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【映画2012】シネコン至上主義#2

「水道橋博士のメルマ旬報」で連載中の「シネコン至上主義――DVDでは遅すぎる」のバックナンバーです。

この回では、「悪の教典」、「私の奴隷になりなさい」、「シルク・ドゥ・ソレイユ 3D 彼方からの物語」、「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」、「ふがいない僕は空を見た」をご紹介。

最近公開の映画を映画館でお金を払って観たレビューです。
映画を映画館で観る理由となる3つの理由について5点満点で採点しています。

「スクリーン必然性」
3D効果や臨場感、サウンドなど、家庭のテレビ画面でなく、映画館で見る必然性を示します。

「インストール強度」
人生の一部として、その映画が自分の中にどの程度インストールされるかの目安です。

「おっぱい指数」
映画に必要な裸の女優の割合を物理的なものだけでなく、色気も含めて評価します。




「悪の教典」


スクリーン必然性 ★★★
インストール強度 ★★★★
おっぱい指数   ★

倫理や理屈はともかく、“エクストリーム”な“エクスペリエンス”を“エクセレント”に堪能する視聴覚コンテンツとして、よくできている。
こういう仕事をさせると三池崇史はぬかりない。

「13日の金曜日」に登場したジェイソンなど、殺人鬼を描いた映画はホラーの定番だ。
この映画の構図は、理不尽な殺人鬼ホラーと変わることがない。
もしも、殺人鬼が等身大の人間として現代日本に実在するとしたら……。
もしも、殺人鬼が、大量殺人の現場を一人称で眺めるとしたら……。
これはそんなホラーエンターテインメントの実験映画といえるだろう。
それは手遊びでプチプチと潰されるエアキャップのように無辜な生徒たちすべてが殺されるという悪趣味なものだけど。

ロメロの「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」など、ゾンビ映画の最大の発明は、相手が人間でないゾンビだから、ゾンビという人間の形をしたものを人間がどのように「虐殺」してもいいという発明があった。
「悪の教典」において、その発明は殺人鬼は善悪を感じないサイコパスだから、相手がだれであれ、ぶち殺しても仕方ないというもの。

自分が小学校低学年のころの話だ。
うちの前に咲いていた桜の木の下で、アリをぶちぶち殺していたとき、それを見てあきれた祖父が「殺生はいちばんの遊び」みたいなことをいった。
この映画を見て思い出したのは、そんな祖父のことばだ。

だれもの心のなかに潜む殺戮のカタルシス。
それをくっきりと自覚させる映画だ。

三池崇史監督の映像は「愛と誠」や「ヤッターマン」のように色彩が厚くのったコテコテなものでなく、自然な色調整のぬけのいいものだ。
これが視点を変えたジェイソン映画に、新鮮でリアルな空気を吹き込んでいる。
一方、ありきたりな効果音はどこまで意図しているのか。
それはわからないが、監督の誘導するなにかへの誘導と思えてしまう。

■採点理由
R15指定の無慈悲な虐殺。
これは地上波で観られないので、スクリーン必然性は★★★。
自身に潜む暴力への渇望を意識できる人にとって、インストール強度は★★★★。
伊藤英明の生尻に色気を感じるなら別だが、おっぱい指数は★。

■以下ネタバレ
殺人教師ハスミン(伊藤英明)のキャラクターは、徹頭徹尾、行動によって描かれていくかと思っていたら、アメリカでの「事件」や「ビデオドローム」風なしゃべる猟銃も現われ、彼をそそのかす。
そのあたりの理由づけはわずらわしく感じられたが、シリーズを見たくなる狂気の大作だ。
その死を受け止める生徒側に十代特有の自己懲罰願望などの描写があれば、本作は一段上の傑作になりえたかもしれない。
原作者と揉めて続編も怪しくなった「海猿」より、伊藤英明は今後、「悪の教典」シリーズに出てくるべきではないか。
そんなことさえ考えてしまう。




「私の奴隷になりなさい」


スクリーン必然性 ★★★
インストール強度 ★
おっぱい指数   ★★★★★

2012年、時代の要請にこたえ、日本に降臨した壇蜜というセックスシンボルの正しすぎる活用法。

バラエティ番組「ギルガメッシュ LIGHT」や雑誌「FRIDAY」を舞台に活躍する壇蜜の存在感をあらためて語るのはもはや野暮としかいえない。
そんなセックスシンボルをきちんと活かし、「エマニュエル夫人」を嚆矢とするソフトポルノの歴史の正しい継承者とした。

