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【映画2009】スラムドッグ$ミリオネア

 ワーナーマイカルシネマズ板橋2番スクリーンにてSRD鑑賞。

 つまり奇跡を描いた映画である。奇跡の人生、奇跡の恋、だれもが期待する奇跡、そして、実現した奇跡を目にする喜びに満ちている。

 いつの間にか、日本のテレビから視聴者参加番組が消えてしまった。「ベルトクイズQ&Q」、「タイムショック」、「アップダウンクイズ」、「ダイビングクイズ」、「クイズグランプリ」など、ぼくが子供のころ、あれだけたくさんあった視聴者参加クイズ番組は1980年代の半ばまでにほとんど消えてしまい、全国ネットでは「パネルクイズ アタック25」を残すのみとなってしまった。

 イギリス生まれの「クイズ・ミリオネア」が21世紀初頭の日本に登場したときは、ちょっと興奮した。それほど難しくない簡単な問題で1000万円が手に入るかもしれない! 身内が予選に出て番組出場候補になったことがあった。話をいろいろと聞いたのだが、オーディションでは、正解率よりも、なにをやっている人なのか、1000万円を獲得したときの夢、そして「テレフォン」に出る友人など、人柄を重視していることがよくわかった。

 「ミリオネア」に関しては、イギリスの制作会社の規定がかなり細かいらしい。その規定の中で司会者はみんな、みのもんた化していく。海外旅行などの旅先で見るたびに、いろんなみのもんたが楽しめたものだ。

 日本ではそんな「ミリオネア」からも素人は消えてしまった。だれも知らない素人が1千万円を獲得するよりも、みんなが知ってるタレントが、放送クオリティの反応を見せてくれるほうが、視聴率がよかったのだろう。

 約束されたおもしろさを期待する視聴者。イレギュラーをおそれる制作者。素人の痛々しさ。予選にかける手間。インターネットの影響。問題の高度化。多様化するマニアという袋小路。いろんな理由があるけれど、視聴者参加クイズ番組の衰退には、奇跡の枯渇を感じてしまう。

 視聴率には現われないかも知れないが、「もし、自分が番組に出場して、賞金を獲得したら」という夢をふるまいつづけてもよかったのではないか。

 「スラムドッグ$ミリオネア」で、主人公のジャマールはこんなことを問いかける。

Why does everyone love this programme?
「どうしてみんなこの番組が好きなんだ?」

 そして、愛する人はこう答える。

It’s the chance to escape, isn’t it? Walk into another life.Doesn’t everyone want that?
「ここじゃないどこかにいけるから。ちがう人生に踏み出せるから。みんな、それを願ってるから」

 たとえわずかな可能性でも奇跡を願う人たちが、目にするのが、この番組なのだ。

 スラム育ちで無教養な青年が、インド版の「ミリオネア」に出場した。だれもが期待していない中、順調に問題に答えていく青年。しかし、教育さえまともに受けていない青年がなぜ、高度なクイズに答えられるのか。彼にはイカサマ詐欺の疑いがかかり、警察署で取調べを受けることになる。

 なぜ、彼は番組で勝ち進んでいけるのか。これが観客に対するクイズになっている。

 クイズ番組、取調室、そして、回想されていく彼の生い立ちを巧みにオーバーラップして、そのクイズに迫っていく。

 貧困、ヒンドゥーとイスラムの対立、児童からの搾取と虐待、金、暴力、殺人など、さまざまな問題がダイナミックに描かれていく。

 その映像感覚は「トレインスポッティング」がパワーアップして蘇ったかのようで、映画的至福に満ちている。インド人作曲家A・R・ラーマンの楽曲はエキサイティングであり、スラムの只中を子供たちが追われるシーンでは、映像とあいまって、すさまじい興奮を呼んでくれた。

 「ザ・ビーチ」でのアジアの描き方には困惑させてもらったダニー・ボイルだが、このインドはすごい。ムンバイではスラムと犬をかけあわせたタイトルからデモが起こったり、スラムでの生活描写に抗議の声があがったという。それもわかる。

