【映画2009】ザ・バンク -堕ちた巨像
ワーナーマイカルシネマズ板橋5番スクリーンにてSRD鑑賞。
圧倒的な存在と戦うクライヴ・オーウェンのはいつもおれの胸をしめつける。この映画でクライヴ・オーウェンが戦うのは世界第5位のメガバンクである。経済グローバリズムのもと、多くの国家の上に存在し、武器商人と等しくなった国際金融機関と戦うのだ。
知らなかったのだが、クライヴ・オーウェンの敵にはモデルがある。CIAの作戦行動の背後に存在し、イラン・コントラ事件やアフガニスタンのムジャヒディンへの支援も融通し、1991年に破綻したBCCIである。
「ザ・バンク」というと銀行の内幕ものかと思ってしまうが、インターポールの警官であるクライヴ・オーウェンとアメリカ検事局のナオミ・ワッツが協力して、ルクセンブルグにある国際銀行の陰謀と戦う話だ。ちなみに原題は「The International」となっている。最近では珍しい本格的なエスピオナージュ作品で、「ジャッカルの日」や「オデッサ・ファイル」のように、暗殺や謀略がリアルかつサスペンスフルに盛り込まれている。
抑制をきかせながら、きっちりと作った演出はおれの2007年ベスト1作品「パフューム ある人殺しの物語(2006)」のトム・ティクヴァ監督ならではのものだ。
クライヴ・オーウェンはインターポール捜査官だが、「ルパン三世」の銭形警部のような逮捕権がない。地元警察がいなければ、身柄拘束さえできない。リアルなインターポールに逮捕権はない。派手なアクションシーンもあるのだが、ジェイソン・ボーン(映画版)のようにいろんな技を使って、敵をぶちのめすことはできない。射たれれば血も流す。クルマにはねられれば、入院する普通の人間なのだ。
その彼が鵺のような巨悪と戦うのだから、それだけですばらしいサスペンスになる。
たまらないのは、建築マニア垂涎の建物がつぎつぎと登場することだ。ベルリン、ミラノ、ニューヨーク、イスタンブールと登場するのだが、オープニングに登場する2006年開業のベルリン中央駅など、近代建築のショーケースのようだった。しかも単なる借景ではない。おそれ多くもニューヨーク・グッゲンハイム美術館では壮絶なガンファイトを見せてくれる。巨大な螺旋と吹き抜けの構造を使ったアクションで、実際にグッゲンハイムにいったことがあるなら、驚愕するような仕上がりだ。
全体を通してみると、クライヴ・オーウェンのキャラクターが弱い。もちろん、役者の魅力はきちんとあるのだが、それだけで押しきっている。かつてスコットランドヤード勤務時代のエピソードなども出てくるのだが、彼自身が巨悪と戦う理由が弱い。肉体的には血をたくさん流しているし、捜査としては何度も壁にぶつかっているのだが、彼の内的必然から流れる血が少ないのだ。
それは、ナオミ・ワッツとのバディシステムがうまく機能していないせいもあるのだろう。男女がコンビを組むことから生まれるふくらみはほとんどない。人間関係が有機的に生み出す部分が希薄なのだ。国際金融の陰謀という、グッドガイとバッドガイがわかりにくい素材をあつかっているので、爽快感が薄いのは仕方ないのだが、だからこそ、セリフひとつでいいから、キャラクターに深みをつけてほしかった。
また、映画のシーンとしてはすばらしいのだが、グッゲンハイムの銃撃など、いままで地味に暗殺してきたのが、そんなに派手なことをやっていいのかという疑問がわいてしまう。そこだけジェームズ・ボンドやジェイソン・ボーンになられてもなぁ。
70年代国際謀略ものテーストは楽しかったけれど、つめこみかたが甘く、散漫になったのは残念だ。
キャスト クライヴ・オーウェン ナオミ・ワッツ アーミン・ミュラー=スタール ブライアン・F・オバーン 他


