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【映画2009】フリードキンの時代

 ウィリアム・フリードキンのひさしぶりの映画「BUG/バグ」のDVDをみる。

 舞台劇の映画化だそうだが、妄想の中の虫に苛まれる男。そして、その妄想が孤独な女(アシュレー・ジャッド)にも伝染し、エスカレートしていくドラマだった。「エクソシスト」の悪魔の代わりに、存在しない虫が暴れまわるような精神の密室劇で、おもしろい。みようによっては愛と救済の奇怪なコメディのようにも思える。

 興味深い映画だったけれど、個人的におもしろかったのは、収録されていたフリードキンへのインタビューだった。

 若くして「フレンチ・コネクション」、「エクソシスト」という2本で"巨匠"となったフリードキンだが、「ゴッドファーザー」、「ジョーズ」、「スターウォーズ」が生み出したハリウッド革命の直前の映画人として、さまざまなことを語っている。「スターウォーズ」と同時期に「恐怖の報酬」を撮り、敗れたという過去もある。

 「エクソシスト」の上映は、当初26館から始まり、つぎに50館、そして、1000館単位に拡大していったという。スクリーン数が少ないうちは、監督であるフリードキン自身が、全米を飛びまわり、劇場ををチェックしたそうだ。スクリーンの穴や傷を補修させたり、スピーカーを取り替えさせたりしたそうだ。文句をいう館主には、(その権限がないにも関わらず)「そんな小屋からはフィルムを引き上げる」と脅したり……。

 映写機のランプは16段階に調整できるそうだが、ラジオシティミュージックホールでさえ、省エネとランプの寿命のため、12段階程度に抑えられていたそうだ。「エクソシストは最高の16段階で上映しろ」と脅したり、劇場のサウンドでも、ぎりぎりの最高レベルでかけるように要求したそうだ。上映期間中、映画館に電話をかける。

「いま、エクソシストをかけてるな」、「ええ」、「レベルはどれくらいにしている?」、「10です」、「手元のメモによると、そっちの劇場だと、12で鳴らせといったはずだが」、「音が大きすぎると苦情をいうお客さんがいて……」、「12にしろ! いいか、電話を通して、音が聞こえるかどうかチェックしているからな」

 ロードショーが「都市部での先行上映」を意味した時代、かぎられた館数からじっくりと上映していったときなら、それもあり……だったのだろう。

 広告の集中投下と、シネコンの普及により、そういう時代は終わった。「天使と悪魔」など、全米3527館での封切りだ。

  

 もちろん、ドルビーやTHXといったマスな形での上映クオリティ向上の努力は奏功し、当時と現代では、映画館の平均クオリティは飛躍的に向上してはいるのだが、実際問題として、監督自身が末端の上映環境に口を出せる時代が終わったというのもせつないものがある。

 どれだけ、撮影で苦労してもお金を払ってみるお客さんが意図したものを見られないのは、問題がある。

 近所のシネコンなど、DLPをいれ、デジタル上映「Pure4K」を導入したのはいいけれど、最近では、デジタル3D上映でしか、DLPが使われていない。これはちょっとした退化である。また、ハリウッドあたりのきちんとした映画館で見たのと同じ映画が日本で字幕つきになると、ずいぶんとひどいプリントになり、音量も下げられてしまうことはいまも変わらない。

 池袋のサンシャイン通りにある古い映画ビルなど、開館以来四半世紀、ずいぶん劣化している。そんな中で、都内単館上映されるアニメもあるが、アニメファンはよく我慢ができるものだ。

 テレビドラマの映画化や、映画はレンタルDVDで十分、レディースデーの1000円でも払いたくないという人たちには関係ない話かもしれないが、やはり映画館でしか体験できない上映クオリティはいつもたゆまず、向上してほしいのだ。

※こちらのエントリーもどうぞ。

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