【映画2009】消されたヘッドライン
ワーナーマイカルシネマズ板橋3番スクリーンにてSRD鑑賞。
これはおもしろかった! 「ラスト・キング・オブ・スコットランド」のケヴィン・マクドナルド監督作品だが、脚本陣もすごい。「キングダム/見えざる敵」のマシュー・マイケル・カーナハン、「ボーン」シリーズのトニー・ギルロイ、「アメリカを売った男」のビリー・レイという強力なメンツが作りこんだシナリオをじっくり堪能できた。
友情、陰謀、真実、正義、倫理といったさまざまな要素をみごとにつめこんだという感動がある。ワシントンの架空の新聞社を舞台にし、「大統領の陰謀」へのリスペクトを忍ばせつつ、ウェブの時代と紙の時代の対比も織り込んで、みごとなサスペンスを構成していた。また、現代の傭兵とも言うべき民営軍事請負企業(PMC / PMF)と政治の癒着というテーマが、全編をくっきりとかためている。
この会社は「ブラックウォーターUSA(現Xe)」をモデルにしたものだろう。日本ではあまり知られていない軍事企業だ。アメリカでは数年来、大きな問題となっている。詳細はwikipediaなどを読んでいただきたいが、戦争の民活というパラダイムシフトはいまも進行しているのだ。
それと同時にアメリカ中で断末魔の悲鳴を上げている新聞業界の問題にも的確に触れており、深刻な状況の中で働くひとびとの姿には、胸を打たれる。この映画で描かれる状況は原題同様、現在進行中(state of play)なのだ。
「ワールド・オブ・ライズ」以来、肥満を治していないラッセル・クロウが古い時代の記者を演じ、ウェス・クレイヴンの日本未公開作「パニック・フライト」が印象的だった、レイチェル・マクアダムスが、ウェブ担当の若い記者を演じているが、それぞれの個性がていねいにつけられているから、主軸にブレがない。そこに加えて、ベン・アフレックが演じる渦中の議員が興味深い。キャラクター配置が絶妙なのだ。
ガチガチの社会派のようで、新旧記者の師弟関係や、旧友である記者と政治家の距離感に、人間をきちんと描いたユーモアや怒りも抜かりなく入っているのがいいね。
ハイテクを中心とした諜報活動「シギント」に対し、人間による諜報活動を「ヒューミント」と呼ぶが、ラッセル・クロウはまさに「ヒューミント」的な取材活動をしている。警察とのコネクションのつけ方、内部情報源とのコンタクトなどで、記者としての能力の源泉が、人とのつながりにあることが明確に描かれている。
顔が見えない民間企業への恐怖感と、顔が見える立場でひとと関わる記者の矜持が交錯する。そして、顔が見えるからこそ、起こりうる善悪のブレもきちんと描いている。
ケヴィン・マクドナルドはタイトな状況の中で、人間を描くことに長けていると思う。そして、「ラスト・キング・オブ・スコットランド」でも感じたことだが、この人は作品の中で登場する人物を裁かない。だから、終盤の唐突かつ性急な展開とあいまって、作品が終わってもエモーショナルな感動となりにくいのだが、オールドメディアへの挽歌と人間の生むメディアへの希望が、余韻をあたえてくれる。
オリジナルとなったBBCのドラマ版も見てみたい。
キャスト ラッセル・クロウ ベン・アフレック レイチェル・マクアダムス ヘレン・ミレン ジェイソン・ベイトマン ロビン・ライト・ペン ジェフ・ダニエルズ マリア・セイヤー ヴィオラ・デイヴィス 他


