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【映画2012】シネコン至上主義#3

「水道橋博士のメルマ旬報」で連載中の「シネコン至上主義――DVDでは遅すぎる」のバックナンバーです。

この回では、「007 スカイフォール」、「人生の特等席」、「任侠ヘルパー」を紹介しています。

最近公開の映画を映画館でお金を払ってみたレビューです。
映画を映画館で見る理由となる3つの理由について五点満点で採点しています。

「スクリーン必然性」
3D効果や臨場感、サウンドなど、家庭のテレビ画面でなく、
映画館で見る必然性を示します。

「インストール強度」
人生の一部として、自分の中にどの程度インストールされるかの目安です。

「おっぱい指数」
映画に必要な裸の女優の割合を物理的なものだけでなく、色気も含めて評価します。




「007 スカイフォール」


スクリーン必然性 ★★★★★
インストール強度 ★★★★★
おっぱい指数   ★★

関東最大級のスクリーンと評判の成田HUMAXシネマのIMAXで鑑賞してきた。

中学一年生の甥にとっては、初の「007」映画、初の字幕洋画だったけれど、
終映後、「すげえ! 007すげえ! おれ、ぜんぶ見ようかな」と
声を震わせていた。一方のおれは涙をぬぐいつつ
「まいった! 007でこんなに胸が熱くなるなんて。007を見てきたことを
誇らしく思うなんて。神話に立ち会ったような感動があったよ」とツイートした。

いままでシリーズ○○周年記念映画は数々あったけれど、
007シリーズ50周年記念作品である「スカイフォール」ほど、
現代に生きるシリーズである意味を徹底的に問い直し、
それを一流の現代エンターテインメントに仕上げた作品はなかっただろう。

007の中で一本でも好きな作品があれば必見である。
007を見たことがなくても必見である。
字幕映画初体験の中一の甥でさえ、これほど興奮し、
人生さえも変わりそうな体験となるのだから。

■採点理由
撮影監督ロジャー・ディーキンスの圧倒的に素晴らしい仕事を堪能するため、
濃密かつ最新なサウンドを味わい尽くすために
「スクリーン必然性」は★★★★★だ。
かつて、インストールされてきた007というアプリが、バージョンアップされ、
全データが書き換えられる快感を味わえるから、
「インストール強度」は★★★★★。
乳首こそ出ないし、尺も短いが、高ぶった男の空気が伝わるから
「おっぱい指数」は★★★。

■以下ネタバレ
シンプルで力強いストーリーで描かれるのは、007の破壊と死と再生と継承だ。
個人としての007だけではない。00ナンバーを有する
(ドラマ上の)諜報機関MI6の破壊と死と再生と継承でもある。

冷戦の終焉以来、007シリーズの意義はずっと問われてきた。
ベルリンの壁が崩壊した年に公開された「消されたライセンス」で、
ボンドが戦う敵はソ連でもなく、スペクターでもなく、中米の麻薬王だった。
興行はふるわず、シリーズは6年間、沈黙した。

それ以来、ボンドは東西冷戦の残滓の宿る陰謀とずっと戦ってきた。
新時代のエスピオナージュ(国際謀略)アクションはいかにあるべきかという
回答を巧妙に避けながら、佳作を作ってきた。

「スカイフォール」は00ナンバーの存在意義ともいえる
ヒューミントの意味を問いかける映画だ。
ヒューミントとは「Human Intelligence」から生まれたことばで、
コンピュータや通信傍受ではなく、人間を介した諜報活動のことである。

ヒューミントの名前を列挙したハードディスクが奪われること。
ハビエル・バルデムが扮するシルヴァが嘲笑しながら
操るネットワークセキュリティ。
さらには議会聴聞会で問われる、時代遅れなヒューミントの意味。
すべてが人の関る諜報機関への疑問符となり、Mとボンドにのしかかる。

