンだ。多くの映画ではこのパターンが出るたびに、気恥ずかしくなったものだ。この映画でも、一歩間違えれば、失笑しそうなシーンがたくさんあるのだが、まさに首の皮一枚で回避している。全パーツが世界観を裏打ちするものとなり、見るものの心をゆさぶるしかけとなっているのはまいっちゃうね。

 ほんとに不思議なのだが、クライマックスに歌を持ってくる日本映画なんていくつもあって、そのたびに悪寒がしたものだけれど、この映画に関してはそれはない。むしろ、女のバトルのひとつの形として、最高に気持ちよく、酔えるのだ。

 主役の麻美史緒を演じるステファニーという歌手は知らなかったが、はじめて彼女の顔を見たときの印象を婉曲に表現すれば「少なくとも日本人の男で、このタイプの顔が好みだという人はいない」というものだった。アルメニア系ハーフの女性である。ソニーミュージックの歌手だそうだ。体型は将来の大型(物理的)オペラ歌手を彷彿とさせるものがある。ネットの一部では女装した男かと思ったという意見もみられるが、否定はできない。

 セリフも棒読みであるが、まぁ、お嬢さまという設定だしね。イントネーションが少しおかしいが、浮世離れした人なのだろう。話が進むにつれ気にならなくなるものである。こういうのって金城武現象といわないかな。まぁ、慣れるしかないといっておこう。

 後半、何ヶ所か、少女の素が出るシーンがあって、この子、見かけよりずっと幼いところがあるのだと思った。 とても上流なお嬢さまとは思えない子供っぽい文字をわざとうつしたバランスもよい。

 そんなステファニーを主役にすえた勇気は買うが、この際、ステファニーはどうでもいい。

 この映画で見るべきは緑川萌役の満島ひかりでる。

 満島ひかりといえば、「デスノート」では夜神月の妹役だったが、まさか、これほどの女優とは思っていなかった。昼メロ系ヒール女優としても最強である。かわいこぶるとき、怒りに震えるとき、男に媚びるとき、歌うとき、懇願するとき、すべての表情と演技の迫力で、映画をぐいぐいと進めていく。

 満島ひかりの超絶演技を見られただけでも感動モノだ。何年か前、「ウルトラマンマックス」をみていたとき、あの無表情なアンドロイド少女、エリーを演じていた満島ひかりが、これほど"多"表情になっているとは……。

 満島ひかりがつぎにどんなことをするか、目が離せないのである。ヒールとしてこれほど輝くのは、原作のすばらしさもあるだろうが、金子修介の偏愛のおかげだろう。胸元へのカメラワークなどもじゅうぶんにいやらしい。はじめてクラブで歌うシーンでの背景サービスなど、事実上の主役として、ばっちりだ。

 あざとい演技といってもいいのかもしれないが、彼女がすごいのは、それほど極端なことをやっていても、下品さをかけらも感じさせないことである。だから、彼女のしかけや直情をもっともっと見たいと思わせてくれる。

 原作に比べオペラ関連のシーンが少ないのは、日本映画の予算を考えると仕方ないことだ。また、主役ふたりのオペラ歌唱部分が吹き替えなのも仕方がない。しかし、オペラ要素が少なくなっても、定跡をきちんと立てているシナリオにぬかりはない。女ならではの罠が回りまわって自分にふりかかるあたりなど、ぞくぞくしてくる。アナクロ的ではあるが、娯楽作品としてきちんと作られているから、すべてが快感につながる。

   

 渡辺謙の息子、渡辺大が女装してピアノを弾いているが、そこだけは原作どおりにやらず、男の姿でよかったとは思う。まぁ、それは気になったけど、見ているこちらはステファニーを許している。いまさら、筋張った男の女装に驚くものか。

 金子修介映画としてはひさしぶりの会心作なのだが、テレビや出版社がからまない作品ということで、存在さえも認知されていないのが残念である。

 満島ひかりはもっとみたい。「愛のむきだし」にいってみようかな。

監督:金子修介 原作:一条ゆかり プロデューサー:坂井洋一/伊藤秀裕 脚本:高橋美幸/伊藤秀裕 主題歌:ステファニー 
キャスト ステファニー 満島ひかり 渡辺大 高島礼子 及川光博 キムラ緑子 由紀さおり 五大路子 ジョン・カビラ 新山千春 黒川智花 長門裕之 他

※追記
「愛のむきだし」をみてきました

※こちらのエントリーもどうぞ。

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