【映画2009】おっぱいバレー
ワーナーマイカルシネマズ板橋5番スクリーンにてSRD鑑賞。
北九州市出身者として細かいことをいえば、戸畑三中といっているのに、校庭からは関門橋が見えたり、若戸大橋が見えたり、花尾山が見えたりするのはへんてこである。綾瀬はるかが利用する電車は西鉄ではなく筑豊電鉄そのまんまだし、学校付近の景色が若松側からのものや皿倉山麓からのものになったりする。バレー部のランニングルートはどう見たって筑豊界隈だし、八幡西区の萩原電停とその周囲なんて、ほとんどそのまま使われている。戸畑らしいビジュアルといえば、提灯山笠くらいしかなかったり、戸畑の子が若松にある高塔山にいこうとかいうのかなとか、いろいろおかしいのだけれど、まあ、映画であるから、それはどうでもいい。
1979年に十代を過ごしたものとして細かいことをいえば、綾瀬はるかが着任する前にドラマの鍵となる「シーナ&ザ・ロケッツ」など、前年10月に結成されたばかりで、中学生の女の子が、きゃあきゃあ騒ぐ対象にはなっているのはおかしいし、部室にある仮面ライダー1号や「およげ!たいやきくん」なんて、時代的には数年ずれているし、当時の中学三年生で電子フラッシャーつきの自転車なんて、あまりに流行おくれに子供っぽくて、恥ずかしくて乗れない。客室まで登場するリーガロイヤルホテルが小倉に開業したのは1993年だぞとか、1979年の北九州市といえば、「まるで宇宙戦艦みたい」な黒崎そごうの開業が大きな話題だったはずだとか、いろいろおかしいのだけれど、まあ、映画であるから、それはどうでもいい。
実家で角打ち(コップ酒立ち飲み)をやっていたものとして、細かいことをいえば、角打ちの店に綾瀬はるかが行くのだが、女教師が角打ちにいること自体が、ありえないことだけれど、まあ、映画であるから、それはどうでもいい。
考証の居心地の悪さは、この際ぜんぶ目をつむろう。しかし、目をつむれない、こまった問題が3つある。
まず、カメラが動きすぎだ。ドリーやクレーンを使ってやたらに動き回っているカメラがうざったい。なにかの意味とか、リズムとか作っているのならいいけれど、落ち着きがないカメラワークの帳尻を強引に編集で合わせているだけだから、いらいらする。
つづいて、アフレコがひどい。ほとんど全編がアフレコなのだが、中学生など、素人役者を使っていることもあって、リップシンクがあっていない。順撮りしているのだろう。後半は多少、よくなってきたが、メインの悪ガキを紹介する部分では、ほんとに不安定だった。
最後におっぱいが魅力的でない。綾瀬はるか主演のおっぱいバレーというのに、綾瀬はるかのおっぱいをきちんと魅力的に映していない。とくに少年たちの妄想が前回になる前半では、衣装もカメラも綾瀬のおっぱいに無関心すぎる。裸のおっぱいとはいわない。服の上からでいいんだ。去年の「ぼくの彼女はサイボーグ」なんて、むちゃな映画だったが、綾瀬のおっぱいへの敬意はきちんとあったぞ。
うーむ。しかし、この映画を撮った監督は羽住英一郎だ。全米を爆笑させた「海猿」シリーズとか、田中麗奈をゾンビみたいな雪女にした「銀色のシーズン」(王道内レビュー)の監督である。このあたりは期待してはいけないところだし、ほんとに期待できないままだった。
目はつむれないが、我慢はしよう。
そんな技術的なことは我慢できても、作劇上に大きな難点がある。それは少年たちをきちんと名前で呼んでいないことである。
6人の中で、明確に名前を読んでいるのは、城くんと江ブーのふたりだけだ。城くんは父親が仲間トオルである1年生エースとして、キャラを立たせているし、江ブーは典型的なデブキャラとして、少し活躍している。だが、目立って名前が出てくるのは、バレー部の6人中、そのふたりだけである。
キャプテン格の少年を始め、ほかのバレー部員は多少多めに登場する中学生たちという程度の扱いで、ほとんど名前を呼ばれないのだ。仲間うちでも呼び合わないし、綾瀬からきちんと呼ばれることもない。
笑ったのはエンディング近く、いよいよおっぱいを見られるかどうかというシーンだ。6人全員そろっているのだが、綾瀬はるかが名前を呼ぶのは、「城くん」だけだ。
小さな問題かもしれない。だが、名前はあくまでも一例である。
この映画で名前を忘れらた少年たちは、キャラクターもぞんざいにあつかわれているのだ。少年の存在は、漠然とした70年代末ごろの中学生のアバターとしてしか機能していない。
キャラクターわけといっても難しい話ではない。例えば、実家で家業を手伝っている姿、お祭りで活躍している姿、街角でパンツをのぞこうとしている姿でも、だせばいい。
テレビ番組として「11PM」もでるのだが、全然足りない。日テレ出資なら、「ウィークエンダー」は、どうした? そういうのを必死で見ようとしてもいいじゃないか。「酔拳」で一世を風靡したジャッキー・チェンの真似をするとか、映画「エイリアン」の話題をだすとか、時代とからめて、いくらでもキャラクターは作れるはずだ。
すでに成立させたシナリオの舞台を北九州に移植したことから、主人公たちが、だれ一人として北九州弁を話さないのが、致命的でもある。北九州名物の"堅パン"とか"くろがね羊かん"好きなキャラでもいいじゃないか。
平成を舞台にした原作をこの時代に持ってきたのは、「おっぱいを見る価値観」を高めるためだったという。それは卓見だし、バカな少年たちが、最初から最後までおっぱいを目的にしているのは、すばらしいことなのだが、ここまで凡庸な描き方では、それも無駄骨っぽい。
原作由来であろう、女教師成長ものとしての要素では、感動的なものもあるのに、少年たちの個性をフィルムに定着させられなかったため、すべてが上滑りになってしまった。ちょっとエッチな子供をだしにして、綾瀬はるかが自分探しをしているだけの残念すぎる作品だった。
キャスト 綾瀬はるか 青木崇高 仲村トオル 石田卓也 大後寿々花 福士誠治 光石研 田口浩正 市毛良枝 木村遼希 高橋賢人 橘義尋 本庄正季 恵隆一郎 吉原拓弥 他


