【映画2009】マイマイ新子と千年の魔法
ワーナーマイカルシネマズ板橋11番スクリーンにてSRD鑑賞。
放課後、日が暮れるまでの長かった時間。となり町への遠かった距離。そんな子どものときの豊かな時間や、果てしない空間をアニメ映画を見ていて感じられるとは思わなかった。
この映画の感触にとても近いと思ったのは、「テラビシアにかける橋」だ。「テラビシア」の場合は、空想の王国であり、「マイマイ新子」の場合は1000年前の周防国の国府になるのだが、なんの変哲もない野山の風景に子どもたちのイメージが重なり、子どもたちのあいだでそれが共有されていく。ひとりの夢想ではなく、想像の共有というのがたいせつなポイントだ。
舞台となるのは昭和30年の山口県防府市である。隣県に生まれた自分にとって、防府の名は聞き知っていたけれど、山口県といえば、下関市や萩、山口市のほうがなじみがあり、防府は特徴のない通過点でしかない。それはたいていの地方都市と同様で、よそからきた人にとっては、ありがちな日本の景色にしか見えない。
だが、そこに住む子どもにとって、ありふれた土地は想像を広げるキャンバスになる。男の子たちのあいだで「ここは正義のための秘密基地だ」といえば、そこには選びぬかれた隊員が集う最先端の作戦司令部になる。女の子たちのあいだで「ここは平安時代に都からきたお姫さまがいた」といえば、そこにはみやびな世界で闊達に生きる少女の姿が見える。このアニメ映画にあるのは、そのふんだんな思いなのだ。
それぞれの思いから同心円状にひろがるいくつもの波紋が、ひとつの大きな波となり、胸に広がっていく。
昭和三十年、麦秋の平野で物語が始まると同時に、美しいスキャットがぼくらを包む。スキャットだからもちろん、意味のあることばをいっているわけではない。でも、ものすごく饒舌なんだよ。
マイマイというのは、かたつむりのことかと思っていたら、頭のつむじのことだった。新子のつむじはおでこにもある。妖怪アンテナか写楽保介の三つ目のように、新子はおでこのつむじをイマジネーションの源と思っている。
新子には、祖父がいる。祖父は新子に古い防府の街のことを教えてくれる。当たり前に見える土地のつくりのいたるところに、過去の痕跡があるのだ。「ブラタモリ」みたいだね?
新子は東京からやってきた転校生の貴伊子と仲良くなる。この映画の中でストーリーの軸となるのは、防府の子となっていく貴伊子の姿なんだけど、それはそんなに意識しなくていい。知らない土地にいく不安とそこで友だちができる喜びを感じるだけでいい。
昭和三十年を舞台にしているといえば、ある種のノスタルジーが横溢してもおかしくはないのだが、「ALWAYS」などにある、過剰かつステレオタイプなノスタルジーは一切ない。あのころは良かった。あのころにしかないひとの触れ合いや人情があったみたいな、過去賛美はない。
2009年も1955年も1000年も人間が生きていることに変わりはない。どんな時代であろうと、人間としてそこに生まれ、その時代と初々しく出会った子どもたちが手探りしながら、歩き、息を吸い、手を広げていき、過去と未来に思いをはせていくのは変わらない。
そして、子どもは純粋だからいいという、決め打ちの子ども賛美さえない。大人たちからみたらありがちな事件だって、生まれて初めてそれを体験する子どもたちには、大事件となり、子どもなりの落とし前をつけていく。
ここで泣くところ、ここで笑うところなんて、合図のある作品ではないけれど、だからこそ、子どものとき意図せず「いっしょだね」と思うことで得たあの喜びを、一晩寝て明日になるのが遠かったから、感じた不安と期待を新子たちといっしょに体験できるすばらしい作品だ。
ぼくらが創作や物語を好むのは、そんな「いっしょだね」が起点だったんだわけだからね。
ああ、今年は本当にいい映画が多いなぁ。
東京ではほとんど上映が終わったんだけど、ラピュタ阿佐ヶ谷で12月19日から、1週間限定のレイトショーをやっているから、ぜひぜひご覧ください。
そして、映画館でもっと「マイマイ新子」を見たい方は、こちらの署名をどうぞ。
キャスト (声の出演) 福田麻由子 水沢奈子 森迫永依 本上まなみ 他



コメント
明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
今朝、こちらの記事にトラックバックさせてもらったのですが、URLが長すぎていろんなところで不具合が出てしまったので、URLを変えてトラックバックし直しました。
お手すきの時にでも古いURLを削除していただければと思います。
新年早々ご面倒掛けて申し訳ありません。
投稿者: かみぃ@未完の映画評 | 2010年01月05日 21:00
■かみぃ@未完の映画評さん
おめでとうございます。
いつもトラックバックをありがとうございます。
いただいたトラックバック新しいURLに直しておきました。
今年もよろしくお願いします。
投稿者: 柴尾英令 | 2010年01月06日 10:19