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【映画2009】パイレーツ・ロック

 新宿武蔵野館1番スクリーンにてSRD鑑賞。武蔵野館は空調ノイズがけっこう気になるね。

 映画には二種類ある。童貞が童貞を卒業する映画と童貞が童貞のままでいる映画だ。


 1966年、イギリスでロック人気が高まっていたころ、BBCラジオではポピュラー音楽の放送が一日わずか45分間と制限されていた。民放ラジオ局が認可されていなかった当時のイギリスでは、ロックへの渇望が高まるばかり。そんな中、イギリス領海外の北海から24時間放送でロックを流す海賊放送があった。この映画は海賊ラジオ局を舞台に、個性的なDJたちの織り成すドラマを描いている。

 もちろん音楽をテーマにした作品なのだが、「アニマルハウス」に代表される"部室もの"というか、「三銃士」に代表される"イニシエーションもの"というか、「グローイングアップ」に代表される"童貞喪失もの"というか、人も時代も若かったころの純粋さが織り成すユートピア映画なのである。

 2時間12分という長尺だけれど、あまりの居心地のよさにあっという間に過ぎてしまった。船に乗り込んでいるのは、個性的な男ばかりだ(例外はレズビアン女ひとり)。週末以外は女が乗り込むことはない。これはもう"部室もの"の必須条件である。

 全体に下品でばかばかしいネタが多い。しかし、「ラブ・アクチュアリー」で巧みな手綱さばきの群像劇を撮ったリチャード・カーティス監督作品だ。悪趣味だけれど、下劣にならないバランスで幸せにまとめている。

 「ラブ・アクチュアリー」での老いぼれロック歌手が印象的だったビル・ナイが、ラジオ局オーナー役として出演しており、やたらにかっこいい。

 もちろん、高打率をつづけるフィリップ・シーモア・ホフマンは、ここでも先輩格のDJを演じており、「三銃士」におけるアトス的存在感だ。リチャード・レスター版でのオリヴァー・リードなんかを思い出す。

   

 国家の敵とばかりに、海賊ラジオ局を駆逐しようとするイギリス政府の高官も出てくるのだが、本格的な戦争ではなく、自由におおらかにその攻撃をかわしていくのがいいね。「The Boat That Rocked」という原題の"ゆらゆら"ぶりが、かっこよさに通じていていとおしい。

 映画の構成上は英国政府対海賊ラジオという対決風に見せているけれど、これは「アニマルハウス」におけるライバル学生クラブみたいとか、トムとジェリーの対決みたいなもので、なくなるとさびしくなってしまう戦いみたいなものなのだ。

 それにしても童貞がひとりいると、映画ってうまく構築できるものだね。

監督脚本製作総指揮:リチャード・カーティス 製作:ティム・ビーヴァン/エリック・フェルナー/ヒラリー・ビーヴァン・ジョーンズ 撮影:ダニー・コーエン 美術:マーク・ティルデスリー 衣装:ジョアンナ・ジョンストン 編集:エマ・E・ヒコックス 音楽:ニック・エンジェル 

キャスト フィリップ・シーモア・ホフマン トム・スターリッジ ビル・ナイ リス・エヴァンス ケネス・ブラナー クリス・オダウド キャサリン・パーキンソン リス・ダービー トム・ウィズダム 他

※こちらのエントリーもどうぞ。

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