【国内旅行】鉄路・トンコツ・ヴァリス
たっぷり眠ってしまった。早い時間から動き出そうと思っていたが、家を出たのは午前11時である
とりあえず「八幡のちゃんぽん」でカツのせ焼きそばを食べるのであった。こういうわかりやすいデブ食が近所になくてよかったよ。
東京はスイカ、大阪はイコカ、そして九州はスゴカである。スゴカはほかのカードと相互利用できてないのが、残念だ。そのスゴカに3,000円チャージして、JRに乗る。
大雑把に筑豊方面に出てから、大雑把に筑後方面にいこうと思っていた。筑豊方面では、福岡県糸田町にある井上陽水の歌碑なんて見るのもいいかもしれないと思っていた。
陽水はとても好きだが、それだけで糸田なんて遠いところに行くのはつまらない。しかし、ちょっとした秘密がある。この歌碑には陽水の「夏まつり」の直筆歌詞が刻まれている。歌詞の最後には「アルバム「断絶」歌詞カードより」と書いてある。
しかし、陽水のファンならご存知だと思うが、「夏まつり」はファーストアルバム「断絶」の収録曲ではない。「夏まつり」が収録されているのは、セカンドアルバムの「センチメンタル」なのである。
この歌碑を作った地元の井上陽水の旧友たちのうっかりミスなのだ。
そういうのをしみじみと見にいければと思っていた。福北ゆたか線経由の博多行きに乗ってみた。福北ゆたか線は鹿児島線、筑豊線、篠栗線を経由する路線だ。2001年の電化に伴って名づけられた。
ずっとむかしに北九州市内から筑豊線で移動したことはある。ただ、2001年なんて、わりと最近のことだ。福北ゆたか線にきちんと乗るのは初めてだ。
列車に乗ってみて驚いた。817系車両はムチャクチャかっこいいよ。対面式のシートは木材と本革を組み合わせていたり、出入り口付近では円形のつり革を配置していたり、大きな一枚ガラスの窓は紫外線シールドがなされている。車両デザインに命をかけるJR九州だけあるね。
筑豊の田園を走る電車に乗っているうちに、うっかりミスの陽水歌碑のことなんて、どうでもよくなってきた。
この路線は、旧長崎街道にわりと近いところを走る。直方や飯塚なんて、ターミナル駅だけでなく、鯰田駅なんて、名前も知らない小さな駅が、2面3線の立派なものだったりする。往時がしのばれるじゃないか。
東京は台風とか地震とかでたいへんみたいだが、こちらはひたすらにいい天気だ。景色を堪能しているうちに、博多駅に到着した。
博多駅に入ると、向かい側のホームに大牟田行きの電車が止まっているじゃないか。今日は大宰府にいって、九州国立博物館の阿修羅展(上野でやったやつの巡回展)を見てもいいと思っていた。大宰府にいる阿修羅像に会うというのが、いいじゃないですか。
普通なら天神まで地下鉄で移動して、西鉄電車で大宰府に行くのだが、タイミングのよさに乗ってみよう。鹿児島線大牟田行きの快速電車に乗る。
「のだめカンタービレ」で、のだめを迎えにいった千秋はタクシーに乗ってしまうのだが、乗ておくべき電車はこちらである。座席の周囲を大阪からきた私服の高校生に囲まれる。九州で関西弁に取り囲まれるというのも変なものだが、向かい側に座ったのが、ありえないほどの美少女で、窓外の景色より、弁当を口に運ぶ彼女を見ていたよ。
長崎に向かうという一行は鳥栖で下車。残念だ。
大牟田まで行っても、なにもない。大牟田は萩尾望都、古賀新一、鴨川つばめを生んだ町だが、通りすがりの観光客がいってもみたり食べたりするものがあんまりない。久留米駅で降りる。
久留米に来たのは久しぶりだ。記憶が残っていない1歳のころ、久留米大学病院に入院していたそうだが、そのあとは、2~3回くらいしかきていないのではないか。JR久留米駅と西鉄久留米駅が離れているのは知っていたが、京急蒲田とJR蒲田くらいの距離だと勘違いしていた。それどころじゃない。歩くと30分くらいかかる。暑いさなか歩くのはめんどうだ。
いいタイミングのバスがなかったので、タクシーに乗る。ここでめざすのは「大砲ラーメン」本店である。

福岡市の今泉でもチェーン店があるので、食べられるのだけれど、一度、本店を訪問したかったのだ。大砲ラーメンは呼び戻しといわれる製法で作られている。
「呼び戻し」とは、その店には開店当初から数十年、営業終了後も絶対空にしないというスープ釜があり、毎日その釜の古いスープに、別の釜でとった新しいスープを少しずつ継ぎ足しながら作るという技法です。
http://www.taiho.net/ramengaku/main4.html
そういうことなら、歴史のある本店が一番えらいんじゃないかと思い、いつか訪問したいと思っていたのだ。
上品に薫り高く、おいしいトンコツラーメンだった。トンコツにもいろいろあるのだが、北九州市のラーメンは、福岡市の長浜ラーメンより、久留米ラーメンに近い。やや獣くさく、麺もやや柔らかめというのは、「記憶食」としてもつながる。

今回はワンタンメンを食べたのだ。九州のトンコツワンタンメンというのは、関東ではあまり味わえない、ふんわりしたうまさである。一時期、九州地区で発売されていたマルちゃんの「激めん」は、トンコツスープのワンタンメンであり、これが最高にうまかった。東京に来て、激めんが醤油スープになっていたのを見たとき、悲しく思ったよ。
西鉄久留米駅まで歩き、西鉄電車に乗る。このときは「阿修羅展」に行く気満々だったのだが、そのあとの予定と、「阿修羅展」の混雑を考えると、ちょっと厳しそうなので、そのまま、天神まで乗ってしまった。
天神から、とことこと歩き、舞鶴公園、大濠公園経由で、福岡市美術館へ。
福岡市美術館講堂で上演される劇団「ギンギラ太陽's」の芝居を見るのだ。開場まで1時間半ほどあったので、特別展の「コレクション/コネクション」を見る。これがすばらしくよかった。
開館30周年記念で、所蔵品中心の展示なのだが、福岡市という歴史ある地方中核都市のコレクションの奥深さに感じ入ってしまった。黒田家の所蔵品だけでなく、仏教美術も豊富で、寺院寄贈の十二神将立像など、平安期のものと南北朝の2シリーズがあり、見ていてつくづく飽きない。
近現代美術では、コランの「海辺にて」などご自慢の作品はなるほど、すばらしいのだが、うれしくなったのは、藤野一友の「抽象的な籠」だ。これって、P・K・ディックの「ヴァリス」の表紙の絵だよ。こんなところで、原画と対面することになろうとは……。アルマンの「呪われた村(光る目)」なんてのもあったし、手持ちのカードをきちんと見せきろうというキュレーターの意欲がびんびんに伝わってきた。
これだけいい展示なら、もうちょっとたっぷり時間をとるんだった。
午後6時30分になって、講堂に行く。ギンギラ太陽'sの「幻の翼 震電」だ。
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