【映画2009】パンドラの匣
テアトル新宿にてSRD鑑賞。
太宰治原作として、すがすがしく、完成度の高い青春映画であった。
終戦の詔勅の最中に喀血して戦後を人里離れた結核療養所で過ごす若者が主人公だ。この療養所というのが独特な空間だ。「健康道場」と称する。患者も職員も全員があだ名で呼び合う。療養の中心は皮膚へのブラシ「摩擦」と屈伸だ。
場内での挨拶が「やっとるか」、「やっとるぞ」、「がんばれよ」、「ようし来た」というかけあいである。この軽やかなでリズミカルなやりとりがなんとも心地よい。そのやりとりの相手となるのが、助手といわれる看護師である。
金歯をつけたマァ坊(仲里依紗)は主人公とも年が近く、無邪気で可憐。少し年上の竹さん(川上未映子)は、年長の看護師の魅力が全開である。
もちろん、結核療養というのは大変なことだろう。死が身近なものであることである描写、敗戦後の日本の影なども入念に描かれて入るのだが、自分も健康道場に入って、川上未映子に「摩擦」してもらいたいし、仲里依紗に「やっとるか」といわれたい。いわれるためなら、結核をも辞さないなんて思っちゃうよ。
川上未映子の歌や声が好きで、いったいどんな風に演じているのだろうかという興味が大きかったのだが、実際に見てみると、たまりませんね。ゆるがない存在感と働きものの女しかだせないエロティシズムがあって、ぞわぞわとしてしまう。うちの床も拭きにきてください。お願いですから。
仲里依紗に関しては、まさに小悪魔的(凡庸な表現でめまいがする)で、彼女が魅力を全開にする布団部屋のシーンは、永遠に終わってほしくない至福を感じた。うちのクローゼットはいかがでしょうか。
センスがいいのは、一人称の視野をじつにうまく使っているあたりだ。退院して以来、何度が訪れる窪塚洋介を見せたり見せなかったりするあたりにうならされる。おそらく主人公の回想としての再構成がなされているのだろうけれど、主人公の周辺の人々以外、医者でさえ登場させていない。
書簡小説だった原作でも語られていた芭蕉の軽みさえ感じられる作品に仕上がったのは、菊地成孔のおかげだろう。もう楽しいとしか言いようがない音楽使いで、最近の日本映画の中でも出色だろう。
狙いすましたキャスティングやシナリオ、音楽が見事にはまった作品で、生誕百周年で何本も企画されている太宰治映画のうち、出色といっていい。こんなパンドラの匣なら、開けてみたいよ。
キャスト 染谷将太 川上未映子 仲里依紗 窪塚洋介 ふかわりょう 小田豊 杉山彦々 KIKI 洞口依子 他
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