【映画2009】チェンジリング
ワーナーマイカルシネマズ板橋8番THXスクリーンにてSRD鑑賞。
クリント・イーストウッド監督作品としては水準作だが、もともと水準自体が高いのだから、文句はない。
チェンジリング(取り替え子)ということばをはじめて知ったのは、ロジャー・ゼラズニイの小説「魔性の子」だった。だから、最初にタイトルを聞いたとき、クリント・イーストウッドがファンタジーでも撮るのかと思ってしまった。
実話ベースの映画タイトルに、ケルト神話的な用語が使われているという意味は見終わったいま存分に理解できる。これはひとつの事件の再現というわけではない。きわめて普遍的なドラマなのだ。
80年前のロサンゼルスの光景が胸を高鳴らせる。ハリウッド、ユニオンステーション、ダウンタウン、LAPDなどが、きわめて印象的に使われている。そこにイーストウッド作曲の緊張感あふれるサントラが流れるものだから、それだけで残酷な至福を感じられるのだ。
主人公の登場によって、モノトーンのLAは色づき、主人公の退場によって、その色は失われる。
舞台となった1928年という時代、そして、大都市の電話交換手という職業など、女性の社会進出が顕著な状況をきちんと作っていったうえで、きわめて説得力のあるドラマを作っている。取り替え子の状況こそ謎めいているが、複雑な断片を並べていくと、はっきりと現実味ある話になる。
主人公を透き間なく包囲する絶望の中、転換点は常に人間に対する希望から生まれる。長老派牧師、精神病院の患者、ひとりの刑事、そして、弁護士……。まっすぎに生きてきた人たちは常に希望なのだ。「パンドラの箱」こそがこの映画の重要なモチーフでもあるのは、映画を見た人ならだれでも気づくことだろう。
何度か語られる「Never start a fight... but always finish it(喧嘩を売るな。でも、売られた喧嘩は片をつけろ)」、そして「responsibility(責任)」が、明瞭にヒロインの行動原理を示しているから、わが子を取り替えられてしまった母の戦いにくっきり感情移入していける。曲げていく人たちが敗北し、最後まで曲げなかった人が確実に生を謳歌する話なのだ。
女を感情的でどうしようもない生き物だと押さえ込む男たちがどれほど感情的で、無思慮であることか。愚かな人間はたくさん登場するが、静かなる戦いを勝ち抜くヒロインとしてのアンジェリーナ・ジョリーは、本当に美しかった。
キャスト アンジェリーナ・ジョリー ジョン・マルコヴィッチ コルム・フィオール デヴォン・コンティ ジェフリー・ドノヴァン マイケル・ケリー ジェイソン・バトラー・ハーナー エイミー・ライアン ガトリン・グリフィス 他