 だが、実際に見た映像から生まれるのは、生きることへの真摯な思いだ。彼らをとりまく環境は苛酷であるが、ある種の器用ささえ見せながら、その中で生きていく主人公、兄弟の姿は笑いさえ誘い、たまらずいとおしくなる。

 この映画の本質はとてつもなくシンプルで力強いラブストーリーである。映画の中には、裏切りやだまし、欲望や謎がたくさんあるが、主人公の愛に関しては、一切の揺るぎがない。愛は奇跡であるから、疑うことさえありえないのである。

   

 まるで神話や経典のエピソードのように、奇跡が奇跡たらしめるさまざまな試練が課せられるが、作品はほんとうにシンプルで輝かしい奇跡を見せてくれた。こんな奇跡があるのなら、視聴者参加クイズ番組の存在ってありがたいものだったのだな。

 映画を見終わったとき、すばらしく興奮していた。その一方で、こういう番組が視聴者からも嫌われてしまった日本の寂しさも感じてしまった。閉塞感の中、奇跡を願えない日本はつまらない国なのかもしれない。

監督:ダニー・ボイル 共同監督:ラヴリーン・タンダン 製作:クリスチャン・コルソン 製作総指揮:ポール・スミス 製作指揮:テッサ・ロス 原作:ヴィカス・スワラップ 脚本:サイモン・ボーフォイ 製作:クリスチャン・コルソン 撮影:アンソニー・ドッド・マントル 編集:クリス・ディケンズ 音楽:A・R・ラーマン
キャスト デヴ・パテル マドゥール・ミタル フリーダ・ピント アニル・カプール イルファン・カーン アーユッシュ・マヘーシュ・ケーデカール アズルディン・モハメド・イスマイル ルビーナ・アリ 他
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コメント

本日、観てきました。
最後、感動でミーミー泣いてしまいました(笑)。
音楽と映像が見事に合っていて、本当に素晴らしかったです。

映画の中のスラムの風景とかもの凄く躍動感に溢れていて、以前
住んでいたフィリピンを思い出し、とても懐かしく思いました。
フィリピンでは、ミリオネアは放送されていなかったのですが、
地元ローカルで「WOW WOW WEE」というクイズ番組が放送されて
いて、高額な賞金の為に凄い人気で、1周年記念の公開番組では
3万人の観客が押し寄せ、将棋倒しになり88名程の死者が出る
ほどの大惨事にもなったんですよ。
それほど、皆、一獲千金の奇跡を願っていたんですよね。

■カオルさん
 フィリピンといえば、世界的に有名なスモーキーマウンテンもありますね。
 もちろん、スラムなんかなくなってしまったほうがいいと思いますし、
 この映画で提示されるさまざまな問題は、生きることへの挑戦でもあるのですが、
 そんな環境だからこそ生まれる純粋な気持ちを思い出させてくれる映画でした。
 インド映画風なエンドロールは、この奇跡を目の当たりにしたぼくらと
 奇跡を生んだ彼らへの最高のごほうびでしたね。

本当にあのボリウッド映画風のダンスは、最高でしたね。
本当に素敵なご褒美でした。
大好きな映画「モンスーン・ウェディング」を思い出し、ちょっと
ムフフ♪ってなりました。

貧しい中でも力強く生き、その強さの中から生まれる純粋な気持ち。
私達は豊かになったけれど、富めば富むほど、その分鈍感になり、
弱くなったのかもしれないですね~。
と、この映画を観て、ツラツラと思ってしまいました(笑)。

■カオルさん
 本文の末尾にダンスのシーンを貼り付けちゃいました。
 聴きなおすと感動が鮮明に蘇ります。

きゃっ♪
ありがとうございました。
映画の後、ソッコーCDを買いに行ったのですが、やはり
映像がある方が良いですね。
駅でのダンスというのが、2人への旅立ちを祝福している
ようで、未来を感じさせます。

■カオルさん
 おお! CDも買いましたか。そうでしょうね。
 ぼくもこのエンディングをもう一度大スクリーンで見たいと思って、
 映画館にいこうかなと思っています。

実は、私ももう1度観ようと思っています♪

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