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【映画2009】ダウト ~あるカトリック学校で~

 Blu-rayにて鑑賞。

 すばらしい。1964年、ブロンクスのカトリック系の学校を舞台にした地味な話であるにもかかわらず、ぐいぐいと引き込まれていき、身じろぎもできなくなった。

 圧倒的なのは、メリル・ストリープとフィリップ・シーモア・ホフマンがしのぎを削る演技の応酬だ。

 メリル・ストリープはカトリックの学校の厳格な校長である。古典的ともいえるほどの厳しさで、わずかでも校則を外れる生徒がいようものなら、容赦なく、叱責や体罰をたたきこむ。ケネディ暗殺以降というアメリカが大きく変わる時代であるにもかかわらず、生徒がボールペンを使うことさえ、「正しい文字が書けなくなる」と禁じている。

 そういえば、「鬼教師ミセス・ティングル」なんて、コメディホラー映画もありましたなぁ。

 フィリップ・シーモア・ホフマンは学校を経営する修道会の神父だ。メリル・ストリープとは対照的に、進取の気風と人間的魅力にあふれている。1962年から開催された第2バチカン公会議を経て、現代世界との対話を進める旧教を体現するような人物である。

 ふたりのあいだには、相容れない対立があったのだが、それが一気に表面化したのが、黒人転校生、ドナルドに対して神父が性的虐待をしたのではないかという疑惑だ。若干の状況証拠しかないのだが、メリル・ストリープには「経験に基づく確信」があった……。

 ブロードウェイで上演されたときには、トニー賞とピュリッツァー賞を受賞した舞台の脚本家が脚本・監督をつとめて、映画化され、メリル・ストリープ、フィリップ・シーモア・ホフマン、エイミー・アダムス、ヴィオラ・デイヴィスといった役者と、脚本家がそれぞれ、アカデミー賞にノミネートされたというのも納得の完成度である。

 人の心を埋め尽くす疑心暗鬼の恐怖と暴走がびしびしと伝わってくる。設定こそ、45年前だけれど、ニューヨーク出身の作者が911からイラク戦争に通じる泥沼を念頭において書いたことは間違いない。そこにあるのは、真実の追究による冷静な対応ではなく、おさえきれない疑念のブラックホールなのだ。

 戯画めいた四角四面な女教師であるかにみえたメリル・ストリープの意外な人間性が少しずつ見えてくるのもすばらしい。フィリップ・シーモア・ホフマンとともに、単純化されていないキャラクターの深みが彩りとなっていく。

  

 さらにエイミー・アダムスが最高にチャーミングである。「魔法にかけられて」など、コメディ色のある作品での印象が強かったが、平均年齢の高いシスターたちの中で、若く純粋な新任教師を務める彼女はとにかく魅力的だ。彼女がいなければ、この作品は暗澹たるものになっただろう。そして、彼女の存在こそが、希望につながっていく。

 いやあ、ぼくも外人シスターのいるカトリック系の小中学校に通っていけど、エイミー・アダムスみたいなひとはいなかったですよ。いたら、人生が変わりますよ。

 撮影も最高にすばらしく、ハワード・ショアの考え抜かれたスコアも絶妙だった。映画館で見ておきたかった作品だったよ。

監督脚本原作:ジョン・パトリック・シャンリー 製作:スコット・ルーディン/マーク・ロイバル 製作総指揮:セリア・コスタス 撮影:ロジャー・ディーキンス プロダクションデザイン:デヴィッド・グロップマン 衣装デザイン:アン・ロス 編集:ディラン・ティチェナー 音楽:ハワード・ショア 
キャスト メリル・ストリープ フィリップ・シーモア・ホフマン エイミー・アダムス ヴィオラ・デイヴィス アリス・ドラモンド オードリー・ニーナン スーザン・ブロンマート キャリー・プレストン ジョン・コステロー ロイド・クレイ・ブラウン 他
※こちらのエントリーもどうぞ。

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