ヒューミントの代名詞、ジェームズ・ボンドにも劣化が重くのしかかる。
銃をまともに射てない。
自分を犠牲にする国家に奉仕することへの疑問も生まれる。

それがアクションの文脈で描かれるアヴァンタイトルから、
アデルのテーマ曲へと流れる展開に結実されている。
BGMのあらゆるタイミングがぴたりとハマり、ボンドはみごとに「死んだ」。
任務の失敗と死が冒頭で描かれたのは「007は二度死ぬ」でもあったが、
これほど、効果的な死なせ方はなかった。

多くは描かれないが、任務への復帰を放棄し連絡さえせずに
やさぐれている007を帰途につかせたのは、MI6本部の爆破事件だった。
自分と同様にMI6も死のときを迎えつつある。

ここからのドラマは神話的構図を強めていく。
母であるMに忠実ではあるが、不出来な子、ジェームズ・ボンド。
Mに対する疑問を持ってしまった優秀な子、シルヴァ。
これは聖書における「カインとアベル」だ。
神=父ではなく、母であることは興味深いが、
エディプス・コンプレックス風味ってことでしょうか。

さらにロケーションが効果を高めていく。

アヴァンタイトルのイスタンブールと列車でのアクションは
「ロシアより愛をこめて」へのオマージュだろうか。
なにより007的なアクションとエキゾチシズムが濃厚だ。

ロンドンという町はMI6という組織の象徴であり、
人間が作り上げ、守ってきたシステム。

マカオから旅立った軍艦島こそ、シルヴァの心象風景だ。
繁栄あってこその廃墟。

そしてスコットランドの情景こそが、
あらゆる機械やシステムから遠ざかったジェームズ・ボンドの回帰点だ。
再生のために立ち寄る場所なのだ。

濃密な死の舞踊のあとの凍結した水面は、
神の子キリストが水面を歩くメタファーであり、
そこからの復活の奇跡があってこそ、
自分を否定した神を殺そうとしたシルヴァと対決できたのだ。

そこからあとはすべて、神がかったエンディングだ。
MI6と生家というふたつのエデンを物理的に破壊されたボンドが
新たに継承した組織。
そして、人が作ったものは人がその手で守るしかないという
決意を高らかに歌いあげているのだ。

もちろん、クルマのこととか、オフィスのこととか、帽子掛けのこととか、
いろんなディテールはみなさんもよくご存知ですよね。
さらには、監督が「ダークナイト」に影響を受けて、
この映画を撮ったとインタビューで答えているということもご存知かもしれない。

わが内なる敵というテーマが、今後のシリーズでどうなるかはわからない。
だが、半世紀をこえた「007」シリーズの今後が、俄然、楽しみになってきた。

ジュディ・デンチがMになったのは、冷戦後の007からだった。
長いお勤め、ありがとうございました。

「人生の特等席」

スクリーン必然性 ★★ インストール強度 ★★ おっぱい指数   ★

すばらしい瞬間がいくつもある映画。しかし、失敗作だ。

プロットのバランスが崩れているのは、ロバート・ロレンツ監督の
クリント・イーストウッド師匠に対する愛と敬意ががあふれすぎたためだろう。

ドラマの構図として、本来はエイミー・アダムスの一人称で描くべき作品である。
監督は、役者、イーストウッドと適正な距離をおくべきだった。
そのあたりをうまく処理すればさらなる感動があったと思うと、残念だ。

コンピュータも触れない老スカウトというのはちょっと無理がある。
全国を回るのに、航空券さえ取れそうにない。
さらに82歳のイーストウッドじゃ、老けすぎですよ。
早期退職金みたいなことが字幕で書かれていたけれど、
日本なら、りっぱな後期高齢者だよ。
彼を働かせること自体が虐待だ。

データ至上主義のスカウトというイーストウッドのライバル設定が
かなり浅薄なクリシェだ。
「マネーボール」を意識しているのだるけれど、
「マネーボール」の信念のほうが、美しい。