日本のAVはすばらしく進化し、AV女優は世界を席巻しているが、セックスシンボルは長らく不在だった。
セックスシンボルはセックスすりゃいいってものじゃない。

壇蜜に演技力があるとは思えないが、”艶”技力はゆるぎない。
壇蜜はスタイルがいいわけではないが、だからこそいやらしい。

中年の性的導師が、欲求不満の人妻を妖艶な女へと変貌させていくという
ストーリーはクリシェに満ち、新味はない。

しかし、そこに彼女に憧れる若者を配置するという「青い体験」要素を散りばめたことで、なんともいえない爽やかささえ感じられた。

こういう映画は、年に何本かあってもいい。
角川映画ががんばった結果、R18ではなく、ハイティーンが見られるR15指定のポルノである。
地方在住高校生男子はおっぱいを観るために、映画館の暗闇を目指してほしい。
それが人生の経験ってやつだ。

■採点理由
映画館の暗闇でゴクリと喉を鳴らしながら、他の人と観るのが醍醐味なので、スクリーン必然性は★★★。
50歳のオレにとってインストール強度は★だけど、年令によってはもっと強いだろう。
脱ぎっぷりには感心したから、おっぱい指数は★★★★★あげる。

■以下ネタバレ
そもそも性の導師である板尾創路が、調教をする背景や壇蜜と旦那との距離感など、せっかくの設定をまるで生かしきれていないドラマだが、そういったアンバランスさが気にならない。
壇蜜のエロいところが観たいわけだし、あんまりハードすぎるのはめんどくさいわけだから。



「シルク・ドゥ・ソレイユ 3D 彼方からの物語」


スクリーン必然性 ★★★★
インストール強度 ★
おっぱい指数   ★

アートサーカスの最高峰として、ラスベガスでいくつものレジデントショーを展開するシルク・ドゥ・ソレイユを「アバター」のキャメロンがプロデュースして映像作品とした。

個人的にもシルクのショーは大好きだ。
“O”は5回、“KA”は4回、「ミスティア」は2回、その他は1回ずつと、この映画作品に登場するショーはすべて見ている。
そんな自分には、至福の時間だった。
見たことのないアングルで撮り、高速度撮影で奇跡のショーが堪能できるから。

これをIMAX3Dで観る意味は十分にある。

ただ、カメラはアクロバット面で誇示される肉体よりも、アートな空間の美術や装置を主役としている。それは悪いことではない。
しかし、ハンドトゥハンドのような肉体が震えるようなセクシーな演目も観たかった。

驚いたのは、“LOVE”の占める率が高いことだ。
“LOVE”はビートルズの楽曲をテーマにしたショーで、名曲が名場面となる。
本作でもビートルズの7曲が登場するので、ビートルズファンは観ておくべきかもしれない。

“KA”のパートが始まったあたりは、総毛立った。
あの巨大なモノリスのようなムービングステージが、あんな角度で3D体験できるとは……。
ただ、演目は3D映えするものを中心にチョイスしているので、観たかったものがすべて見られるとは限らない。

本作をおすすめできるのは、日本でシルクのトラベリングショーは何度も見ているけど、ラスベガスには、なかなかいけないファンあたり。
ラスベガスのシルク・ドゥ・ソレイユ・レジデントショーの壮大すぎる予告編といったおもむきだ。

■採点理由
とくにIMAX3Dならば、スクリーン必然性は★★★★。
さきにリアルなショーがインストールされてないと、物足りない作品なので、インストール強度は★。
肉体の色気がさっぱりないので、おっぱい指数は★。

■以下ネタバレ
ネタバレらしいネタバレもないけれど、シルク随一のエロティックショー“ZUMANITY”からは1アクトのみ登場。きれいだけど、エロティックじゃない。
マジシャン、クリス・エンジェルのショー「BELIEVE」は意外な形で紹介されている。気づかない人も多そうだ。



「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」


スクリーン必然性 ★★★★
インストール強度 ★★★
おっぱい指数   ★★

愛は世界を救い、疎外感は世界を壊す。

来たるべき再構築のために一度組み上げた世界や設定をぶっ壊す話はともかく、庵野秀明が「マイティジャック」トラウマから生み出したとしか思えない巨大戦艦、AAAヴンダーがとにかくかっこいい。

巨大なもの、枯れたもの、破壊されるべきもの、おっぱい、そういう男の子リビドーにあふれた作品ではあった。

観客を置いてけぼりにしてもよしとした快感追求映画ともいえる。

近所シネコンで公開初日の朝イチの回で見てきたけど、525の客席が埋まる静寂の中、全員が息を呑んでいる光景は稀有なものだ。
それだけでも日本でこの映画を観る意味はあったといえる。

上映終了後、観客の多くが頭上に疑問符をかかげ、感想を話すことさえできずに、呆然とした顔をしている。
前篇「破」以来、ファンが想像した続編内容を軽やかにふっ飛ばした内容は、ファンの拒絶反応も生んでいる。

