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【映画2010】食堂かたつむり

 ワーナーマイカルシネマズ板橋7番スクリーンにてSRD鑑賞。

 つまり「かもめ食堂」とか「南極料理人」とか、そういう自分探し料理系はごめんこうむりたい。どちらも悪い作品とは思わないけれど、いくらなんでも満腹です。「柳の下の食堂」系ばかりで辟易していたところ、この映画も観ようとは思わなかったけれど、「愛のむきだし」、「プライド」の満島ひかりが出演するとあっては、仕方がない。


 見て驚いたよ。「嫌われ松子の一生」→「かもめ食堂」→「ブタがいた教室」→「西の魔女が死んだ」→「いのちの食べかた」だった。いやもうマジでほんとに。しかもテーマに有機的なつながりはなく、行き当たりばったりでつなぎまくっているという感じだ。

 ターゲットとしては、「かもめ食堂」が大好きな森ガールを狙っているのだろうけど、後半は森ガールドン引き展開。なんじゃこれは! 原作はどうなんだろうと、アマゾンのレビューをみたら、悪評の数々……。原作でもみんなドンびいていたのがわかる。TBSではかなりおしていた原作だそうだが、なんとなく、椎名桜子的な匂いを感じる。みなさん覚えていますか「家族輪舞曲」を。

 都会に出て、おばあちゃんにさまざまな料理のレシピを教わり、いつか自分のレストランを始めることを夢見ていた柴咲コウが、外国人ボーイフレンドに金も家財道具も盗まれる。ショックのあまりことばを話せなくなった彼女は、折り合いの悪かった田舎の母親の元に帰ってくる。物置を改造して、一日一組限定の「食堂かたつむり」を開業する。

 まず致命的なのは、料理の味がまるっきり想像できない、うまそうに思えないことだ。

 お世話になったブラザートムを最初の客として招待するのだが、そこで出されたのが、ざくろカレー。あまりにも突飛なレシピで味の想像がつきにくい。調べてみたら、イランあたりに実在する料理だそうだが、まるでわからないよ。

 しかも料理を食べる音がどれも汚い。

 とりわけひどかったのは、ブラザートムの食べ方で、見るからに不味そうな顔をして、びちゃびちゃ食べている。味の感想も「おいしかった」というくらいで、ディテールがわからない。

 さらに料理を食べると、すてきな奇跡が起こるという設定なのだが、その理由がわからない。

 ブラザートムのもとには前妻とともにいなくなった娘からの電話がかかってくる。高校生カップルはジュテームスープを飲んでイチャイチャする。陰鬱な未亡人はフルコースを食べて、お達者ばあさんになる。

 魔法的な演出をするのなら、魔法の由来や秘儀の継承などをきちんと描けばよかったのに、なんでそういう奇跡が起こるのか、まるっきりわからないから、観客はおいてけぼりだ。

 お目当ての満島ひかりも、最初に親切でじつは意地悪キャラとして登場するのだが、そのあと、きちんとした仲直りのプロセスがあるかと思ったら、そういうのはいっさいない。つぎに満島ひかりが登場するのは和やかなパーティシーンだ。ふたりが仲良さそうにしている意味が分からない。

 母親はエルメスという名のグルメな豚を飼っている。柴咲コウはエルメスに満足いただけるように、さまざまなパンを作る。しかも心の声で、エルメスとおしゃべりする。まいったなぁ。おれ、動物がしゃべる映画、苦手なんだよ。

 母親が自分を末期ガンとカミングアウトしてからの展開は、のけぞるほどの独善の連続である。このあたりからさらにネタばれしていくのだが、覚悟して読んでほしい。

 自分を末期ガンと見立てた医者(三浦友和)はなぜか、高校時代に生き別れになった初恋の人だ。ふたりは結婚することになる。余命いくばくもない母親は、柴咲コウにエルメスを料理しろと命じる。さっきまで心の声でおしゃべりしていたのに……。

    

 ちょっと複雑な顔をするものの、畜肉処理場に運ばれていくエルメスを見送る柴咲コウ。ああ、「ぶたがいた教室」で、柴咲の元恋人がこういう感じで豚を見送っていたよ。カットが切り替わって、「食堂かたつむり」の厨房にずらりと並んだエルメスの死体。その死体を焼いたり、煮たり、腸詰にしたりして、ウェディングパーティにならべる。

 パーティが終わると、母親は順調に死ぬのだが、自分が柴咲コウに冷たくしていた理由をややこしい場所においた置き手紙で説明する。死後、許しを乞いたいのなら、そんなところに置かなくてもいいのに……。。

 柴咲コウは食堂を再開する。そのとき、ドアを叩くような不思議な音がする。ドアを開けてみると、白い鳩が死んでいる。これまで映画の随所に登場し、柴咲コウを見守っていた鳩である。「まさか」と思ったよ。しかし、柴咲コウはやっちまった。どんな理由で死んだかわからない鳩をローストして食べちゃうのだ。痩せた鳩だけれど、いいのかな。そして、鳩は柴咲コウの口にことばを返してくれる。

「おいしい」

 おれは柴咲コウが死んだ母親を食べたといっても信じちゃうね。なんでも食べる女だよ、やつは。

監督:富永まい 原作:小川糸 脚本:高井浩子 
キャスト 柴咲コウ 余貴美子 田中哲司 ブラザー・トム 志田未来 江波杏子 満島ひかり 他
※こちらのエントリーもどうぞ。

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