【映画2009】ワルキューレ
ワーナーマイカルシネマズ板橋10番スクリーンにてSRD鑑賞。
小学校のころ、一部のませた同級生はサンケイの第二次世界大戦ブックスを読んでいた。そのあたりは、タミヤのプラモデルやGIジョーと地続きだったのだ。そのなかの一冊「ヒトラー暗殺事件」はタイトルに引かれて買ったのだが、小学生に読みこなすのは難しく、やっと読み終えたのは中学三年のころだった。
それ以来のヒトラー暗殺計画である。シュタウフェンベルク大佐、ひさしぶりだなぁ。
当然のことながら、この計画が失敗することはだれもが知っている。その上でサスペンス演出をきちんとほどこし、それを成立させた力量はさすがのブライアン・シンガー監督である。ヒトラーが死んだかどうかではなく、計画がどのように失敗し、どういう形でバレ、最終的に彼らのたどる運命を見守っていくことになる。
だからこそ、トム・クルーズの「ヒトラーは死んだ」というセリフの悲劇性が高まったのだ。ドイツ軍という官僚システムの中に配置された一人ひとりの、ヒトラーと反乱側とどちらを選ぶかという決断がサスペンスとなっていくのだ。
結末が見えているものをサスペンスにするなんておかしいという人は「日本のいちばん長い日」や「鷲は舞い降りた」のことを知らないのだろう。
緊張感あふれる構成の中に、映画の快楽が横溢している。ドイツ軍の制服、波型外板がいとおしいユンカースJu52、ヒトラーを護衛するメッサーシュミット、キューベルワーゲンなど、防虫布をつけた狼の巣の警備兵など、見ると惚れ惚れするディテールに満ちている。
連合軍のベルリン空襲を、針飛びする蓄音機で表現したシーンなど、第三帝国崩壊の予兆を描いたシーンは卓抜だ。ヒトラーの悪を声高に叫ぶより、ひとりの愛国者が計画実行にいたったプロセスをじつにデリケートに描いている。
アメリカ人やイギリス人の役者がドイツ軍人を演じ、英語でしゃべっていることは途中から気にならなくなった。ギリシャやローマ史劇を英語でやるように20世紀ドイツ史劇を映画でやっているのだ。未見だが、ドイツのテレビ映画「オペレーション・ワルキューレ」は、もちろんドイツ語でこの事件をあつかっており、共通点も多いそうだ。
それより、「レッド・クリフ」の悪癖で、登場するキャラクターの多くに、字幕で名前をつけていく東宝東和に腹が立った。
百歩ゆずって、劉備とか張飛といった有名な英雄に字幕をつけるのを認めたとしても、トレスコウ少将やベック上級大将なんて人たちをいちいち、字幕にしなくてもいいよ。名前を覚えなくてもよいように映画を作っているのに、わざわざ耳慣れない名前を観客に覚えさせるつもりだろうか。
問題はあまりにもきっちり作られすぎていて、息づまる120分を見終えたときに、印象があざやかに霧散してしまうことだろう。きれいで端正な映画すぎるんだよな。
キャスト トム・クルーズ ケネス・ブラナー ビル・ナイ トム・ウィルキンソン カリス・ファン・ハウテン トーマス・クレッチマン テレンス・スタンプ エディ・イザード ジェイミー・パーカー クリスチャン・ベルケル デヴィッド・バンバー 他
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