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【映画2009】レイン・フォール/雨の牙

 ワーナーマイカル・シネマズ板橋6番スクリーンにてSRD鑑賞。

出版されるやいなや、全世界でベストセラーとなったハードボイルド小説「雨の牙」を映画化したサスペンス・エンターテインメント。日系アメリカ人の殺し屋が、ある暗殺計画の依頼を受けたことで政権汚職と利権をめぐる陰謀に巻き込まれていく姿を描く。監督は、『トウキョウソナタ』の脚本を手掛けたオーストラリア出身の新鋭マックス・マニックス。椎名桔平を主演に、ゲイリー・オールドマン、長谷川京子、柄本明らが共演。東京を舞台に日英の演技派が激突するスリリングなドラマに注目。 CinemaCafeより

 ……なのだそうだ。原作や、スタッフなんかはまるで知らずにスクリーンにむかった。

 演技は決してうまくないのだが、出演する作品にことごとく不可思議な印象をあたえる長谷川京子がどんなことになっているのかをたしかめたかったのもある。

 映画の背景も知らないまま見ていたのだが、こんなことを思っていた。

 映画関係にコネがある団塊の世代の会社社長が、自分の旅行経験とかうんちくをもとにシナリオを書き、どこかの代理店が音頭をとって関係する会社やファンドで出資を募った。キャストやスタッフをそれなりにそろえ、スクリーン数もおさえたのだが、脚本の粗さはいかんともしがたく、作りはていねいだけれど、空っぽな映画を作ったのではないか。

 冒頭でエグゼクティブ・プロデューサーという日本人名が何人も出てくるし、監督・脚本はマックス・マニックスとあるが、なんとなく英語かぶれした日本人の名前っぽいじゃないか。

 そう、金満社長の映画道楽に付き合わされているような気分になったのだ。だが、ちがった。マックス・マニックスはオーストラリア人監督だった。

 とにかく、シナリオがひどい。状況はすべてセリフで説明される。CIAは殺し屋の椎名桔平を追うのだが、発見されるときと発見されないとき、それぞれの理由がまったくわからない。普通なら逃亡のサスペンスを展開させるところで、まったく展開しない。

 人間関係はとってつけたようなものしかない。直前に父親が不審死をとげ、妹が惨殺されているのに、その傷跡もなく、うすぼんくらに恋愛する長谷川京子。観客にはなぜ、椎名桔平が彼女を守るのか、まるっきりわからない。

 国家の陰謀もあるらしいのだが、その陰謀はすべてCIAエージェントのゲイリー・オールドマンと警視庁刑事の柄本明がセリフで説明するだけだ。

 柄本明はすごいと思ったのは、最初から最後まで説明調のボンクラセリフを巨悪に対する怒りの感情をこめながら、しっかり最後まで語りきったときだ。

 椎名桔平もがんばっている。殺し屋である彼のアクションシーンを期待するのは当然なのだが、アクションシーンはちらほらとしかない。長谷川京子と行き当たりばったりに東京のあちこちを歩いているだけだ。普通の感覚でシナリオを読めば、絶対におもしろくないのはわかっているのに、無闇にきちんと演技している。

 長谷川京子を部屋に残すときに、椎名桔平はオートマチックの拳銃を渡し、撃ち方をレクチャーするのだが、かつてSEALsだかにいたという人ではなく、モデルガンマニア程度の知恵しか授けない。町を歩くときの観察法をレクチャーするのだが、これまた、傭兵おたくが、女子ウケしない薀蓄をかたって、一人で得意になっているとしかみえない。

 日本の警察が、椎名桔平のプロフィールシートを読むのだが、これがまるっきり履歴書風の書式で、特技欄に「英語が堪能である」とか書いてあるのを見たとき、しびれるものがあったよ。アメリカ生まれ。日本人とアメリカ人とのハーフで、米軍にいた人をつかまえて「英語が堪能」なんて書くのは、おかしいよ。

 ゲイリー・オールドマンの出演は、「レオン」あたりを意識したのだろうか。恐ろしく熱演している。こんな映画に出演させて熱演させるなんて、「宇宙からのメッセージ」にビック・モローを出して、ゼネラル・ガルダをやらせたときをしのぐ無礼さである。

   

 演技というより、闇雲な肉体言語がすばらしい長谷川京子を出しているのに、彼女の肉体言語をまるっきり引き出していない。本当に脈絡もなく、椎名と新幹線に乗り、和風旅館で枕を並べて寝ていたかと思ったら、ニューヨーク時代の思い出話を語り合い、そのまま眠ってしまう。それはストイックというより、家族旅行のノリですよ。

 とにかく椎名桔平は健康で若い暗殺者というより、金満うんちく中年みたいだ。しかもストイックというより、糖尿病でインポ気味みたいなのだ。

 撮影、編集スタッフは本当にがんばっているが、どんなにいい映像でも、このヘタレ脚本では、意味を成さない。だれか止めろよと、いいたくなった。

「シリーズ化されたバリー・アイスラーの人気ミステリー小説「雨…」シリーズ(全6作)の第1作目」と、恐ろしい情報もあるが、おそらく続編が作られることはないだろう。

監督脚本:マックス・マニックス エグゼクティブプロデューサー:竹内成和/北川直樹/長沼孝一郎/野林定行 原作脚本:バリー・アイスラー 撮影監督:ジャック・ワーレハム 美術監督:山崎秀満 編集:マット・ベネット 音楽:川井憲次 
キャスト 椎名桔平 長谷川京子 ゲイリー・オールドマン 柄本明 ダーク・ハンター 清水美沙 中原丈雄 若松武史 小木茂光 浜田晃 平山祐介 坂東工 他
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