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【映画2009】新宿インシデント

 ワーナーマイカルシネマズ板橋6番スクリーンにてSRD鑑賞。

 すばらしい。この映画の中で不要な部分は竹中直人の悪目立ちだけで、あとはフィルム・ノワールのスタンダードに乗った男泣き映画である。

 さまざまなシーンで「第三の男」、「カリートの道」、「暗黒街の顔役」、「スカーフェイス」といった映画が思い出されるが、ジャッキー・チェン演じる鉄頭の漂白の運命を描いたドラマであり、その寄港地のひとつが新宿歌舞伎町だったのだ。

 ぼくらがよく知っている新宿の街を密航中国人の目で見たら、どう見えるかという視座の揺らぎも、この作品の魅力となっている。世紀末の東京が舞台なので、偽テレカ販売や改造パチンコ、クレジットカードや紙幣偽造など、当時の外国人犯罪に手を染めるジャッキー・チェンというのはちょっと驚きではある。

 ジャッキー・チェンの役は一昔前なら、高倉健がやっていてもおかしくない。冒頭、中国の黒竜江省で子供たちにだまされて、自身の運転するトラクターを凍結した川の中に水没させてしまうシーンがある。こういったところで不器用ながら誠実で働き者な彼のキャラクターをきちんと描いているから、幼なじみをたずねて日本に漂着後、中国人ギャングのトップに立つまでの展開に無理がなくなっている。

 今年で55歳になるジャッキー・チェンだが、年齢不詳なところもあり、穏やかな包容力とともに静かに耐える役柄にはぴったりで、人々の欲望が交差するゆえに生きづらい世界の痛みを生々しく伝えてくれる。

 カンフーを封印したといっても、おそろしく強いところは見せてくれるんだけれどね。

    

 ジャッキーの幼馴染で、気の弱い男を演じるダニエル・ウーもいい。ジャッキーの影ともいうべき存在で、映画を大きく動かしてくれる。日本の俳優では加藤雅也がいいね。

 ぼくの好きな「夢翔る人/色情男女」などのイー・トンシン監督ということもあり、人間の距離感を有機的につなげる演出も的確だ。R15指定で、みるだけで痛くなるシーンはいくつかあるんだけれど、それがいやな感じになっていないのは、使いどころがいいからだろう。

 時代の中で確実に存在した孤独な男をきちっと描いた美しい作品だった。

監督脚本:イー・トンシン アクション監督:チン・ガーロウ 製作:ウィリー・チャン/ソロン・ソー 製作総指揮:ジャッキー・チェン/アルバート・ヤン 脚本:チュン・ティンナム 撮影:北信康 美術:オリヴァー・ウォン 音楽:ピーター・カム 
キャスト ジャッキー・チェン ダニエル・ウー ファン・ビンビン シュー・ジンレイ 竹中直人 加藤雅也 峰岸徹 倉田保昭 長門裕之 他
※こちらのエントリーもどうぞ。

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