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【映画2009】宇宙戦艦ヤマト 復活篇

 ワーナーマイカルシネマズ板橋5番スクリーンにてSRD鑑賞。

 おぞましいクソ映画だった。それは冒頭にいきなり「原案 石原慎太郎」と出るからでもない。ご都合主義が横溢してるからでもない。松本零士がいないからでもなければ、ささきいさおが歌っていないからでもない。宮川泰の曲が一部でしか使われず、いまさらなクラシックばかりが流れるからでもない

 脳みそにウジがわいたようなぞんざいな脚本やままごとレベルのキャラクター設定、さらに主張もテーマも表現できない児戯にも等しいストーリーがみごとな雑音を撒きちらした結果にできたのが、拷問のような135分のクソ映画なのだ。

 かさねて書くけれど、今回の敵はアメリカ合衆国をあてこすったようなSUSであることとか、大東亜共栄圏よろしく、大義のために戦っていれば、武士道を粋に感じて、ヤマト側に寝返ってくれるだろうという発想だとか、寝返ってくれさえすれば、ヤマトのために頼みもしない特攻までしてくれることとか、そういうことを責めるつもりさえない。

 どうせ、「石原慎太郎・原案」なのだし、アメリカに対するルサンチマンがあるのは世界観の一部として、受け入れてやるよ。でもね、ほんとうにそういうものを描きたいのなら、もっときちんと描けよ。 ある種のプロパガンダにしたいのなら、もっととことんやってくれよ。

 映画の中で「おれ、故郷に帰ったら結婚するんだ」なんていうのを死亡フラグが立つというけれど、この映画には死亡フラグがまったくない。

 死亡フラグがないまま、みんな勝手にひとり合点して死亡していく。「泣ける映画」とか、「号泣映画」なんて、キャッチフレーズは地上から放逐したいおれだ。映画は泣くために観にいくもんじゃない。結果的に泣くことはあっても、泣くための映画をみて泣いて帰るほど、浅いものはない。

 そんな泣きたい人にとってヤマトは最悪だ。ヤマトの場合は死亡フラグさえないので、だれかがせっかく死んでいるのに、泣かせることさえ、させてくれない。 あれれ、また、死んじゃった。今度はこっちが死んでるし……。おまえいろいろいって死ぬけど、よく知らない人ですから、泣くに泣けません。

 劇場版第二作では、日本中が泣いていたことさえ、遠い思い出だ。

 きっと西崎義展の頭の中では、設定とかいろいろあるんだろうけれど、それがドラマやストーリーの形になっていないので、唐突に出てきた人が、頼みもしないのに勝手に味方になり、頼みもしないのに勝手に特攻して、頼みもしないのに勝手に死ぬのだ。

 なーんか、説明ベタの日本人の「こちらが正しいと思うことをやっていれば、敵もそれを察してくれるさ」みたいなおしきせがましい性善説が横溢しているのだ。それはヤマト世界の敵キャラに対しても、観客に対しても「察してくれ」という傲慢さだけしか残らない。

 ポスターには「愛のために戦え」とかなんとか書いているけど、驚くべきことにこの映画では「愛」さえ語っていないんだよ。映画の中で一カ所くらいは「愛のために戦」ってほしかったよ。漠然と進んでいって、周囲が勝手に特攻して、ときどき思い出したように波動砲を撃つってだけじゃ、ストーリーとはいわないよ。

 きな臭いプロパガンダ映画になっていたら、楽しみようもあったのだけれど、その域にも達していない。超映画批評の前田有一なんか、この映画を褒めているのだけれど、「熱い。とにかく熱い、昭和オヤジのためのアニメーション作品である」なんてこともなく、こんなバッタモンに「熱い映画」だと騙される昭和オヤジは前田有一くらいだろう。コブシが回っていない下手な演歌を2時間以上聞かされるうざったさしかなかったよ。

    

 タイアップの関係で、劇場版第一作の「宇宙戦艦ヤマト」をテレビで放送していたけれど、七色星団会戦とかいま見直してみても、ほんとに知恵を使ったドラマがあった。21世紀だというのに、そういうセンスはまったく失われたことが哀れでしょうがない。

 こんなのはもう「ヤマト」でさえないよ。「宇宙戦艦ヤマト 完結編」から26年、ヤマトは着実に劣化していた。それにしても最後に「第一部 完」とでてきたときには、のけぞったよ。今後、まだ劣化する余地があるんだろうか。

企画・原作・総監督・脚本:西崎義展 エグゼクティブプロデューサー:西崎彰司/中沢敏明 原案:石原慎太郎 脚本:石原武龍/冨岡淳広 キャラクターデザイン:湖川友謙 メカニックデザイン:小林誠 音楽:宮川泰/羽田健太郎 音楽監督:大友直人 主題歌:THE ALFEE 
キャスト (声の出演) 山寺宏一 伊武雅刀 藤村歩 由愛典子 茶風林 古谷徹 伊藤健太郎 浪川大輔 柚木涼香 野島健児 山口勝平 鳥海浩輔 高瀬右光 大浦冬華 阪口大助 青野武 置鮎龍太郎 永井一郎 緒方賢一 家中宏 飯塚昭三 田中敦子 井上和彦 子安武人 他
※こちらのエントリーもどうぞ。

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コメント

おっしゃる通りのクソにもなれない腐敗ガス映画です。
ヤマトが地球を捨てるのかよ~から始まり,何もかもがみな納得いかない映画です。

でも,私には『復活篇』を悪し様に貶せないんですよ。
落魄してしまった同級生に向かっては,説教も叱咤もできず,ただ同情してあげるのと同じ心境。

勇気あるレビューに拍手!!!
氷川氏は褒めてましたねえ(遠い目)

正直なレビューが素晴らしいです。

★各位
 まあ、ほめてる方や口をつぐんだりする方の事情、心情はわかります。

 勇気や正直さというか、ほかの映画と同じ基準で書かせていただいただけなんです。

今さっき見終わって帰ってきました。
で、早速「ヤマト 復活 糞」で検索して、ここにたどり着いたわけです。
いやぁホント感動しましたよ、クソ過ぎて。。。

安易な人殺しのクセが、ゼンッゼン抜けて無かったね。
個人的にはクソ程じゃないけど、
なんともお粗末なもんでした。
西崎氏にはこれ以上無理だろう。

読んでいて清々しい気分にさせてくれる批評でした。
ありがとうございます。

> ポスターには「愛のために戦え」とかなんとか書いているけど‥

復活篇を見た良識あるコピーライターから、慎太郎のシナリオに向けて放たれた「嘆きの叫び」なのでは?

今さら見ましたがあまりのクソさに最後まで見れず、
ただ怒りがわいてきました。ここまでのクソ作品今まで見た事ない。
みんなどんな感想だったのかなとネットで調べて、
こちらにたどり着きました。全ておっしゃる通り。
すばらしく的を得た記事ありがとうございます。
今まで前田有一氏のレビューは好きでしたが、今後一切見ません。

宇宙戦艦ヤマトの代わりにプリキュアオールスターズでもSUS連合に勝てそうだな。

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