いままで「エヴァンゲリオン」に触れたことがない人が新たに観る意味はまったくない。
見せ場は満載だが、弾幕のような情報量がドラマへの理解を阻害しているため、カタルシスはまったくない。

前作「破」はドラマと見せ場のバランスが絶妙で高い満足感があったけれど、今回は設定と見せ場をゴリ押ししていくだけだ。
それが「エヴァ」なのだといわれても仕方ない。

世界に対する評価が固まった大人の視点で観るよりも、これから世界へと足を踏み出していく、謙虚な若者の気持ちで、あるがままに受け入れ、まるでゲームの攻略のように、ネットや攻略本から周辺情報を探っていく覚悟が要求されている。

わが国にそんな作品がある幸せだけは確実にある。

■採点理由
大勢の人と「体験」を共有できるのは至福だから、スクリーン必然性は★★★★。
わからないことが当たり前という、ハードな映画の存在を知る意味でインストール強度は★★★。
登場する女子の描き方はさり気なくエロいし綾波レイはやっぱりサービスするので、おっぱい指数は★★。

■以下ネタバレ
シンジとカヲルのラブラブ度がいっそう高まっているのは腐女子向けのサービスですか。
覚醒したシンジに対して、だれかがきちんと情報を伝えるだけで、こんなややこしいことにはならなかったのではないか。
ネルフもヴィレも「ホウ・レン・ソウ」教育ができてないね。
これは庵野秀明監督に会社員経験が乏しいことの反映なのか。


「ふがいない僕は空を見た」


スクリーン必然性 ★★★
インストール強度 ★★★★
おっぱい指数   ★★★★★

コスプレ主婦とセックスを繰り返す高校生の話と聞き、キワモノかと思ったら、誠実な作品だった。
R18指定と聞き、なにがあるのかと思ったら、のびやかにほとばしる愛情だった。

おそるべきは、悪意と誠実など、登場人物すべての二面性をぬかりなく描写しつつ、善悪の落差でなく、自然ととらえることから生まれる滋味である。

その悪意の描写はときに過剰で、ときにおぞましい闇だが、セックスの端緒から出生まで、新生と再生の光も揺るぎなく描きもしている。

何人もの登場人物の光と闇。
光が光に共鳴し、ときには闇と光、あるいは闇と闇が共鳴する。
そこから生まれた波紋が、人のいる空間を立体的にみせてくれる。

映画のシーンやセリフなど、思い出しているのだが、あとから気がつく名シーンや名セリフが多い。

何気なく入った郊外の街のロングショットで、遠くに見える新宿高層ビル街。
その距離感を見せる絵がすばらしかったのは、周到なドラマ設計のおかげだ。
登場する事件のエッジがあまりにも際立っているので、現実感から乖離しそうになるときもあるが、時系列を揺らす展開のおかげで、ひとつひとつが胸に吸い込まれていく。

R18指定であるけれど、若い子にも観させたい映画だ。
閉塞された空間で、寛容の萌芽という希望を見せてくれるのだから。

■採点理由
R18ということではなく、邪魔の入らない静かな環境で観たいから、スクリーン必然性は★★★。
気がつくと、生き方を変えるきっかけをあたえてくれそうだから、インストール強度は★★★★。
これこそ、映画の中の女優のヌードだから、おっぱい指数は満点の★★★★★。

■以下ネタバレ
田畑智子のコスプレオタク主婦だが、現実のそういう方たちの自意識過剰な多弁傾向とくらべると、ちょっと違うなと思える部分もある。
また、ネットの炎上や晒しのシークエンスもステレオタイプ気味に描いているように感じられる。
そういった違和感は、この映画のマイナスにはならない。
特殊な事件が、やがて奥ゆかしく美しい絵になるのだから。

★近況
「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」で混雑するシネコンというのもなかなか素敵な空間で、作品の評価はともかく、これだけの熱量を感じられるのはいいことですね。

最後におすすめした「ふがいない僕は空を見た」は都心部では単館系公開なので、「Tジョイ大泉」という23区の外れのシネコンで観てきました。
単館系を古い映画館で観るというのは苦手なので、そうしたのですが、話の内容とロケーションがマッチして、感情移入もひとしおでした。

さて、劇場公開されていないので、こちらで書きますが、東京国際映画祭で上映された台湾映画「光にふれる」が本当によかったです。
盲目のピアニストと貧乏なダンサーとの交流を描いた実話を元にした作品と聞いて、
ベタベタなお涙ちょうだい作品と思っていたら、すがすがしく清新なタッチの作品でした。
日本でもきちんと劇場公開されることを強く望みます。

最新映画については、「水道橋博士のメルマ旬報」で、ご紹介!

※こちらのエントリーもどうぞ。

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