なにより、カタルシスまわりのご都合主義にはびっくりしてしまった。
伏線もあったけど、バランスの偏った作りでは、厳しい。

ただ、イーストウッドならではのあのシーンは、拳を握りしめちゃったよ。
回想部分は、ほんとうにすばらしかった。

美点も認めるが、納得しがたい設定と迷走するプロットには困ってしまった。
おれにとって、イーストウッド最後の出演作は
「グラン・トリノ」ってことにしておこう。

■採点理由
こじんまりとしたドラマなので「スクリーン必然性」は★★。
新たな衝撃が薄いので、「インストール強度」は★★。
おしっこでてもおっぱいは出ませんから、「おっぱい指数は★。

■以下ネタバレ
脚本で何度か変更があったのだろうか。
中途半端な印象があるエイミー・アダムスの恋愛話にはとまどってしまう。

だが、ここは切りとるべきではない。さらに膨らますべきだっのた。

イーストウッドについてはもっとセリフとシーンを削り、
エイミー・アダムス視点でのドラマにすれば、
すべてがつながり爽やかな印象になっただろう。

参考にすべき映画は「アザー・ピープルズ・マネー」である。




「任侠ヘルパー」


スクリーン必然性 ★★
インストール強度 ★★★
おっぱい指数   ★

テレビドラマの企画である。
あの「アマルフィ」の監督である。
「ICHI」の草なぎ剛出演映画である。
最近では出ていない邦画を探すのが難しい香川照之が出演している。
さらには、黒木メイサまで出てくる!

観るべきでない理由はいくつもあるのに、観るべき理由があんまりない。
しかし、実際に見ると、すばらしい映画だった。
プロットのバランス、キャラクター、情景、余韻まで、たまらなかった。

テレビドラマは未見だが、草なぎ剛のキャラクターがすばらしい。
任侠に対しては忠実であろうとするが、
必ずしも老人の味方ではないという立場がずっとぶれないのがポイントだ。
設定をタイムリーな老人介護にしているとはいえ、
任侠物の基本線をきちんと守っているのがすばらしい。

オープンセットの介護施設も効果的だ。撮影もその場をよく伝えてくれている。
介護施設が立ち直るプロセスはやや性急だし、
最後の活躍も理想を求めすぎて入るが、
しっかりしたキャラクター設定なので、腑に落ちる。

全体のバランスの中で、一点ある問題は、
堺正章が演じる落魄の親分に説得力がないことかな。
身も心もやつれ、刑務所で死んでいく親分が、
よく手入れされたきれいな歯を輝かせながら、老いぼれた話をしても
ピンと来ないよ。

■採点理由
いい話だけど、スクリーンでの見せ場が少ないので「スクリーン必然性」は★★。
高齢な家族がいると身にしみるところが多いので「インストール強度」は★★★。
仕方ないんだけど、「おっぱい指数」は★。

■以下ネタバレ
テレビドラマからリブートされた設定としてもわかると思っていたけれど
、黒木メイサのキャラクターはちょっととまどってしまう。
香川照之がオーバーアクトしていないのも珍しい。
これぐらいがいいよ。でも出すぎだけど。


★今月とりあげなかった映画
こちらでは、いろんな意味でぼくが見ることをすすめる映画を紹介したいのです。
いろんな意味で見たけど、今回、紹介しなかった映画は以下のものです。

「ウーマン・イン・ブラック 亡霊の館」
「その夜の侍」
「ゲットバック」
「ロックアウト」
「カラスの親指」
「綱引いちゃった!」


★近況
年末になって忙しさが加速してきました。
忙しければ、忙しいほど、見たくなるのは映画です。
それも映画館で映画を見たい。

12月1日に行った成田のIMAXは関東のほかのIMAX劇場とくらべても
スクリーンと座席の配置がよくできています。
都心から成田は本当に遠いのですが、
「ホビット」もここで見たいと思っています。

最新映画については、「水道橋博士のメルマ旬報」で、ご紹介!

※こちらのエントリーもどうぞ。

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